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fld_nor.gif 『波打ち際の迷い』をアレンジしてみました
投稿日 : 2026/08/16(Sun) 08:21
投稿者 ベル
参照先
波打ち際の迷い(アレンジ版)

加藤明里(あかり)は、県内の広告代理店で働くごく普通の、24歳のOLだ。
毎日満員電車に揺られ、残業続きのデスクワーク。
週末はカフェ巡りかNetflixで終わるルーチンに、少しずつ飽きがきていた。
そんなある日、SNSで目にした記事がきっかけだった。

「日本初!伊豆に合法ヌーディストビーチ『裸の岬海水浴場』がオープン。
解放された『本当の自分』を発見しよう!」
青い海や白い砂浜と共に写っている人々は、確かに服を着ていなかった。
でも、SNSの記事では
《自然回帰:ナチュリズム》と《ボディポジティブ:身体観の開放》を強調していて
ヌーディストビーチは「裸を見る場所」ではなく「自分が裸でいることを楽しむ場所」だ
と、明確に定義されていた。
そのため、全裸での利用が推奨されているものの
必須(義務)とまではされないビーチだと紹介されていた。

明里はスマホをスクロールしながら、心臓が少し速くなった。
「面白そう!・・・でも、絶対無理よ。私みたいな普通のOLが外で裸になるなんて」
もともと明里は、ヌーディストビーチに興味があった。
子供の頃から海が大好きだったので、祖父母の住む田舎では
幼い頃はいつも水着ナシで自由に泳ぎ回っていた。
「ヌーディストビーチなら、あの頃のような『解放感』にひたれるかも?」
でも、一人で行く勇気はない明里は、まずは友達を誘ってみることにした。

翌日のランチタイム。明里は同僚の美樹(みき)に声をかけた。
美樹は同期入社で、明るくて何でも乗り気なタイプだった。
「ねえ、美樹。週末、伊豆の新しいビーチ行ってみない?あの、SNSで話題の所」
美樹はフォークを止めて、目を丸くした。
「えっ、あのヌーディストビーチへ行くの?マジで?明里って、意外と大胆じゃん!
でも私、もう週末は予定が入ってるんだよね。
しかも裸で日に焼いたら、絶対変な焼け跡になるよ。ごめん、パス」
美樹の反応は悪くなかったが、断られた。

次は大学時代の親友:唯(ゆい)にLINEを送ってみた。
「唯、久しぶり!伊豆にヌーディストビーチが出来たってSNSで言ってたよ。
一緒に行ってみない?」
返事はすぐに返って来た。
「えー?面白そうだけど、旦那に怒られそうね。
しかも私、最近太っちゃって。水着でも人前に出る自信がないわ。ゴメンねー」
唯の答えも、またダメだった。

その後、他の友達にも当たってみたが、誰も本気で食いつかなかった。
みんな「勇気あるね!」とか「報告待ってる!」と言うだけで
一緒に行こうと応じてくれた人は誰もいなかった。
明里はため息をついた。

「一人じゃ無理だよ。・・・でも、諦め切れない」
明里は一旦、同行者を探すことをやめて、情報を集め始めることにした。
まずはネットで《伊豆・裸の岬 ヌーディストビーチ 体験談》と検索。
すると、ブログやレビューサイトがすぐに表示された。
2028年夏の開設から数週間経っただけなのに、訪れた人たちの声が並んでいた。

- 「意外と普通のビーチと変わらない感じ。みんなリラックスしてるよ。
全裸の人3割、トップレス4割、水着の人3割くらいかな?」
- 「家族連れもいるし、変な人は見掛けなかったわね。
スタッフが常にパトロールしてるから、むしろ安全なくらいだと思う」
- 「最初は恥ずかしいけど、5分で慣れる。だけど誰も見てない訳じゃないよ」
- 「荷物はロッカーに預けて、クーラーボックスを持参しましょう。
好きな場所にパラソルを立てて、自分だけの拠点を作るのがオススメですね」
- 「車は必須。駐車場は早めに埋まるから、朝イチで行こう」

これらのコメントを見た明里は、目を輝かせた。
「強制じゃないのね?じゃあ最初は水着姿で様子を伺って、もし気が向いたら・・・」
それでも、不安は募った。砂浜に着いてから服を脱ぐとしても
周りの視線が向けられた場所で裸になることになる。
しかも明里は、自分の体型にコンプレックスがあった。
標準的な身体付きなのに、乳輪が大きいのだ。

「万一、知り合いに会ったりしたら?」
そう思い、今までは際どい水着も避けてきた。
「でも、行かなきゃ一生後悔するかも。
普通のビーチじゃ味わえない解放感を、やっぱり一度は味わってみたいから」
明里の乳輪コンプレックスも、ヌーディストビーチなら些細なことだと気にされず
克服する機会になるかも知れないと期待していた。

明里は通勤帰りの路上で決心した。
「帰ったらすぐにネットで予約を入れよう。日時は、土曜日の朝イチ。
友達が一緒じゃなくても、一人で行ってみる。ダメならすぐ帰れば良いんだから!」

当日、明里は自分の軽自動車で伊豆へ向かった。
後部座席にクーラーボックス(水筒とスポーツドリンク、サンドイッチ)、
パラソル、ビーチシート、タオル、日焼け止め、着替えの入ったバッグを積み込んだ。
スマホはビーチ内使用禁止なので、車に置いていくつもりだった。
道中、伊豆スカイラインを抜け、細い県道を下りると、看板が見えた。

【伊豆・裸の岬海水浴場 専用駐車場 P】
駐車場はすでに半分埋まっていた。料金は1日2,000円。
係員に誘導された場所に車を停め、荷物を抱えて受付へ。
簡易的なプレハブ小屋で、若い女性スタッフが笑顔で対応してくれた。

「予約の加藤さんですね。リストバンドとロッカーキーです。
貴重品とスマホはこちらのロッカーに。
ビーチ内は撮影禁止なので、持ち込みNGですよ。
日焼け止め、タオル、飲み物はOKです」

明里は財布、鍵、スマホをロッカーに預け、鍵をリストバンドに付けた。
残りの荷物(クーラーボックス、パラソル、シート、日焼け止め)を抱えて砂浜へ。
階段を下りると、波の音が聞こえてきた。
砂浜にはすでに人が散らばっていた。思っていたよりも全裸の人が多かった。
70歳くらいのおじいさんがおチンチン丸出しで
ラジオを聴きながら日傘の下で寝ていた。
20代後半と思しきカップルが、恥ずかしそうに手をつないで波打ち際を歩いていた。
家族連れもいた。小学生の女の子が「パパ、ほんとに服着なくていいの?」と
大声で確認している声が遠くに聞こえた。

明里はまずは端っこの岩陰近くに場所を確保した。
パラソルを立ててシートを広げ、クーラーボックスを置いて『拠点』を作った。
日焼け止めを手に取り、全身に塗る。背中は自分で頑張って伸ばす。
塗り終える頃には、少し緊張がほぐれていた。

明里が周りを見回すと、全裸の人が普通に本を読んだり、泳いだり・・・。
けれど、「誰も見てない訳じゃないよ」という誰かのコメントにあった通り
まだ水着を着ているのに、男性客の視線が自分を品定めしていると感じた。

(・・・あれ?)

しかし気付いたら、水着の上に履いていた短パンと一緒にボトムを脱いでいた。
昨日、念入りに手入れした恥丘が露わになると、すでに解放感を感じられた。
深呼吸してビキニのトップを外し、そのまま全裸になってみた。
最初は両手で胸と股間を隠したが、5分もしないうちに「あ、もういいか」となった。
タオルすら持たずに立ち上がり、波打ち際へ向かった。

海風が直接肌に当たる。乳首が風に反応して、少し硬くなる。
恥ずかしいけど、見られると分かっていて脱いだのだ。
誰に見られても文句を言える立場じゃない。
波が足に触れる感覚が新鮮で、笑いがこみ上げてきた。

「来て良かった」
そのまま海に入ると、波が明里の全身を包んだ。浮かぶ。泳ぐ。体が軽い。
乳房が波で揺れる感覚も、最初こそ気になったけれど
すぐにそれは自然なことだ感じられた。

少しして、明里は拠点に戻った。
クーラーボックスからスポーツドリンクを取り出して飲んでいると
隣のパラソルの下で、40代くらいの男性がひとりで本を読んでいた。
表紙は『ヌーディズム全史』。
明里は思わず声をかけた。

「・・・面白いですか、それ?」
男性は少し驚いた顔をしてから、ニコッと笑った。

「まだ序盤だけど、先週会った女性が『この本』を読んでいてね。
19世紀末のヨーロッパにおいて、
加速度的な近代化に反発するかたちで自然回帰の動きが高まり
ドイツで始まった運動がヨーロッパ各国に広がった、って解説してくれるんだ。
でも、2010年代に入るとヌーディズムは徐々に下火となり
ヌーディズムを愛好して実践する者は、少数派に留まっているらしい」
明里もつられて笑った

「じゃあ、ここは人類史の逆走イベントってことですか」
「そうかもね。だから、ようやくヌーディストビーチを開設した日本は
遅れているとも言えるけれど
これを機会に世界中で再ブームが起きるかも知れないと、著者は期待しているよ」
その後、二人は特に深い話はしなかった。
ただ同じ太陽の下で、同じ波の音を聞きながら、黙って時間を過ごした。
・・・いや。話はしなかったが、無視されていたのではなく
本を読み続けているフリをしながら向けられる視線を
明里が黙って受け入れたのだった。

夕方近く、明里はシャワーブースで砂を落とし、服を着直した。
ロッカーの鏡に映る自分は、朝より少し日に焼けていて
少しだけ肩の力が抜けているように見えた。

駐車場に戻る途中、入口の看板をもう一度見た。
《全裸可・水着着用も可》
その「も可」の二文字が、何だか今日の自分を肯定してくれたように感じた。
明里は小さく息を吐いて、「また来ようかな」と呟いた。

次の週末、明里は再びあの岬に向かった。
今度はタオルと日焼け止めと、クーラーボックスに詰めたお弁当を手に。

(おわり)


追伸:リスペクトを示す意味で
主人公の名前は、あかり→明里(あかり) に変更しました。
また、40代の男性=田中《オリジナル小説と同一人物》が読んでいた本を変え
ヌーディズムについての補足説明を話させました。
彼はまたも《伊豆・裸の岬海水浴場》に来ていた、という設定です(笑)
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