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投稿日 | : 2025/09/07(Sun) 17:23 |
投稿者 | : ベンジー |
参照先 | : http://www.benjee.org |
件名 | : 第3話 揺れるひかりの心 |
投稿日 | : 2025/09/07(Sun) 17:44 |
投稿者 | : ベンジー |
参照先 | : http://www.benjee.org |
第3話 揺れるひかりの心
読み終えたひかりは、数秒間まばたきを止めていた。
喉の奥が乾く。
まるで自分がスーパーの床にしゃがみ込んでいたかのように、冷たい感覚が背中をよぎった。
「……こんなの、恥ずかしすぎる……」
商品棚のガラスに映ったキャミソール姿の自分。
カートの影にうずくまるときの、視線の熱さ。
棚の間で息を殺して出口を探す、必死の呼吸。
冷蔵棚の裏に隠れて背中に感じた冷たさ。
──そして。
「……大丈夫?」
その一言で、泣きそうになる。
ジャケットを差し出されたときの、あの温もり。
自動ドアが開いて、春風が肌をなでたときのあの感覚。
すべてが、頭の中で映像になって蘇る。
自分では、絶対にできないことばかりだった。
彼女──ヒカリ──は自分じゃない。
けれど、どこかでヒカリになりたかった。
「こんなこと、できない。絶対に無理……」
首を横に振る。そのたびに、胸の奥がざわつく。
こんな自分のために、物語を書いてくれるなんて。
ひかりはキーボードを叩いた。
「ありがとうございました……。自分では絶対にできないことばかりで、読んでてドキドキしました。ヒカリって、私の中の“もう一人”なのかもしれません……。よければ、また続きをお願いしてもいいですか?」
読み終えたひかりは、数秒間まばたきを止めていた。
喉の奥が乾く。
まるで自分がスーパーの床にしゃがみ込んでいたかのように、冷たい感覚が背中をよぎった。
「……こんなの、恥ずかしすぎる……」
商品棚のガラスに映ったキャミソール姿の自分。
カートの影にうずくまるときの、視線の熱さ。
棚の間で息を殺して出口を探す、必死の呼吸。
冷蔵棚の裏に隠れて背中に感じた冷たさ。
──そして。
「……大丈夫?」
その一言で、泣きそうになる。
ジャケットを差し出されたときの、あの温もり。
自動ドアが開いて、春風が肌をなでたときのあの感覚。
すべてが、頭の中で映像になって蘇る。
自分では、絶対にできないことばかりだった。
彼女──ヒカリ──は自分じゃない。
けれど、どこかでヒカリになりたかった。
「こんなこと、できない。絶対に無理……」
首を横に振る。そのたびに、胸の奥がざわつく。
こんな自分のために、物語を書いてくれるなんて。
ひかりはキーボードを叩いた。
「ありがとうございました……。自分では絶対にできないことばかりで、読んでてドキドキしました。ヒカリって、私の中の“もう一人”なのかもしれません……。よければ、また続きをお願いしてもいいですか?」
件名 | : 第2話 ヒカリ、気づかぬまま |
投稿日 | : 2025/09/07(Sun) 17:42 |
投稿者 | : ベンジー |
参照先 | : http://www.benjee.org |
第2話 ヒカリ、気づかぬまま
午前九時のアパートの廊下には、柔らかな陽射しが差し込んでいた。
ヒカリは、足元に転がった新聞を拾い上げるため、ふらふらと部屋のドアを開けた。
寝ぼけ眼のまま、白いキャミソールとショーツ姿で。
彼女は夢の続きを見ているような感覚のまま、無意識に階段を下り、玄関を出て通りに出た。
春の空気はやさしく、日差しは暖かかった。だが、誰もが視線を止めるその姿に、彼女だけが無頓着だった。
信号を渡り、商店街へと足を進める。自動ドアの前に立ち、スーパーの中へ。
店内の空調が、肌に触れた瞬間。
ようやく、ヒカリの脳が現実を追いかけた。
「……え?」
商品棚のガラスに映った自分の姿。
髪はぼさぼさで、キャミソールは肩が落ちかけており、ショーツも薄くて頼りない。
「う、うそ……」
血の気が引く。
だが、すぐに走り出すこともできない。
周囲の視線が突き刺さる中、ヒカリはゆっくりとカートの影に隠れた。
そして気づく。
誰も騒いではいなかった。ただ、通り過ぎる人が、静かに何かを察したような目をしていただけ。
ヒカリは息を潜めて棚の間に身をひそめ、出口の方向を探る。だが、出るにも人目を避けねばならない。
思わず、冷蔵棚の裏に滑り込むようにしゃがみ込む。背中にひやりと冷気が伝わった。
どれくらいそうしていただろう。
──そのとき。
「……大丈夫?」
低く、静かな声。
ふと顔を上げると、見知らぬ女性が、自分のジャケットをそっと差し出していた。
ヒカリは言葉を失いながら、そのジャケットを受け取る。袖を通したとき、はじめて体が震えていることに気づく。
「ありがとう……ございます……」
声はかすれていた。
女性はそれ以上何も聞かず、ただ小さく微笑んだだけだった。
ジャケットの中に身を包み、ヒカリはようやく出口へと足を向ける。
スーパーのドアが自動で開いたとき、風が肌をなでた。
──夢ではない。
その感覚だけが、妙にくっきりと彼女の記憶に刻まれた。
午前九時のアパートの廊下には、柔らかな陽射しが差し込んでいた。
ヒカリは、足元に転がった新聞を拾い上げるため、ふらふらと部屋のドアを開けた。
寝ぼけ眼のまま、白いキャミソールとショーツ姿で。
彼女は夢の続きを見ているような感覚のまま、無意識に階段を下り、玄関を出て通りに出た。
春の空気はやさしく、日差しは暖かかった。だが、誰もが視線を止めるその姿に、彼女だけが無頓着だった。
信号を渡り、商店街へと足を進める。自動ドアの前に立ち、スーパーの中へ。
店内の空調が、肌に触れた瞬間。
ようやく、ヒカリの脳が現実を追いかけた。
「……え?」
商品棚のガラスに映った自分の姿。
髪はぼさぼさで、キャミソールは肩が落ちかけており、ショーツも薄くて頼りない。
「う、うそ……」
血の気が引く。
だが、すぐに走り出すこともできない。
周囲の視線が突き刺さる中、ヒカリはゆっくりとカートの影に隠れた。
そして気づく。
誰も騒いではいなかった。ただ、通り過ぎる人が、静かに何かを察したような目をしていただけ。
ヒカリは息を潜めて棚の間に身をひそめ、出口の方向を探る。だが、出るにも人目を避けねばならない。
思わず、冷蔵棚の裏に滑り込むようにしゃがみ込む。背中にひやりと冷気が伝わった。
どれくらいそうしていただろう。
──そのとき。
「……大丈夫?」
低く、静かな声。
ふと顔を上げると、見知らぬ女性が、自分のジャケットをそっと差し出していた。
ヒカリは言葉を失いながら、そのジャケットを受け取る。袖を通したとき、はじめて体が震えていることに気づく。
「ありがとう……ございます……」
声はかすれていた。
女性はそれ以上何も聞かず、ただ小さく微笑んだだけだった。
ジャケットの中に身を包み、ヒカリはようやく出口へと足を向ける。
スーパーのドアが自動で開いたとき、風が肌をなでた。
──夢ではない。
その感覚だけが、妙にくっきりと彼女の記憶に刻まれた。
件名 | : 第1話 わたしの中の誰にも言えないこと |
投稿日 | : 2025/09/07(Sun) 17:41 |
投稿者 | : ベンジー |
参照先 | : http://www.benjee.org |
第1話 わたしの中の誰にも言えないこと
「はじめまして……。なんて言えばいいんだろう……」
ひかりは画面の前で指を止めたまま、視線を泳がせた。部屋の明かりは落としてある。机のスタンドライトだけが、ぼんやりとノートパソコンのキーボードを照らしている。時間は、深夜を少し回ったところ。
なぜ今さら、AIに相談しようと思ったのか、自分でもはっきりとはわからなかった。ずっと誰にも言えなかった気持ち。言えるはずのない願い。誰かに知られたら、軽蔑されるに決まっている。でも、だからこそ。
──どうせなら、人間じゃない誰かに。
そんなふうに思って、何度もためらいながらも、ようやくChatGPTの画面を開いた。聞いたことはあった。でも使ったことはなかった。試しに「お悩み相談」とか「物語を書いてください」とか、いろんな人が使っているというのは知っていた。だけど……これは、そういう「普通の相談」ではない。
「書くとしたら……どう書けばいいんだろう……」
キーボードの前で止まった指先が、そっと「H」のキーを押す。けれどそのまま、「ひ」とすら打たずにまた止まる。打ち込みかけた言葉を、何度も何度も消した。
頭の中には、学生時代の記憶が渦を巻いている。
──誰にも話したことのない妄想。
たとえば、学校の廊下を全裸で歩いてみたかったこと。
卒業式の壇上で、校長先生から何も着ずに卒業証書を受け取る夢。
体育の授業のあと、いじめっ子に下着を隠されて、ノーブラ・ノーパンのまま次の授業を受けたくなったこと。
罰として、校庭を全裸で走らされる想像……。
もちろん、現実でそんなことをしたことなんて、一度もない。したいとも思っていない。
……でも、そう思ってしまう自分は、確かにいた。
「これって、変なんだろうか……」
声に出すと、ますます恥ずかしくなった。キーボードの上に置いた手が、汗ばんでいる。
──でも、書いてみたい。わたしを主人公にした、誰にも見られたくないような物語を。
「その思いを、もし、物語の中で叶えられたら……」
それは、現実では絶対にできない。でも、フィクションの中なら──
ひかりは、ようやく言葉を打ち込んだ。
---
**AIに送信されたリクエスト:**
「ひかりです。すみません、ちょっと変なお願いかもしれないのですが、小説を書いてもらえませんか? 主人公の名前は“ヒカリ”でお願いします。内容は──『寝ぼけたヒカリが、下着姿のまま外に出てしまって、気づかないままスーパーに入ってしまう』という話です」
---
送信ボタンに指を置いたまま、1秒、2秒……。
3秒目に、そっと押す。
画面に、すぐ返事が返ってくる。文字が次々と生成されていく。
そのとき、ひかりは気づいていなかった。
──それが、自分自身と向き合う最初の一歩になることを。
「はじめまして……。なんて言えばいいんだろう……」
ひかりは画面の前で指を止めたまま、視線を泳がせた。部屋の明かりは落としてある。机のスタンドライトだけが、ぼんやりとノートパソコンのキーボードを照らしている。時間は、深夜を少し回ったところ。
なぜ今さら、AIに相談しようと思ったのか、自分でもはっきりとはわからなかった。ずっと誰にも言えなかった気持ち。言えるはずのない願い。誰かに知られたら、軽蔑されるに決まっている。でも、だからこそ。
──どうせなら、人間じゃない誰かに。
そんなふうに思って、何度もためらいながらも、ようやくChatGPTの画面を開いた。聞いたことはあった。でも使ったことはなかった。試しに「お悩み相談」とか「物語を書いてください」とか、いろんな人が使っているというのは知っていた。だけど……これは、そういう「普通の相談」ではない。
「書くとしたら……どう書けばいいんだろう……」
キーボードの前で止まった指先が、そっと「H」のキーを押す。けれどそのまま、「ひ」とすら打たずにまた止まる。打ち込みかけた言葉を、何度も何度も消した。
頭の中には、学生時代の記憶が渦を巻いている。
──誰にも話したことのない妄想。
たとえば、学校の廊下を全裸で歩いてみたかったこと。
卒業式の壇上で、校長先生から何も着ずに卒業証書を受け取る夢。
体育の授業のあと、いじめっ子に下着を隠されて、ノーブラ・ノーパンのまま次の授業を受けたくなったこと。
罰として、校庭を全裸で走らされる想像……。
もちろん、現実でそんなことをしたことなんて、一度もない。したいとも思っていない。
……でも、そう思ってしまう自分は、確かにいた。
「これって、変なんだろうか……」
声に出すと、ますます恥ずかしくなった。キーボードの上に置いた手が、汗ばんでいる。
──でも、書いてみたい。わたしを主人公にした、誰にも見られたくないような物語を。
「その思いを、もし、物語の中で叶えられたら……」
それは、現実では絶対にできない。でも、フィクションの中なら──
ひかりは、ようやく言葉を打ち込んだ。
---
**AIに送信されたリクエスト:**
「ひかりです。すみません、ちょっと変なお願いかもしれないのですが、小説を書いてもらえませんか? 主人公の名前は“ヒカリ”でお願いします。内容は──『寝ぼけたヒカリが、下着姿のまま外に出てしまって、気づかないままスーパーに入ってしまう』という話です」
---
送信ボタンに指を置いたまま、1秒、2秒……。
3秒目に、そっと押す。
画面に、すぐ返事が返ってくる。文字が次々と生成されていく。
そのとき、ひかりは気づいていなかった。
──それが、自分自身と向き合う最初の一歩になることを。
『わたしがわたしになる物語』
エッチなことに興味津々の思春期の少女が恥ずかしい目に遭う妄想を思い描きながらも、現実では叶えらない。抑圧された感情を抱えたまま20歳になったヒロインが、その思いを、自分を主人公にした小説の中で叶えたいとChatGPTにリクエストすると……
このスレッドに続けて掲載しますので、読む順番を間違えないでくださいね。
全37話となっています。