露出の法則

                      作:TEKE・TEKE

僕が彼女と出会ったのは、そろそろ初夏になろうかという蒸し暑い夜だった。
僕はむらさき商事という中堅商社に勤めて10年になる、まあベテランの営業マンだ。
僕のアパートは駅から歩いて15分ほどのところにあり、途中に市民公園がある。
それなりに広い公園で中央には噴水がありベンチやトイレなども完備している。
「街により多くの緑を」のスローガンのもと公園の外周には常緑樹が植えられ、その下にはつつじも植えられており、休日などは市民の憩いの場になっている。
しかし、さすがに深夜になると常夜灯がぽつぽつとあるだけで無人となる。
近くには小洒落たマンションや比較的大きな一軒家の立ち並ぶ高級住宅地があり、自警団も巡回しているため治安はよい。 
僕のアパートは公園の向こう側にあり、通勤、帰宅時はいつも公園の中を通って行くのが常だった。 

その夜も取引先との接待で終電となったが、いつも通り公園の中を通った。
「きゃあ・・・」
小さく女性の悲鳴が聞こえた気がした。僕は足をとめてあたりの気配を探る。
あそこだ。 
2つの常夜灯の中間あたり、ちょうど暗がりになる場所のつつじの茂みが揺れている。
学生時から合気道をたしなんでおり、腕っ節には多少の自信がある。
「おい!なにをしている!」
声をかけると、男が脱兎のごとく飛び出してきた。 
すかざす足を引っ掛けてころばせると、右腕をねじりあげながら馬乗りになる。
ワイシャツにスラックス姿の中年のサラリーマン、酔っ払っているようだ。  
僕も飲んではいたが接待するほうだったのでセーブしていた。 
茂みの奥を見ると若い女性が身を起こしたところだった。
20歳そこそこ、長い髪に色白の顔は結構美人だ。
黒いコートのようなものを着て右手で前を必死にあわせている。 
今の時期にコート?と思ったがとりあえず声をかけた。
「大丈夫?」
「は、はい」
恥ずかしいのか彼女は俯いてしまった。
「こいつ、どうする? 警察呼ぶか?」
警察という言葉に男が反応しもがき始めたので腕に力を込めるとおとなしくなった。
「い、いや、警察はやめてください!」
彼女が激しく頭を振って拒否した。 
なにか警察を呼んだらまずい訳でもあるのだろうか?
彼女を改めて見ると着ているのは薄手のレインコートのようだった。 
必死で前を合わせようとしているがコートの裾がずれ上がり横座りに投げ出された脚は、太腿の中ほどまで見えている。
超ミニスカートでも履いているのかと考えたところで、はっと思いついた。
僕は馬乗りになっている男の上からどいて立たせる。 
胸倉をつかんで相手の目を覗き込みながら低い声で言った。
「今夜のことは全て忘れるんだ。二度とこの公園も通るな。そうすれば警察には通報しない」
男は真っ青になって何度も頷く。手を放してやると転がるように公園を出ていった。
僕は彼女のほうに向きなおると手を差し出した。
「さあ、立って」
彼女は右手でコートを抑えながら左手をさしだす。
僕はその手をつかみ立たせてやったが、一瞬コートの裾は割れて黒い茂みが見えてしまった。 
予想通り彼女のコートの下は全裸だった。
「あ、ありがとうございました」
必死でコートの前が割れないように抑えながらぺこりと頭をさげる。 
「だめだよ、こんな危ないことしちゃ・・・、野外露出をしていたのだろう?」
彼女は目をみはり後ずさる。
「ご、ごめん、怯えないで。何もしないから」
「どうして・・・」
「わかったかって?昔付き合っていた彼女が同じ趣味だったの。見張りやらボディガードやらいろいろ付き合わされたからね」
「その人は?」
「もう別れたんだ」
「ごめんなさい」
「別にあやまってもらわなくてもいいよ。でも君、無防備すぎだよ。誰かパートナーはいるの?」
「いえ、いません」
「ここらへん治安はいいといっても色んな人がいるし、こんな魅力的な餌がぶらさがっていたらつい手を出してしまう奴もいるしね。野外露出をするのは初めて?」
「ここでは初めてです」
「ここではって、他では経験あるの?」
「私の実家では時々していました」
「もしかして結構田舎?」
「失礼な!茨城は都会です!」
「まあ、いいや。地方都市と東京じゃ全然違うからね、注意しないと。大学生?」
「清雅女子学院の3回生です」
「ああ、あのお嬢様学校ね。でも何でいまさら?2回生までは我慢していたの?」
「2回生までは学園内で寮生活なんです。3回生になって、実家の許しがあれば下宿できるんです」
「じゃあ寮内で露出をしていたの?」
「と言うか、寮ではみんなきわどい格好でうろうろしていましたから。下着姿はあたりまえ、お風呂上りは、トップレスとか全裸のままの娘もいましたし・・・」
「うわっ、秘密の花園というわけか。一度覗いてみたいね」
「でも、刺激がたりなくて・・・」
「それで、一人暮らしをはじめて、今回に至る・・・と」
「・・・」
「そろそろ帰ろうか、送るよ」
「・・・えっ!」
「また変な奴にからまれたらこまるだろう?大丈夫、僕は襲ったりしないから」
「じゃあ、お願いします。えっと・・・」
「水谷碌郎(みずたにろくろう)」
「水谷さん、私は佐藤早紀です」
「へえ、元カノと同じ苗字か・・・」 
「じゃあ、早紀でいいです。そのかわり私も"碌郎さん"と呼んでもいいですか?」
「碌郎さん・・・か、なんか新鮮な響きだな。彼女が年上だったんでずっと呼び捨てだったから」
「碌郎さん、おいくつなんですか?」
「34歳、りっぱなオジンだよ」
「そんなこと無いです。碌郎さんかっこいいですよ」
二人で話しをしながら、ゆっくり公園の出口に向かっていたが、ふと気がつくと早紀はいつのまにかコートを合わせることを忘れてしまっており、隙間から胸や黒い茂みが見え隠れしている。
「早紀ちゃん、いい眺めだね!」
「きゃっ!碌郎さんのエッチ!」
早紀は、あわててコートを閉じる。
「とても野外露出していた娘とは思えないな」
その一言でむくれた早紀は自分のマンションにつくまで一言も口を利かなかった。
早紀の住んでいるマンションは小洒落た4階建てでオートロック方式だった。
マンションの1つ手前の角で立ち止る。
「ここは独身女性専用なんです。来客はロビーで面会か、部屋に上げる場合は管理人に身分証明を見せる必要があります。それに正門前、ロビー、各階にも監視カメラがありますから、セキュリティは万全なんです」
「なるほど、だから実家も一人暮らしを認めてくれたわけだね」
「寮でみんなの目があるのと、一人暮らしではリラックス度が全然ちがいますから、どうしても一人暮らししたかったんです」
「じゃあ、ここでさよならだ。もう一人で露出しちゃだめだよ。早く良いパートナーを
見つけてね」
僕が帰ろうとすると、早紀が引きとめた。
「待ってください。ご連絡先を教えてもらえませんか?碌郎さんは私のマンションを知っているのに、私は碌郎さんの名前しか知りません」
彼女は僕がストーカーになることを心配したのだろうか? 
「わかった、これが僕の名刺、携帯番号とメルアドも載っているから渡しておくね。これが免許証、ほら同じ名前だろ」
彼女は名刺を受取ると頭を下げた。僕は来た道を戻り始めた。 
早紀がずっとこちらを見ているのは感じていたが僕は振り返らなかった。

20分ほど歩いてアパートに帰り着く。
明日は土曜日なので、久しぶりに朝寝ができる。
シャワーを浴びて、就寝前の一杯をやっていると携帯が鳴った。
見知らぬ番号だ。出ると早紀だった。
「どうしたの? また露出したくなった?」
おどけた調子でしゃべってみたが、返ってきた早紀の声は真剣だった。
「明日、改めてお会いできませんか?だいじなお話があるんです」
大事な話の内容の見当はついていた。 
「わかった、じゃあ駅前の喫茶店ルマンドに、11時でいいかい?」
「わかりました」

持ち合わせた喫茶店に20分前に着くと早紀はまだ来ていなかった。 
彼女はおそらく僕にパートナーになってくれ、頼むのであろう。  
たしかに僕は、昔の彼女、佐藤志乃との付き合いで、野外露出のノウハウをいろいろ知っているし、ボディガードとしても役にたつ。 
でも、これは同時に僕の志乃に対する調教の欲求も育てていた。
最初に野外露出にさそったのは志乃のほうだったが、実践してゆく過程でしだいに志乃主導から、僕主導に変わっていった。
僕は志乃が思っている以上の過激な調教を要求し、命令に従わせて無理やり実行させるのではなく説得し、あくまで志乃自身の意思で行わせた。
結局僕がやりすぎてしまい、志乃は「もう、ついていけない」と自ら別れを切り出した。
田舎に帰り、親の進めで見合いして結婚したと聞いたが元気でいるだろうか?
早紀の露出願望がどの程度なのかはわからないが、志乃の時の失敗を忘れず、じっくり時間をかけて馴らしてやれば、かなりの事まで受け入れてくれるのではないか?
だから早紀が、どこまで僕を受け入れ、ついてこれるのか、これからじっくりテストしていってやろう。

 僕は、店の真ん中あたりの窓際の席に座る。
僕の右側は大通りに面しており、大勢の人が行き交っている。5分前に早紀が現れた。手を振ると、まっすぐにこちらに向かってきた。
水色のカットソーに、クリーム色の膝丈プリーツスカート、素足にミュールを履いている。好都合だ。ウエイトレスが注文をとりに来た。
僕はすでにホットコーヒーを注文していた。早紀は、アイスオーレを注文する。 
早紀は、「あの・・・」「その・・・」と何度か口を開きかけたが、結局飲み物がくるまで、肝心の話はしなかった。
アイスオーレを一口飲んで落ち着いたのか、早紀はようやく話し始めた。
「き、昨日はどうもありがとうございました・・・」
「どういたしまして、それで話っていうのは?」
「あれから、いろいろ考えたんですけど、その、私のパートナーになってもらえないでしょうか?」
「昨日、会ったばかりで、そんな重大なこと簡単に決めていいの?」
「わかっています。電話したした後もずっと考えていました。でも、自分が抑えられないんです。このまま一人で続けていたら取り返しのつかない事になるのはわかっています。でも昨日、碌郎さんに助けられて、しかも野外露出に理解のある人だったなんて、これはもう運命の出会いとしか思えないんです」
「単に襲う勇気の無かったヘタレかもしれないぞ?それともゲイとか」
「そんなことないです!ヘタレだったら助けてなんかくれません。 それに身分も明かしてくれましたし信頼できると思ったんです」
「・・・」
「・・・それで、どうでしょうか?」
「判っていると思うけど、こうしたことはお互いに絶対的な信頼が必要だ。いわば人生を預けるようなものだからね。それに早紀ちゃんの露出願望が本当はどの程度なのかも判らない。僕は志乃との付き合いで相当なレベルの露出を体験した。たぶん僕は君にそれと同等かそれ以上の事を要求するようになるだろう。志乃の時、やりすぎてしまってそれが別れる原因になったんだ。もうあんな思いはしたくない。だから今から君をテストする。早紀ちゃんがそれに受かれば、より深い仲になろう。もしできなければこれでサヨナラだ」
「どんなテストをするんですか?」
「簡単なことだよ。 シャロン・ストーンの"硝子の塔"という映画は見たことあるかな?あの中で、満員のレストランでディナーの最中にシャロン・ストーンがショーツを脱ぐシーンがあるんだ。いまそれをここでやってもらえるかな?」
「えっ?」 
「それとも最初から履いていないのかな?」
「そんなことないです」
「じゃあやってみせて。素っ裸にコート一枚で外を歩くくらいだから、このぐらい簡単だろう?脱いだらそのショーツを僕に渡してほしい」
彼女は周りを見回して、しばらく戸惑っていた。僕はわざと一番目立ち易い席に座っていたのだ。窓際で外から見え、また反対側は喫茶店内のメインの通路になっているため、ウエイトレスやトイレに立つ客が頻繁に通る。僕の後ろにも席があるため、そこに座っている客からは彼女の姿がはっきり見えているはずだ。
この席で何かおかしな行動をとれば店中から注目を浴びる可能性が十分ある。
つまりここでショーツを脱ぐということは、一見簡単そうに見えてかなりリスクのある行為なのだ。
彼女はしばらく戸惑っていたが、行動をおこした。周りを見回して自分が注目されていないことを確認すると少しだけ腰を浮かした。
自分のお尻の下に敷いていたスカートをすばやく捲り上げて座りなおす。
今彼女は椅子にショーツと素肌のみで座っている。
再びあたりを見回すとまた腰を浮かせてすばやくスカートの中に両手を差し入れた。
ショーツを一気に太腿の中ほどまで引きおろしたようだ。
その状態で彼女が固まった。僕の後ろの席の男性客が立ち上がったらしい。
僕の脇をすり抜けてトイレに向かっていった。
特に彼女を見つめるようなことは無かったので、おそらく何も気づいてないのだろう。
彼女はその男性客が完全にトイレに入るのを確認してから再び動きだした。
上半身を出来る打動かさずに、片手ずつスカートの中に差し入れてショーツをずらしているらしい。
ショーツが膝を越えたようで今度は脚をもぞもぞさせている。
結局、彼女が行動を開始してから5分ほどして、右手を足元に伸ばした。
彼女は拾い上げたショーツをすばやく右手に丸めると、グーに握ったまま僕のほうに差し出した。
僕が手のひらをだすとその上に握りこぶしをのせてゆっくりと開いてゆく。
僕は中身が外から見えないようにゆっくりと握りしめる。
まだ暖かいショーツを握ったままこぶしをテーブルの下に持ってゆき、そっと開く。
レモンイエローのレースが見えた。それをズボンのポケットにしまうと彼女に言った。
「合格だよ。今から僕は君のパートナーだ」
「よろしくお願いします」
「さて、これからどうする?デートしようか?どこか行きたいところある?」
「ごめんなさい。何も考えていませんでいした」
「じゃあ、僕が主導するけどいいかな?早紀に拒否権はないよ」
「お願いします」
僕はしばらく考えてから言った。
「よし、ショッピングにしよう。早紀の服を買いに行くんだ。買ってあげるよ」
「いいんですか?」
「その代わり服は僕が選ぶよ」
「・・・ええ」
僕が早紀を連れて行ったのは、ここ数年で日本で出店数を伸ばしている海外資本の衣類量販店だった。日本の量販店と違いセクシーなデザインのものが多いのが特徴だ。
僕はジャージ素材の白のインナー付チューブトップと黒のラップミニスカートを選ぶと早紀に渡して試着室で着替えてくるように言った。
「試着室で全裸になって、今まで着ていたものはブラも含めて全部僕に渡しなさい。それからこの服を着るんだ。着たままで精算してもらうからね」
彼女が全裸になったころを見計らって声をかける。
「全部脱いだかい?」
「はい」
「じゃあ脱いだ服を渡して」
彼女は試着室のカーテンを少しだけ開けて服とブラを差し出した。
それを受取った僕は、カーテンをもっと大きく開いて早紀が確かに全裸になっていることを確かめた。
カーテンを大開されて驚いた早紀は慌てて両手で胸と股間を隠す。
「店員を呼んでくるから、服を着ておいて」
そういうと、僕は早紀の服を持ったまま、店員を探しにいった。
近くにいた店員をつかまえて試着室の前に戻る。
「着替え終わったかい?」
「はい」
試着室のカーテンが開く。
「どうですか?」
「よく似合っているよ」
「ちょっとスカート短くないですか?」
僕が選んだラップスカートは左右の合わせで正面に逆V字の切れ込みを作っている。
つまり後ろは膝上10cm程度だが、股間の部分、V字の頂点は膝上20cm以上になっており、ノーパンの早紀にとってはかなり恥ずかしいだろう。
「いや、ちょうどいいと思うよ。彼女このまま着て行きたいそうなんで、精算してもらえますか?」
「お客様、申し訳ありませんがこの場では精算できませんので、レジまでお越し願えますか?」
「わかりました。早紀、レジにいこうか?それと今まで着ていた服を入れる袋をもらえますか?」
早紀は商品を着たままでレジに並び、店員にタグを切ってもらい精算する。
スカートのタグは裾についており、対応した若い男性店員が早紀の前に跪いてタグを切ったのだが、顔を赤らめていたので早紀がノーパンであることに気がついたのかもしれなかった。

 店を出たとたん早紀が腕を絡めてきた。
早紀を見ると瞳は潤み頬が上気している。
「どうした?」
「あの店員さん、私がノーパンなのに気がついたと思います」
「なぜそう思った?」
「私、レジに並んでいる間に想像していたんです。裾のタグを切る時、店員さんにスカートを捲られてアソコを見られるのを・・・。そうしたら濡れてきちゃって・・・」
「つまり太腿まで垂れてきたのを見られた、ということかな?」
「はい。そんなのを見たら男の人って想像しちゃうんでしょう?この女ノーパンなんじゃないかって」
「そりゃ思うだろうな」
「ああ・・・やっぱり」
「あの店員結構イケメンだったな。今晩は早紀をオカズにするのかな?」
「イヤッ!そんなこと言わないでください」
早紀はそういうと僕の腕に顔を伏せてしまった。

しばらく無言で繁華街を歩く。
「そろそろ時間だな・・・」
僕は腕時計を確認して、早紀をとある店に連れて行った。
裏路地に入り、スナックや立ち飲み屋の並ぶ通りを進む。
早紀を連れて行ったのは雑居ビルの地下にあるアダルトショップだった。
開店したばかりの店内にまだ他の客はいない。
「店長、久しぶり!」
「ああ、碌さん久しぶり。可愛い子連れちゃってどうしたの?」
「ここに女の子連れてくる目的なんて1つしかないだろう?」
「それもそうか。今日は何が入用?」
「そうだな、とりあえずリモコンバイブと首輪にしておこうか南京錠も頼む」
「リードは?」
「まだ必要ない。そのうち買いにくるよ」
早紀を見ると真っ青になっていた。
「ま、まさか私にリモコンバイブを入れて歩けっていうんですか?」
「他に何に使うのかな?首輪も嵌めてあげよう。今日は服を着たままでいいよ」
店長が注文された品物を持ってきた。
「これが良いと思うよ。新製品で音が静かタイプ。電池はサービスで入れておいた。全開モードで2時間、ミニマムモードなら6時間は持つよ」
「首輪は?」
「申し訳ないけれど鍵の付くタイプは今こんな物しかない。ペットショップで大型犬用の首輪を買ったほうがいいよ。それともオーダーメイドするか?」
「早紀はどっちがいい?」
「そ、そんな・・・」
「よしっ、ペットショップに行こう。早紀に選ばせてあげるよ」
「・・・」
「じゃあ¥6,000。消費税はサービスしておくよ」
「ほい、これで」
「まいどありー」
「早紀、早速入れるんだ!」
「こ、ここで?」
「穿いてないんだ。簡単だろう?それとも外でやりたいか?」
「・・・分かりました」
早紀はバイブレーターを持つとちょっとがに股になった。
スカートの中に手をさしいれ、バイブレーターを挿入する。
「うっ、くうっ」
「早紀、歩いているうちに落とさないようにしっかり締めつけているんだぞ」
そう言うと僕は早紀の手をひいてショップを出た。
「さあ、首輪を買いに行こう」

僕は早紀を大型ショッピングセンターペットショップ連れて行った。
その道中、リモコンバイブで楽しんだことは言うまでもない。
人とすれ違うたびに強弱をつけて早紀を追い上げては達するぎりぎりでスイッチを切るという責めを繰り返したせいで、早紀は息絶え絶えの状態になっていた。
僕に腕にすがりつく様につかまり、ふらふらと歩いている。
もはや自分がどこにいるのかさえ分かっていないようだった。
すれ違う人たちも訝しげに僕達を見ている。
中には何かエッチなプレイをしているのではないか、と気づいた人もいただろう。
志乃とのプレイでこうした状況に慣れていた僕は、ちゃんとサングラスを着用し顔を隠していた。

店内に入り、とりあえず通路のベンチソファーに腰掛けさせて休ませた。
「ハア、ハア、ハア、ひ、ひどいわ・・・」
「だいぶ楽しんでいたようだけど?」
「・・・こんな生殺し状態のままイカせてくれないなんて・・・」
「おいおい、そっちかよ。大勢の人のいる前でイキたかったのか?」
「そ、それは・・・」
「ほら、これを飲んで・・・」
僕はショッピングセンターの入り口の自動販売機で買っておいたペットボトルのミネラルウォーターを差し出した。
早紀は受け取って、キャップを開けると飲み始めた。
喉が渇いていたのだろう、あっという間に半分がなくなった。
そこで早紀は一息ついてソファーにもたれかかり目を閉じた。
5分ほどそうしていただろうか、早紀の手を握ると目を開けた。
「落ち着いたか?」
無言でうなずく。
「トイレに行ってきれいにして来い。気持ち悪いだろう?ただし抜くなよ」
「だ、誰のせいだと思っているの!」
早紀は勢いよく立ち上がるとトイレに向かった。

さっぱりした顔で戻ってきた早紀とペットショップにゆく。
ペットショップはショッピングセンターの屋上駐車場の一角にあり、ペットを連れて入店できるようになっている。
家族連れが多く、何組かはペットを連れていた。
さすがに大きなペットショップだけあってペットの種類、首輪の品ぞろえも充実していた。
首輪コーナーにゆくと早紀は目を輝かせて首輪を見定めはじめた。
早紀が選んだのはデザイン性の高い細めの赤い首輪だった。
だが精算するときに早紀がひるんだ。
「ほ、本当に試着しなきゃいけないの?」
「そうだ、試着して店員に、私に似合いますかって聞くんだ。そしてこのまま着けて帰りますって言うんだぞ」
「そんな、周りに家族連れもいっぱいいるのに・・・変態だって思われちゃうわ」
「そんなにイヤか?」
「イヤに決まっているじゃない!」
「そうか、ならここでお別れだ」
「えっ、何で?」
「僕が早紀を露出奴隷にしたいと頼んだんじゃない。早紀が僕にご主人様になってくれと頼んだんじゃなかったのか?僕のいう事を聞いてもらえないのなら、僕は早紀のご主人様ではいられない。契約を交わしたわけじゃないからいつ解消してもいいはずだ」
僕はそう言い放つとペットショップから出てゆこうとした。
その僕の腕を早紀が反射的につかんだ。
「ま、待って・・・、やるわ、やるから行かないで・・・」
こんな真剣で必死な早紀の顔を見たのは初めてだった。
まるで今にも捨てられそうな子犬の表情だった。
早紀は息を整えるとレジに向かった。
レジの女性店員が商品をチェックして早紀に言った。
「こちらは、首周り35cm以上の大型犬用になりますがよろしいでしょうか?
この商品デザインが気に入られて購入されたお客様が、サイズが大きすぎたといってよく返品に来られるんで・・・」
「あ、あの試着できますか?」
「ええ、かまいませんよ。ワンちゃんはどちらでしょうか?車ですか?」
「・・・私です・・・」
「えっ?」
「この首輪、私がするんです」
「は、はあ?」
店員は何を言われたのか理解できなかったらしい。
あっけにとられた表情で早紀を見つめている。
そんな店員を無視して、早紀は首輪を取り上げると金具をはずし首に巻いた。
「似合いますか?」
早紀は頬を上気させながら店員に尋ねた。
「あ、あのお客様?」
そこで初めて僕が口をはさんだ。
「気にしないでください。彼女ペット願望があるんですよ。ちょっとだけ付き合ってもらってもいいですか?」
ようやく女性店員にも事情が飲み込めたらしい。
驚きの表情が消え、軽蔑と蔑みのまなざしに変わった。
「そうですね、よくお似合いですよ、お客様」
わざと大きな声をあげて周りの注意を引いた。
その声に周りの視線がいっせいに早紀に集まる。
「なにあれ、首輪しているの?」
「変態じゃない?」
「AVの撮影か?」
「そういや、エッチっぽい服装しているな・・・」
ひそひそ話が聞こえてくる。
「あ、あの・・・」
「お客様、このままして帰られますか?それならタグだけお切りしますが?」
「・・・は、はい」
「それとリードもご一緒にいかがですか?少々おまちください」
店員は早紀を待たせて首輪コーナーにリードを取りにいった。
もちろんその間早紀は晒し者状態である。
「こちらのリードはその首輪とセットになっているんです。とっても映えますよ」
「・・・は、はいお願いします」
「首輪とリード、両方で¥10,000と消費税になります。ポイントカードはお持ちですか?それと駐車券は?」
「ポイントカードはありません。現金で支払います」
僕はそういうと財布をとり出した。
精算を済ませると、店員が僕に尋ねた。
「リードはどういたしましょうか?」
「すぐに使いたいので、このまま首輪に付けてください」
「分かりました」
店員がカウンターから出てきてリードを早紀の首輪に取り付ける。
早紀はされるがままになっている。
「どうぞ、よくお似合いですよ。素敵なペットですね」
リードの持ち手を僕に渡しながら店員がいった。
「こんなことにつき合わせてしまって申し訳ないね」
すでに周りには人垣ができてしまっている。しかし店員は妖しく微笑んだ。
「いえいえ、ペット用の服も取り扱っておりますので、またのご来店をお待ちしております」
どうやらこうした行為に理解を示してくれたようだ。
「ありがとう」
お礼をいい出口に向かおうとして振り向くと、店内が急に静まり人垣が割れた。
その隙間を抜けて、僕は早紀を連れて店外へ出た。
そのまま駅に向かって歩いてゆく。
早紀を見た人たちが、ぎょっとして、あるいはニヤニヤ、ひそひそしながら通りすぎてゆく。
早紀は顔を赤らめながらもおとなしくリードに曳かれてついてくる。
振り返ると、まさしくペットが飼い主を見るような潤んだ瞳で見つめ返してくる。
「これからどうしようか?早紀はどうしたい?」
「ご主人様のペットにしてください。ちゃんと契約してください」
僕は今日これからの予定を聞いたつもりだったが早紀はもっと長期の意味にとったようだった。
「たとえ契約書を交わしても、法的根拠は何もないよ」
「それでもいいです。私の心の問題ですから・・・」
「そうか・・・」
僕はバイブレーターのスイッチを入れ、いきなり全開にした。
「うっ、くうっ」
早紀はビクンとカラダ震わせて一瞬顔が硬直したが、すぐに笑顔になった。
小刻みにカラダが震えているのは必死に快感を押し殺しているのだろう。
「これよりもずっと恥ずかしい事を早紀にさせるかもしれないけれどもいいのかな?」
「は、はい、かまいません」
僕は早紀を抱きしめると往来の真ん中にも係らずキスをした。
通行人にはバカップルに見えているだろう。
一分近くのディープキスのあと、唇をはなすと早紀はその場にへたり込んでしまった。
「ハア、ハア、ハア・・・」
早紀が落ち着くのを待って手を差し出しで立たせてやると耳元で囁いた。
「これからもよろしくね、ペットの早紀ちゃん」

                             終わり



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