美波と先生(仮題)


                            作:みなみ

「ねぇ、明日、学校のプール、つきあってよ」
「え?だって理子、学校のプールって低学年の子ばっかりでうるさいからって、嫌いじゃなかったっけ?」
「うーん、ちょっと事情が違ったんだな・・・。ねぇ、つきあってくれるでしょ?」
「うーん・・・、わかった。理子の頼みじゃあ、断れないもんね。午前?午後?」
「午前!じゃあ、10時に美波のうちに行くね。帰りにジュース、おごるからさ」
 美波と理子の家はどちらも学校の近所にある。幼稚園からの同級生だ。
 美波は幼馴染の理子の申し出を断る理由がなかった。
「明日は何の予定もないし、どうせ家にいたってひとりだし・・・。」
 美波の父親は単身赴任で働いている。母は9時から夕方の6時までパートに出ている。ひとりっこの美波は夏休みのあいだ広い家で1日中過ごすのはさびしいかなと思っていたのだ。せっかくの理子の頼み。明日からの最後の夏休み、まずはプールで(学校のプールだけど)思いっきり夏を満喫しよう。


「・・・ですから、夏休みのあいだはおうちの人のお手伝いをして・・・」
 今は夏休み前の終業式。全学年が学年ごとに並んで体育館の床に体育座りして校長先生のたいくつな話を聞いている。このお話が終わらなければ夏休みは始まらないと思うとじれったくなってしまう。だって校長先生の話、いつも長いし、話の中身だってないんだもの。
 あーあ、早く終わんないかな・・・。
 美波はふと脇に並んでいる先生たちの方を見た。みんな檀上の校長先生の方を向いて話を聞いている。
 あんな話、先生たち、本気で聞いているのかな。
 前の方の先生から何気なく視線を流す。
 と、ひとりの先生が美波の視線に気づいたようにあわてて校長先生の方に向き直した。
 あれ?
 ジャージにTシャツの若い男の先生だ。
 あの先生、確か中学年の先生だよね。
 いかにも体育大学出身で、運動会のときには大声はりあげて動き回っていた先生だ。
あの先生もたいくつしちゃってるのかな・・・。
 美波はまた校長先生の方を向こうとした。
 そのとき、視界の隅でその先生がまた自分の方に視線を戻したのがわかった。
 え?あの先生、私のこと、見てるの?
 その先生とは一度だって話したことがない。学校の中で顔を見知っている程度でしかない。
 なのになんでわたしのこと、見てるんだろ?
 そこで美波は思い当たった。
 わたし、今日、スカートだった・・・。ひょっとしてあの先生、わたしのパンツ、見てるんじゃないの?
 視界の隅にこちらを向いているあの先生の顔がぼんやりと映る。
 え?ほんとうに見てるの?
 そう思うと心臓がどきどきした。
 思いすごしだよね、別の誰かのこと、見てるんだよね。
 自分に言い聞かせて胸の鼓動を抑えようとしてみた。もう一度あの先生の方に顔を向けてみる。すると、あわてたように顔をまた前に向けた。もうまちがいない。あの先生は私のこと、ううん、体育座りしているわたしのパンツ、見てるんだ。
 胸の鼓動が聞こえてくるほど高鳴った。
 わたし、今日、どんなパンツはいてたっけ・・・。
 胸がどくどくする。
 体育館の床にスカートでおしりを包むように座っている。おしりの方のスカートの裾は床についている。角度からすると、しっかりと見られていることになる。
 スカートの裾で隠そうか、でも今そんなことしたらあの先生に見られているってことに気づきましたよって言ってるようなもの。
 校長先生の話なんてぜんぜん耳に入らない。
 ああ、あの先生、ずっとわたしのパンツ、のぞいてる・・・。やだ。
 でも、本当に見えてるのかな?脚がじゃまになってよく見えないんじゃないかな?どうしたらよく見えるんだろう・・・。
 ばかっ!美波ったら、何考えてるのよ。見られたいの?自分のパンツ。なんとか見られないようにしなきゃいけないんじゃないの?
 相変わらず視界の隅にあの先生の顔が映っている。
 あの先生の荒い息遣いが聞こえるような気がした。
 パンツに視線が刺さるような気がした。
 なぜか下半身がむずむずしてきた。
 あの先生、わたしが見られてることに気づいてないと思ってる。
 だったら自然に振舞っていないと見られてるのわかっていながらスカートを直さないんだ、見られたがっているんだって思われちゃう。そう、自然にふるまわなきゃ・・・。両脚は力を入れて閉じていた。
 自然に振舞うって?そうよ、力を抜くのよ。緊張して痛かったおしりをずいと少し前にずらした。
 そのはずみにそれまでぴったりと閉じていた両脚がゆるゆると開いていった。
 視界の隅であの先生が少し動いたような気がした。
 ばか!かえってあの先生から見やすくしちゃったじゃないの!でも、ずっと同じ姿勢のままでいるのは不自然だし、お尻だって痛くなっていたし・・・。
 そうか、お尻、痛いよね。校長先生の話、長すぎ。じゃあ、もっと脚を開いたら・・・。
美波の中の誰かの声。
 目の前で自分の両方の上履きがそろそろと横に広がっていく。肩幅くらいに両方の上履きが見える。くっついていた両膝が離れてしまった。
 股間に新鮮な空気が触れたような気がした。冷たい。
 でも、どうして?体育館の中、こんなに暑いじゃない。
 美波は姿勢を崩すことができなかった。あの先生の視線を痛いほどに感じながら、その先どのように姿勢を変えても不自然に見られるのではないかと心配だったからだ。
 見られてる。わたしのパンツ、見られてる。ううん、パンツだけじゃない。パンツの下のあそこまで見られてるんだ。
 美波の頭の中で妄想が膨らむ。
 妄想の中の美波はパンツを履き忘れている。
 そのことに気づかずに自分は体育座りをしてあの先生にあそこを見つめられている・・・。
 あっ・・・。
 また冷たい空気があそこのあたりを通り過ぎた。
 そうか、あそこが湿ってきていたんだ・・・。
 おしっこをもらしたわけではないのに、ときどきあそこが湿ることは知っていた。
 パパが持ち帰った週刊誌のHなグラビアを見たとき。テレビドラマで女の人が乱暴されるとき・・・。
 美波はそれがエッチなことを考えたときにそうなることをなんとなく知っていた。
 あぁ、わたし今、エッチなんだ。
 あの先生にパンツ見られてエッチな気分になってるんだ・・・。
 やだ、パンツが湿ったら、あそこの形まで浮き出てあの先生に見られちゃうの?
 あん、やだ、恥ずかしい・・・。
「・・・で、ありますから、9月にはみなさん元気に登校してください。」
「全員、起立。」
 ようやく校長先生の話が終わり、号令がかかった。誰もが待ちくたびれたように一斉に立ち上がる。
 なのに突然現実に引き戻された美波は立とうとした瞬間に足がもつれてほんの少しよろめいてしまった。
「大丈夫?校長先生、いつも話が長いからね」
 前に座っていた理子が振り向いて手を差し伸べてくれた。
「うん、大丈夫。ちょっとよろけただけ。」
 美波は作り笑顔で理子に微笑んで見せた。
「何考えてたんだろ、わたし」
 美波はさっきのことを忘れようとスカートのおしりをぱたぱたと払った。
 低学年から退場が始まっていた。あの先生の姿はもうそこにはなかった。

「ただいま・・・。」
 玄関のドアを開けて声をかけたが、誰もいるはずがない。しーんとした静寂音が耳に響くだけ。
 使い古したランドを背負ったまま、二階の自分の部屋に上がる。
「ふーっ。」
 片手に提げてきた布製のバッグには一学期に仕上げた絵や習字、それとリコーダーや絵の具セット、習字セットがつまっている。それをベッドの上に投げ出す。持ち帰った副読本がつまったランドは机の上に投げ出す。
「ふーっ。」
 美波はもう一度溜息をついた。
 通知表は申し分ない。ママが帰ってきて見せたら大喜びするだろう。
 美波の溜息はそのせいではない。
 さっきのことだ。終業式でのあのことだ。
「やだ、パンツ穿き替えなくちゃ」
 あの先生の視線に気づいて、自分の中で膨らんだ妄想。
 その妄想でパンツが湿ってしまった。
 終業式のあとひとりでトイレに行ってみると、パンツのあそこに当たる部分がほんのわずかだが湿っていたのだ。しかしよく見るともっと大きく湿ったのだが、乾いてしまった部分がうっすらとシミになっていた。そのシミの跡を茫然と見つめてしまった。
 パンツは下ろしたての可愛らしいピンクのものだった。その点はほっとした。
「擦り切れたような古いパンツじゃなくてよかった。」
 そんなことを考える自分にトイレの個室でひとりほほを赤らめた。
 その湿りが何であるか、しっかりとした知識はないものの、美波にはなんとなくわかっていた。
「あのとき、わたしってHだったんだ・・・」
 性的な知識がなくとも、それが性的なことと関わりがあることはうすうす知っていた。
 これまでもパンツが湿った時はわざわざ洗濯機の下の方に隠すように押し込んできた。
たとえ相手がママであっても、湿ったパンツに気づかれるのは顔から火が出るほど恥ずかしかったのだ。
 下着の入った引き出しを開けようとしたとき、部屋の隅にある姿見に目が行った。
「女の子なんだからしっかり身だしなみを整えなさい。」
 1年前の進級のときにママが買ってくれたものだ。
 美波のような女の子の部屋にはそぐわないような、凝った飾りのついた大きな姿見だ。
美波は上から鏡にかけてある覆いを払いのけた。
 小柄な美波の全身が映し出される。
 買ってもらった当初は毎朝毎晩鏡の前で百面相をしたり、持っている洋服をとっかえひっかえ着てみたりしたのだが、秋に初潮を迎えてから、鏡を見る機会が減っていた。
 日ごとに変化していく自分のからだを映し出すことが怖かったのだ。
 といっても、体型が大きく変化したというわけではない。
 クラスの他の女の子たちのなかには1年前に比べて背が伸びたり明らかに胸が大きくなってブラをつけ始めた子もいた。
 美波の場合、胸は1年前とさほど変わりはないし、背だってほんの数センチ伸びただけにすぎない。
 いわゆる幼児体型のままなのだ。
 ブラだってまだしていない。
 それでも夏にはTシャツが透けるからと無理にスポーツブラを買ってもらってつけている。
 プールの授業のときに理子から「まだいらないんじゃないの?」と鼻で笑われたくらいだ。理子は巨乳というほどではないが、まぁるい形のいい胸をしている。背だってわたしより5センチは高い。
 けれども、当の自分にはわかるのだ。
 わずかながらだが、その体型の変化が。そして、初潮を迎える前とは違う自分自身の変化が。
 それが何であるかははっきりとは言葉にして言うことはできない。しかしその変化は体型の変化以上に大きな変化だと思う。
 美波はその変化を認めたくなかったのである。真実の自分をのぞき込むことが怖かったのである。
 なのに、今日はそんな自分をのぞきこみたかった。確かめたかった。自分の中に起きている大きな変化。それが何であるのか、確かめたかったのである。
 鏡の中に自分の姿がありのままに映し出される。美波はなかなか顔をあげることができない。自分の顔が嫌いだというわけではない。小づくりの、どちらかというと愛らしい顔立ちである。決して飛び抜けた美人というわけではないが、人に安心感を与えるような愛くるしさがある。友だちからも笑顔がすてきだと言われることが多い。なのに、今の美波は怯えたように目を伏せている。
「いつまでこうしているの?」
 体育館にいたときの自分の中の誰かがそっとささやく。
「本当の自分を知るのが怖いの?臆病ね。」
 その声がもうひとりの自分だということはわかっている。視界の片隅に鏡の中の自分が入るくらいにそっと横を向いてみる。自分の顔が視界の隅に映し出される。いつもと違った表情に見える。それは、さっきの体育館のあの先生の表情に似ていると思った。
「さっきのあの先生、今のわたしみたいな気持でわたしのこと、見てたのね・・・」
 こわごわと顔を鏡に向ける。
「あ」
 見たこともないような自分の表情に美波は思わず声をあげてしまった。その表情は美波が誰にも見せたことがない表情だった。押し隠された本能がそのまま現れたような表情。パパにもママにも、先生にも友だちにも見せたことのない表情。見られてはいけない表情。あられもなくはしたない表情。
「わたしもあの先生と同じ。」
 いやらしいことを考えてるときの表情。
 胸がどきどきしてくる。なんで鏡の中の自分を見ているだけなのに、こんなにどきどきするんだろう。
 そうか、この人はあの先生、わたしじゃない。
 あの先生がこの鏡の中にいるんだ。また私はあの先生にのぞかれているんだ・・・。
 美波は鏡の前から離れ、フローリングの床の上に体育座りした。
 さっきもだいたいこれくらいの距離だったよね。あの先生はだいたいあのあたりに立っていたから・・・。
 姿見に体育座りした美波の全身が映し出されている。スカートの中のパンツが少しだけ映っている。
 さっきはそれからどうしたんだっけ・・・。そうだ、お尻が痛くなって両脚を開いたんだっけ・・・。
 少しずつ脚を開いていく。鏡の中に大きく脚を広げた美波のピンクのパンツが映し出される。あそこの部分もパンツごしに映し出されている。
 そうか、さっきはこんな風に見えてたんだ・・・。
 美波のあそこがじわっと湿った。いや、もはや湿るというよりはおもらしをしたみたいに濡れてしまっていた。あそこの中から熱いジュースが湧き出るようにあふれてくるのを感じていた。
あ、熱い・・・。
 美波はこれまでとは違うものがあそこから湧き出ているのを本能的に実感した。
 それは今まで美波が家や学校で取り繕ってきた「模範的なよい子」の仮面を溶かすような、下半身の奥から湧き出てくる熱いマグマのようなものだった。
 知らず知らずのうちに息が荒くなっている。苦しいくらいだ。
 あのとき、もっと広げていたら、どんな風に見えたんだろう・・・。
 美波は両脚を思いっきり開き、後ろに倒れないように両手を後ろについた。ほとんど180度に近い開脚である。鏡の中のパンツが濡れて大きくシミになっているのがわかる。
こ、こうしたら、どんな風に見られてたんだろう・・・。
 美波は後ろについた右手でパンツのおしりの部分を後ろにぎゅーっと引っ張った。
 あうっ。
 パンツがあそこの割れ目にくいこんだ。今まで感じたことのなかった快感が全身を震わせた。パンツのあそこの部分はすっかりと濡れてしまい、パンツごしにも割れ目の形がくっきりと鏡に映し出されている。
 やだ、こんな風に見られたら、どうしよう・・・。
 目を閉じてさっきの体育館の光景を思い浮かべる。
 あの先生の顔が浮かぶ。先生はさっきとは違ってくいいるようにじーっとわたしの方を見つめている。それもさっきみたいに取り澄ました表情ではなく、欲望を丸出しにしたような獣のような表情。先生はわたしに近寄って来る。わたしは指に力を入れてパンツを後ろに思いっきり引っ張る。そのたびに全身が感電したようにぴくんとはねる。
 先生、もっと、もっと近くに来て見てぇ・・・。美波のいやらしい姿、見てぇ・・・。
 先生はどんどん近寄ってきてついにわたしのあそこの間近に顔を近づけてきた。そして、しばらくパンツごしのわたしのあそこを見つめたのち、ひょいと顔をあげた。わたしの顔を見上げたのだ。そのときの表情。にやりとした、すべてをお見通しというような表情。
 あーーー。
 美波は大きな声を上げたきり、上半身はそのまま後ろに倒れてしまった。
 ふと、目が覚めた。美波は自分が部屋で仰向けのまま大の字になっているのに気づいた。気を失ってしまったようだ。スカートはまくれてしまっていて、おなかまで出ていた。
 そのはしたない自分の恰好に気づいて美波はスカートを戻し、あわてて姿見に覆いをかぶせた。
 それから床の上に正座した。
 どうしちゃったんだろう・・・。こんなことしてしまって、自分が恥ずかしいよ・・・。
 正坐をするとパンツのあそこの部分の冷たさが感じられた。
 やだ、こんなになっちゃうなんて・・・。
 冷たさが自己嫌悪を募らせる。ゆっくりと立ち上がった美波は何も考えまいと意識しながら下着を履き換えた。汚れた下着は確認もせずに掌で丸めた。けれども握りしめた掌に体温とは別のしっとりと冷たさを感じた。その感触がいやがおうにもたった今自分かしたことを思い出させる。階段を下り、風呂場の洗濯機の底に下着を押し込んだ。

 その日は下のダイニングのテーブルで夏休みの宿題をした。さっきしたことを忘れるために何か別のことに熱中しようとしたのだ。その甲斐あってか、宿題のワークブックの半分以上をやり終えてしまった。
 帰宅した母親に通知表とワークブックを見せた。ものすごく喜んでくれた。
 入浴後も宿題に熱中した。
 これまででこんなに宿題がはかどったのは初めてだった。
 忘れよう、さっきのことは。あんなことしてたら、自分がだめになっちゃうよ・・・。
 思いだしそうになると自分に言い聞かせては忘れようとした。
 しかし、その晩、美波は夢を見てしまった。
 体育館だ。
 全校生徒が整列して座っている。
 わたしは・・・。
 あぁ、昨日と同じ。
 前には理子が座っている。あくびをかみ殺している。
 横には先生たちが整列している。
 え?
 全員があの先生?
 あの先生は同じ表情でわたしのことをじっと見つめている。
 やだ、今度は見せないよ。
 美波は両脚をきつく閉じた。
 ところが、自分がなにも着ていないことに気づいた。
 上履きすら履いていない。
 え?え?
 わたし、裸なの?どうして?
 夢の中だということはわかっていたのだが、とんでもないシチュエーションにとまどってしまった。
 美波は両腕で両脚を抱え、身を縮こまらせていた。
 お願い、誰もわたしが裸だってことに気づかないで・・・。
 美波は祈るように目の前で組んだ腕に顔を押しあてた。
 すると、人の気配がした。
 あの先生だ。あの先生がわたしのすぐそばに立って上からじっと裸のわたしを見つめている。
 やだ、あっち行ってよ!
 ところが、思わず見上げたあの先生もまた裸だったのだ。
 え?どうして?
 目の前にあの先生の股間がある。
 けれどもあの部分はもやがかかったようにぼんやりしている。
 美波は男性のあれを見たことがなかった。
 もちろん小さいころは父親と風呂に入ることはあったが、あそこのようすはぼんやりとしか覚えていない。
 しかしそれだけでも美波にとっては衝撃だった。
 裸の男の人が目の前にいるということだけで十分に衝撃的なことだったのだ。
「きゃあーー!」
 そこで目が覚めた。
 部屋の中はまだ真っ暗だった。
 心臓が飛び出るかと思うほどに高鳴っていた。
 やだ、忘れようとしているのに・・・。
 パンツが濡れているのに気づいた。
 すぐに履き替え、脱いだパンツはベッドの下に押し込んだ。

 ピンポーン。
 居間のチャイムが鳴った。時計を見ると10時少し前。インターホンの受話器を取り上げると予想通り理子だった。
「ねえ、美波ぅー。起きてる?早く行こうよぉー」
「ちょっと待ってよー、今準備するからぁ」
 ふだんは約束の時刻を過ぎるのが当たり前のくせに、こういう時だけはきちんと時間を守るんだから。
 昨日の帰り道で理子は聞いてもいないのに白状したのだ。
 理子のお目当ては本日のプール当番の先生。つまり、ゆうべの私の夢に登場してきたあの先生だ。どこで調べてきたんだか、理子はしっかりとあの先生の当番の日を確認していた。
「だって、すてきだよねー、あの先生。うちの学校ってさ、どっちかっていうとお年寄りの先生が多いんだけど、ウチムラ先生って今年大学を卒業したばかりなんだってさ。大学時代にはラグビー部で全国大会にもレギュラーで出場したことがあるんだって」
 そうか、ウチムラ先生っていうんだ・・・。まったくどこでそんな情報仕入れてくるんだか・・・。わたしは洗面所で水着を着ながら美波と話をしていた。勝手知ったる我が家。理子はテレビを眺めながら我が家の居間でくつろいでいる。
「ねえ、まだー?早くしなよぉー」
 お前には言われたくないぞ、そんなセリフ。
「おまたせー、待たせちゃった?」
「おっ、そのワンピース、新しいやつ?かわいいよぉーーー。」
 ソファーからはねあがるようにして理子が抱きついてきた。
「いたい、いたいよ、そんなにきつくしないでよ」
「うーん、かわいいぞ、美波。女のわたしでも思わず抱きつきたくなっちゃうんだよね」
「いたい、いたいってば」
「美波って自分がどれだけかわいいか自覚してないんだよね。渋谷とか歩いてごらんよ、読者モデルのスカウトが群がってくるからぁ」
「冗談ばっかりやめてよ。さあ、早く行かないと更衣室が満杯になっちゃうよ」
 理子がぷにぷにという感じでほおずりしてくる。
「そうだ、そうだ。ウチムラ先生に会いにいくんだった。美波、早く行くよ」
 理子に手をひかれるようにして玄関を出ると、おひさまがぎらぎら輝いていてもう暑くなっていた。絶好のプール日和というやつだ。
 ふたりでプールバッグを提げて小走りに学校に向かう。わたしの家から歩いてほんの五分。小高い丘の上にある。正門は一か所しかない。校庭の向こうに四階建ての校舎が見える。夏休みの初日ということもあってか、先生たちのクルマが何台か駐車してある。プールは本校舎の脇にある。
「さあ、急ごうよ」
 理子がわたしの手を引っぱった。
「何あわててるのよ、プールは逃げないよ」
「プールは逃げないけど、ウチムラ先生が逃げたらどうするのよ」
 夏休みの校庭は誰もいなくて、ぎらぎらとおひさまが照りつけている。本校舎側のすべり台やジャングルジムで低学年の子たちが歓声をあげている。そこには大きな木が何本か植えられていて、ちょうどいい木陰をつくっているのだ。
 その光景を横目で眺めながらわたしたちはプールの更衣室のドアを開けた。
「おっ?意外と少ないね」
 入口の下駄箱は思ったほど埋まってはいなかった。
「みんな市民プールに行っちゃうんだよね。あっちは広いし、浮き袋とか使えるから」
 下駄箱にサンダルを入れ、更衣室の中に入るとプール特有の塩素の匂いがかすかにした。着替えを入れるボックスもまばらにしか使われていない。
「こっちならタダなのにね」
 更衣室にはもう誰もいなかった。ワンピースを脱ぐと下は水着。着替えに30秒もかからない。学校指定のゴムのプールキャップをかぶって髪が濡れないようにする。わたしたちの学年は赤。理子もハ―パンとTシャツの下に水着を着てきたからそれを脱ぐだけで準備はOK。
「去年のがちっちゃくなっちゃったから、新しいの買ったんだよねー」
 理子がぐっと胸を突き出すようにしてみせた。ううっ、大きい。先週授業でプールに入ったときよりも大きくなってるような気がする・・・。まるで水着の下にテニスボールを隠してるみたい・・・。
 思わず両手で自分の胸を隠して理子に背中を向けた。
「ふーん、あらためてこうしてじっくり見ると、美波のおっぱいも順調に育っているねえ・・・。去年なんて前だか背中だかわかんなかったのにね」
「う、うそ。ぜんぜん大きくなってないよ。理子のに比べたら・・・」
「いやいや、ぜんぜんそんなことないよ。ちゃんと大きくなってるよ。からだだって、すんごく女っぽくなってるし・・・」
 理子が両手でおしりをぎゅっと握った。
「きゃっ。」
「おお、柔らかい、柔らかい。でも、美波のお尻って小さくてきゅっとしまってて、うん、とっても形がいいんだね、うらやましい・・・。わたしなんて、ほら、こーんなにでっかくなっちゃって、なんかかっこ悪いな・・・」
「何いってるのよ、理子ったら・・・。理子こそ「ないすばでぃ」じゃない、うらやましいよ・・・」
「ははっ、そう?うらやましい?ふふっ、今日はこの「ないすばでぃ」でウチムラ先生をユウワクしちゃうんだぁ」
 理子がポーズをとってくるっとまわってみせた。
 理子は本当にうらやましいくらい「ないすばでぃ」だ。胸とお尻は大きいし、ウェストだってきゅっとしまっている。それに比べてわたしは・・・。ああ・・・。
「でもさ、指定の水着でプールキャップまでかぶって。そのうえ胸にはこれだよ、ダサイったらありゃしない」
 スクール水着の胸には学年と名前を書いた白い布を縫い付けられている。理子はその布のことを言っているのだ。
「でもさ、タダで学校のプールで遊べるんだもの、これくらいはがまんしなくちゃね」
「あーあ、また美波の優等生発言か・・・。せっかくのわたしのないすばでぃ、こんなんじゃ80%オフだよ」
 ぼやく理子と連れだってプールに向かった。
 消毒薬の入った漕を腰だけつかって上から降り注ぐパイプのシャワーを浴びると水着がからだに貼りつくようだった。
「ねえ、その水着、ちょっと小さくない?」
 理子が振り返ってちょっと心配そうに声をかけてきた。
 わたしの水着は去年と同じものだ。確かにちょっときついかもしれない。自分では去年からさほど成長していないと思ったため、母から「新しいの買ってあげようか?」ともちかけられた時も、「大丈夫だよ」と断ったのだった。
 しかし、確かにちょっときついかもしれない。1年もたてば自分では気づかないうちに成長していたのだろう。
「うぉ、美波、せくしーだねぇ。水着がぴったり張り付いてぼでぃらいんがくっきりだよぉ」
「うそ?そんなに?」
 思わず両手で胸と下を隠した。
「うーん、その仕草、とーーってもかわいいよぉ」
「何言ってんのよ、ばか」
 意識していたことを指摘されたため、ほんの少しほおが赤らむのを感じた。けれどもぎらぎら輝くおひさまの下では誰にもわからなかっただろう。
 25メートルの狭いプールは黄色や緑のキャップをかぶった低学年や中学年の子たちでいっぱいだった。あちこちできゃあきゃあと歓声があがっている。
「がきんちょばっかだね」
 理子がつぶやく。
「学校のプールで何期待してたのよ」
「あ、あそこだ」
 理子の視線が向こう側の監視台に向く。麦わら帽をかぶった昨日の先生が水着姿でプールで遊ぶ子どもたちを見張っていた。
「あっ、ウチムラ先生だっ」
 理子がうれしそうに小さく叫んだ。麦わら帽で顔は隠れていたが、ひきしまった精悍なからだつきは確かに昨日の先生だ。美波はどきまぎしてプールのほうに視線をそらした。
「美波、あっちまで泳いでいこうよ」
 理子は飛び込むようにプールに入る。わたしもつられてあわててプールに入った。
 プールの水は思ったよりも暖かかった。まだ夏休みの初日ということもあってか、水がきれいだった。
 わたしたちは平泳ぎで黄色や緑のキャップをよけながら泳いでいった。その距離は20メートルくらいしかない。
 反対側に到達した理子はプールを上がるとためらうことなくすたすたと監視台のウチムラ先生に向かって歩いていった。わたしは遅れまいと急いで理子のあとを追った。
「ウチムラ先生、こんにちわっ」
 理子が先生に声をかけると先生はちょっと驚いたようにわたしたちの方を向いた。
「んっ?あっ、こんにちわ」
 麦わら帽子のつばでかげになっているが、確かに昨日の先生だった。
 ウチムラ先生はわたしたちのキャップのと胸に縫いつけられたネームを確認したようだった。
「君たちは上級生なんだね。めずらしいね、上級生になると学校じゃなくて市民プールの方に行くってきいていたのに」
 理子はこれ以上はムリというくらい目を大きく見開いて、これまで聞いたこともないようなかわいこぶった声をあげていた。
「はい、だってわたしたち、学校の近所に住んでいるんです。それに、こっちの方がきれいだし、先生方がしっかり監視してくださるから、安心なんです」
「タダだから」という最大のメリットが抜けている。
「んっ?なんでボクの名前知ってるの?」
「だーって、先生、わたしたちのあいだじゃ有名なんですよぉ。ジャニーズみたいだねって。ねっ」
 理子がわたしに同意を求めてきた。わたしはつられてこくんとうなずいた。ウチムラ先生はわたしの方に視線を移した。そして、まばたきをしてわたしの顔を見つめた。
「気づいたのかしら・・・」
 昨日の終業式で先生が見つめていた「ぱんつの主」だって・・・。
 そのとき、プールで「ぼちゃん」と大きな水音がした。黄色キャップの低学年の男の子がスタート台から飛び込んだのだ。
 先生は麦わら帽を脱ぎ棄ててプールに飛び込んだ。わたしはプールサイドに転がった麦わら帽を拾った。
「おーい、ダメだぞ、飛び込みは禁止だ。あぶないじゃないか」
 先生は水深の浅いプールをすいすいとクロールで泳いでいって飛び込んだ子のところまで行った。それからその子に注意をしてからまた監視台に戻ってきた。
 わたしはプールからあがってきた先生に麦わら帽を渡した。
「ありがとう」
 先生は麦わら帽子をかぶり直して監視台に坐りなおした。
 全身が水に濡れていた。おひさまを浴びてきらきらしている。腕から水がぽたぽたと滴り落ちてコンクリートの床に小さな水たまりができた。
「低学年の子はちゃんと見ていないとだめだね。何をしでかすかわからない」
 先生はハ―パンタイプの水着ではなく、競泳用の水着だった。水を吸った水着は先生の腰にぴったりと張り付いている。さっきまではわからなかったのだが、下のかたち、あそこの形が薄い水着をとおして鮮明になっていた。
 こんもりとしている。
 濡れた水着の上からあそこの形がなんとなくわかる。
「先生、泳ぐのも上手なんですね、記録とか持ってるんですか?」
 理子は先生の顔だけを見てしきりに先生の気を引こうと躍起だ。わたしみたいにいやらしいことなんて考えていないようだ。
 わたしは理子の後ろで、先生の股間を眺めていた。
「あの水着の下はどうなっているんだろう・・・」
 監視台に坐った先生のあそこはわたしのちょうど目の高さにある。先生は理子と話をしている。
 わたしはじっと先生の水着の下の股間を見つめている。
「昨日はわたしのぱんつ、見つめてたでしょ?今度はわたしが先生のあそこ、じっと見つめてあげる。先生、これでおあいこだよね・・・」
 心の中でつぶやいてみた。胸がどきどきした。
「キノウチさん?」
 先生が突然わたしの名前を呼んだ。えっ?なぜ先生がわたしの名前を?
 胸のプレートに名前が書いてあったことに気付くのにほんの少し時間がかかった。
「は、はい?」
「キノウチさんも1組なんだね?」
「は、はい、そうです」
「じゃあ、担任はヤマウチ先生だね」
「そうなんですよ、でもヤマウチ先生って、算数教えるのがあんまりうまくなくて・・・」
 理子がしきりにヤマウチ先生の悪口を言っている。ふだんはそんなこと言ったことがないくせに・・・。
「・・・やっぱり男の先生がいいなって思うんです。できればウチムラ先生みたいな・・・」
 ウチムラ先生は理子の饒舌でとりとめのない話にいちいち相槌をうってくれている。先生は何もしゃべらないわたしのほうもちらちらと見てくれる。そしてときどきわたしにも話をふってくれる。やさしい先生なんだ・・・。
 理子の話は先生が休憩時間の始まりを知らせる鐘を鳴らすまで続いた。
「今から20分の休憩です。それまではプールにはぜったいに入らないように」
 先生は監視台を下りてきた。
「ちょっと職員室に行ってくるから子どもたちを見ていてくれないか。すぐに戻るから」
 そう言って先生は水着のまま更衣室に入っていった。ところが、着替えるのかと思っていたが、水着のまま外に出て、そのかっこうで渡り廊下を通って本校舎の廊下に入っていったのだ。
「水着のままで」
 先生はあのかっこうのままで職員室に入るんだろうか。職員室には女の先生もいるはずなのに。
 水着といったってあのかっこうはぱんつ1枚と同じじゃない。
「ぱんつ1枚で学校の中を歩く」
 もし、もしそれがわたしだったら・・・。
 考えただけでどきどきしてしまった。
「ねえねえ、やっぱりすてきじゃない?」
 理子の声にはっと我にかえった。
「えっ?なにが?」
「なにがって、ウチムラ先生にきまってるでしょう。ぼーっとしちゃって、ひょっとして、美波もほれた?」
「な、なにに?」
「なにって、ものじゃないでしょうが・・・。ウチムラ先生によっ」
 言えるわけない。わたしが見とれていたのはウチムラ先生じゃなく、先生のあそこだなんて・・・。「もの」だったなんて・・・。
「ごめん、わたし、ちょっとトイレに行って来る。このままここにいてね。戻ってきたらまたウチムラ先生とお話するんだから」
 そう言って理子は走って行った。
 トイレは本校舎にしかない。プールにトイレは設置されていないのだ。
 しばらくするとハ―パンにTシャツの理子が渡り廊下を渡っていくのが見えた。
 ひとり残されたわたしは一応先生に言われたとおりプールサイドの子どもたちのようすを眺めていた。次の開始時刻までまだ10分ほどある。みんなバスタオルでからだをふいたり、座ったまま金網にもたれておしゃべりをしたりしている。
 監視台の座面は先生の濡れた水着で濡れていた。お尻の形にまあるく濡れていた。
 美波は昨夜のことを思い出していた。
「男の人もえっちなこと考えると濡れるのかな?」
 昨夜の自分の下着のことを思い出していた。いやらしいことを想像すると濡れる。湿ったぱんつ。恥ずかしいぱんつ。今頃は洗濯機の底。
 昨夜の感触が戻ってきそうな気がした。
「だめ、こんなとこでそんなこと考えちゃ・・・」
 おひさまは相変わらずじりじりと照りつけている。
 水着もすっかりと乾いたようだった。
「ごめんごめん、遅くなっちゃって」
 更衣室のドアを開けて先生が小走りで戻ってきた。
「あれ、アシノさんは?」
「トイレに行きました」
「ああ、そう。いやあ、水着だってこと忘れて、職員室に入ったらヤマウチ先生に怒られてね。もう学生じゃないんですよってさ」
 先生は頭をかきながら遅れてきた言い訳をした。
「あっ、もう時間だね」
 先生が鐘をがらんがらん鳴らすと待ってましたとばかりに子どもたちがプールにからだを沈めていった。
 たちまち喧騒が戻る。
 わたしもゆっくりとプールに浸かって頭までもぐった。そうしないとさっきのいやらしい気分が消えそうもなかったからだ。
 乾いていたからだで水の中に浸かるのは気持ちがいい。すぐに上がってまた先生が座っている監視台のそばに体育座りした。
 監視台の上から声がした。
「アシノさん、戻ってこないね」
 わたしは体育座りのまま、先生の方に向き直った。
「たぶん、教室がある4階のトイレに行ったんだと思います」
 見上げると先生と目があった。
「そうか、1階にもあるのに・・・。律義なものだね」
 先生の視線はわたしを見下ろしている。その視線がほんの少し下がったような気がした。
体育座りしている私の股間のあたり?
 そう考えるとどきっとした。
「昨日の終業式と同じじゃない・・・」
 プールに浸かって冷えたはずのあそこがきゅんと熱くなったような気がした。
 胸がどきどきしてきた。
「先生、見てる・・・。また、わたしのあそこ、見てる・・・」
「理子、そろそろ戻るはずなんだけど・・・」
 わたしは顔だけ渡り廊下の方を向きました。
 視界の隅に先生のようすがわかる程度に・・・。
 先生の視線は動いていない。じっとわたしの股間をのぞいている。わたしはそれに気付かないふりをして、渡り廊下を眺めている。
 あっ、熱い・・・。あそこがじとっと熱くなってきた。濡れちゃうかもしれない。ううん、だいじょうぶ。さっきプールに浸かったから、水着も濡れたまま・・・。濡れたって気づかれないよ・・・。
 プールの中は子どもたちの喧騒がわんわんと響いている。
 わたしだけが、いえ、わたしと先生だけがまったく別の世界にいるみたいだ。
「来ないなあ・・・」
 わたしは渡り廊下に視線を向けたふりをしたままつぶやく。閉じていた両足を少しずつ開いていく・・・。
 視界の隅で先生の表情がほんの少し動いたのを見逃さなかった。
 昨日と同じだと思った。
「・・・見てる・・・、わたしのあそこ、見てる・・・」
 あそこの奥からじわっとにじみでてくるのが感じられた。
 息が荒くなりそうだった。でもきづかれないようにしなくちゃ・・・。
 だいじょうぶ、少しくらいしみだしちゃったって、水着も濡れてるから気づかれないよ・・・。
 大胆になったわたしは、座ったままお尻を前に動かしました。ぴっちりした水着は後ろにひっぱられて、水着があそこにくいこむみたいに・・・。
「理子、どうしたんだろ、大きい方かな・・・」
 ああん、自分では見えないけど、水着にくいこんであそこの形まではっきりしてしまったかもしれない。
 視界の隅で先生がほんの少し顔を前に突き出していた。
「はは、女の子がそんなこと、言っちゃだめだろ」
 先生があわてたように足を組んだ。声もうわずっているみたい・・・。
 わたしも自分の大胆さに驚いてしまって、ほんの少しだけからだが震えているみたいだった。内腿がぴくぴくけいれんするみたい・・・。もっと大きく広げちゃおうかな・・・。もっと水着を食いこませちゃおうかな・・・。

 そのとき、渡り廊下を理子が小走りでやって来るのが見えた。
 もうだめ、このままじゃわたし、何しでかすかわかんないっ。
 わたしは理子に手をふろうとして立ち上がろうとした。
 ところが、立ち上がった瞬間にバランスをくずしてしまい、そのままプールに落ちてしまったのだ。
「あぶないっ」
 先生が監視台から飛び下りてプールに落ちたわたしに手を差し伸べてくれた。
 わたしは一度頭まで水に浸かったあと先生の手をつかんで引き上げてもらったんです。 そのとき、勢いあまって抱きとめられるようなかっこうで先生といっしょにプールサイドに転がってしまいました。
 うつぶせで倒れたわたしのお尻の下に先生の股間が・・・。
 ほんの一瞬でしたが、硬い先生のアレがわたしのおしりの割れ目にむにゅっという感じであたったんです。
 先生の太い両腕は後ろから素肌りわたしを抱きしめるように・・・。
 はじめて男の人の肌に触れてしまいました。
 一瞬凍りついてしまったようになったんだけど、すぐにそのとんでもない態勢に気づいた先生があわてて立ち上がりました。心臓はもうどきどきでした。
「あぶないじゃないか」
 先生は横すわりになったわたしをそのままにして、すぐに監視台に戻りました。
 そこに水着の理子が戻ってきたんです。
「あれー、美波、泳いでたの?」
 全身びっしょりのわたしを見て理子が言いました。
「いやぁ、キノウチさん、たった今プールに落ちたんだよね」
 先生がにやにやしながら理子に言います。
「あーん、美波ったら・・・。ほんとにドジなんだから・・・」
 饒舌な理子の登場によって、それまでのインビなムードはすっかり消えてしまい、じりじり照りつけるおひさまの下にふさわしい健康的な場面に戻ってしまったのです・・・。

 帰り道、理子はウチムラ先生と仲良くなれたとごきげんでした。
「あ、ジュースおごっちゃうね」
 帰り道のコンビニで気前よくジュースを買ってくれました。
「今度はね、あさっての午前だって。またつきあってくれるよね」
 わたしの返事も聞かずに一方的にあさっての約束をさせられてしまいました。
 わたしの家の前でばいばいして、わたしは家の中に入りました。
「あさってか・・・」
 先生に会えること、わたしにとってうれしいことなんだろうか・・・。また先生とプールで会ったら、今度はわたし、どんなことしてしまうんだろうか・・・。
 おかあさんが準備してくれたおひるごはんも食べず、エアコンをつけた2階の自分の部屋のベッドの上に寝そべってぼんやりしていた。
 うれしい・・・、でも、どんどん暴走してしまう自分がこわい・・・。どっちなの?ほんとうのわたしの気持ちは・・・。
 そんなことを考えているうちに、プールの疲れもあってか、ついうとうとしてしまったんです・・・。

 監視台に先生が座っている。後ろを振り向くと黄色や緑のキャップがひしめいている。先生は事故がないようにとじっとプールを監視している。わたしはその脇でじっと先生を見つめている。理子はいない。わたしひとりだ。
 視線を少し下げる。水で濡れた先生の水着。あそこの部分がもっこりとふくらんでいる。この下に先生のアレがあるんだ・・・。あそこがきゅんとする。先生はプールから目を離さない。それをいいことにわたしは先生の股間にもっと顔を近づけた。どきどきする。興奮したわたしの鼻息がかかるほど近い。ほんの数センチ。触ってみたい・・・。わたしはそっと手を近づけようとした。ところがそこで私は自分が裸だということに気付いたのだ。何も着ていない。「ひっ」と息をのみ、伸ばしかけた手をあわてて引っ込めた。すると先生はわたしに気づいて監視台からゆっくりと下りてきた。
「どうしたんだい?」
 先生はにやにや笑いながらわたしの手を取った。逃げようとするのだが、からだが動かない。先生はゆっくりとわたしの両手を先生の水着の腰の部分にかけさせた。
「ほら・・・」
 先生は胸で両腕を組んでいる。わたしは静かに腰を落として先生の水着をゆっくりと引き下げていった・・・。水着は先生の太腿まで下げられた。わたしは裸の先生の腰の前でうっとりしている。でも、先生のあそこは光っていて何も見えないのだ。それでもわたしはゆっくりとその光の中に顔を近づけていく・・・。何かとがった棒のようなものがわたしの唇に触れた。その感触に驚いてわたしは立ちあがった。ところが立ちあがった瞬間に足がもつれてしまってわたしはプールに落ちてしまった。落ちる瞬間に先生がわたしの手を取ってくれた。しかし勢いがついてしまっていたため、わたしは先生と抱き合うようにして一緒にプールに落ちてしまったのだ。水の中でわたしはもがいた。深く深く沈んでいくようだった。手をのばすと何か棒のようなものに手が触れた。それが先生のアレだということはすぐにわかった。目の前に先生の横顔があった。わたしの方を向いてはいなかった。わたしはそのことにかえって安心して棒を握りしめた手に力をこめて引き寄せた。するとわたしたちは水面に顔を出すことができた。ふたりで大きく息を吸うと、プールの手すりにつかまってプールサイドに上がった。ふたりともはあはあしていた。そこでふたりでプールサイドに大きく横たわって息を整えた。おひさまがじりじりとふたりの裸のからだに照りつけた。
 からだが乾いてくると、先生がからだを起こして言った。
「おい、ぼくたちの服はどこだ?」
 わたしはふたりとも裸だということに気づき、起き上がって思わず両腕でからだを隠そうとした。
「服を捜しにいこう」
 先生は立ちあがってわたしに手を差し伸べた。わたしは先生の裸をまともに見ることができず、目をそむけた。
「服は職員室にある」
 先生は恥ずかしがるわたしの手を引いていった。わたしたちは更衣室を抜け、渡り廊下に出た。遠くに水着を着た理子を見つけたが、わたしたちには気づかずに階段を上がっていった。
「誰かに会ったらどうしよう・・・」
 わたしはこわくて先生の手を握り締めた。先生はわたしを振り返り、にっこりと笑った。職員室は遠かった。長い廊下をどこまでも歩いていった。途中で低学年の子たちと何人も出会った。そしらぬ顔をして通り過ぎる子もいれば、裸のわたしたちを指さしてはやしたてる子たちもいた。先生はその子たちに「あぶないぞ」といちいち声をかけていた。わたしは恥ずかしさでいっぱいで、自分の顔が赤らんでいることを自覚していた。片方の腕で胸を、もう片方の腕であそこを隠しながら歩いていた。しかしそんなことをしても、校舎の中を裸でいることはわかられてしまう。通り過ぎれば裸のお尻や背中は丸見えなのだ。わたしが裸でいることを隠すことはできないのだ。しばらく歩いてようやく職員室に到着した。わたしは裸で職員室に入ることをためらった。先生はそんなわたしを引き寄せて肩を抱きながら職員室の引き戸を開けた。中にはヤマウチ先生がいた。ヤマウチ先生はいつものようににこにこしながらわたしたちを中に入れてくれた。
「ぼくたちの服はどこですか?」
 ウチムラ先生が申し訳なさそうに言うと、突然ヤマウチ先生は目を吊り上げてどなり始めた。なんと言っているのかはわからなかった。けれどもそれが裸のわたしに向けられているのはわかった。どうしてわたしだけ。かたわらにいるはずのウチムラ先生の方を向いたが、先生はどこでみつけたのか、水着を着ていた。わたしだけが裸で取り残されたのだ。わたしだけがしかられていた。わたしはいたたまれずに職員室を飛び出した。もちろん何も着ていない。幸い廊下には誰もいなかった。わたしは小走りで階段に向かった。トイレに逃げ込もう。トイレなら裸のわたしを隠すことができる。2階、3階、そして4階へ。向こうにトイレがある。わたしは小走りで廊下を走った。ああ、あと少し・・・。すると、トイレの手前の教室からクラスメートがぞろぞろと出てきた。わたしは思わずその場にかかみこんでしまった。その中に理子もいた。きちんと服を着ている。みんなはかかみこんでいるわたしをとりかこむようにして上から見下ろしている。誰かが言った。
「早く行かないと終業式、始まっちゃうよ」
 観念したわたしは立ちあがった。そしてみんなと一緒に今上ってきたばかりの階段を下りていった。もちろん裸のままで・・・。わたしは体育座りで体育館に坐っていた。前に坐っているのは理子だ。壇上で校長先生の話が始まった。理子が後ろを振り向いて小声でささやいた。
「校長先生の話、長いんだよねー」
 そして裸でいるわたしに気づいてすぐに前に向き直した。わたしは誰にも気づかれないようにと身をこわばらせてじっと校長先生だけを見つめていた。すると、視界の隅にわたしをじっと見つめている視線を感じた。誰だろう?ジャージを着た若い先生、ウチムラ先生だった。
「先生、見たい?見たいの?」
 わたしはゆっくりと閉じていた両脚を開いていった。先生の視線があそこに突き刺さるのを感じた。
「もっと?もっと見たいの?」
 わたしは不自然なくらい大きく両脚を拡げた。ああ、ウチムラ先生の視線があそこに刺さる。あそこの奥からどくどくとあふれ出してきている・・・。だめ、そんなに見つめないで・・・。わたしは思わず視線をウチムラ先生に向けてしまった。すると、横に並んでいる先生たちがみんなわたしのあそこを食い入るように見つめていた・・・。
「だめ、いや、見ないで・・・」
 わたしのあそこからおしっこがほとばしるように放出されてしまった・・・。

 そこで目が覚めていたはずだ。からだがびくんびくんと反り返るようにはねあがった。「ああ・・・」
 現実に戻ったわたしの声・・・。それに混じるようにベッドをしたたるぼたぼたという音・・・。
 おもらし、おもらししてしまった・・・。
 現実におもらししてしまっているわたし・・・。ああ、これって夢のなかじゃないんだ・・・。ベッドの上でおもらししてしまっているんだ・・・。頭の中ではわかっているのにおしっこを止めることができない。からだを起こすこともできない。
 からだは自分の意志とはかかわりなく何度もびくんびくんとはねあがっている。おなかのあたりや太腿がおしっこであたたかい・・・。
「だめ、とめなきゃ・・・。おしっこ、とめなきゃ・・・」
 ベッドシーツはおしっこですっすり濡れているはずだ・腰のあたりだけでなく、背中のほうにまでおしっこが伝わってくるのがわかった。
「やだ、いやだ、わたし、どうしたっていうの?」
 頭の中で小さな気泡のようなものがぱちんぱちんとはじけるようだ・・・。
 そのたびにおしっみの穴のあたりから脳天を貫くような気持ちよさ突き抜けていった。
 わたしはその快感に打ち勝つことができなかった。
「おしっこを止めたら、この快感が失われていく・・・」
 あらかたおしっこが出尽くしていたはずなのに、わたしはおしっこを最後の一滴まで絞りだすように、おしっこの穴を開放していた・・・。垂れ流すことによって得られる快感に身をまかせたいと願っていたのだ。

 おしっこはようやく出尽くした。
 わたしはベッドの上でおしっこまみれのシーツの上に横たわっていた。もはやおなかから下はおしっこまみれだった。
 これって夢?いやらしい夢を見ているの?それでゆうべみたいにわたし、こんなに感じているの・・・。

 わたしは天井を見上げながら舌をつき出したままはあはあとあえいでいた。
 おしっこは居間のフローリングにも巻き散らかされているはず。おかあさんが戻ってくる前にシーツと床をなんとかしなくちゃと思うんだけど、からだが動かない。いつまでもこうしていたい・・・。今まで感じたことのなかったほどの大きな快感・・・。いつまでもそのままでいたかった。
 だめ、早く片付けなきゃ・・・。おかあさんが帰ってくる前に後始末しなくちゃ・・・。
ふたりのわたしがせめぎあう。

 ようやくベッドからからだを起こしたとき目に入ったのはとんでもない光景。あわてて掃除しました。シーツとワンピースとパンツは洗濯機へ、床は雑巾でごしごしと何度も。ベッドのスプリングはベランダの外で天日干し、窓をを全開にして消臭スプレー・・・。

 でも。でも、そんな後始末の苦労も、さっきの快感には勝てないんです・・・。

「わたしって、いやらしいんだ」
 このときのことは、わたしにしっかりと自覚させたのです。

                                  つづく?



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