『珍貸物件紹介社』
作:TEKE・TEKE
世の中には変わった趣味趣向を持つ方がいらっしゃいます。 特に人の生活に必要不可欠な"衣、食、住"に関してはこだわりをもつ方は多いのです。 そのなかでもとりわけ"住"に関しましては、高価であり長く使用しますのでとことんこだわられる方が多いのです。 ですが万が一建てて失敗したら、その価格ゆえ大変なことになります。 そこで、自分の趣味に合った特別なお部屋を賃貸で探す方が当店に大勢いらっしゃるのです。 そんなご要望にお応えするために、わが珍貸物件紹介社は設立されました。 当社はお客様のお好みに合った特別などのようなお部屋でもリーズナブルな賃料でご用意することができます。 どうやって用意するのかは企業秘密です。 ただし一度契約していただきますと、契約期間中は必ず住んでいただかなければなりません。 契約期間中は強制力が働いて途中で出てゆくことはできないのです。 おっと、口が滑りました。 おや、お客様のようです。 このお客様はどのようなお部屋をご希望なのでしょうか?
************************ @壁紙がギャラリー付きの屋外背景な部屋。 周囲を取り囲んだ群集(写真)の前で着替えたり 覗きこまれながらトイレで用を足すのが恥ずかしくて堪りません。 エンドレスで流れる雑踏のBGMも臨場感を盛り上げてくれます。 ************************
有田かすみは、新米の映像クリエーターだ。 かすみが映像クリエーターを目指したのにはある理由があった。 それは彼女の性癖だった。 彼女は野外露出に憧れていたのである。 ネットで初めてその動画を見つけたとき、興奮してその動画の中の女性を自分に置き換えて何度もオナニーした。 それは大勢の人が行き交う繁華街の交差点で、全裸に縄掛けされた女性がじっと立っている動画だった。 周りからよく見えるように、ときおり女性は体の向きをかえている。 驚愕の表情を浮かべ一瞬見たあとそそくさと立ち去る人、完全に無視して通り過ぎる人、にやにやしながら眺める人、あからさまに嫌悪の表情を浮かべる人。 大勢の人に恥ずかしい姿を見られながらその女性は恍惚の笑みを浮かべていた。 後でわかったことだが、それはかなり古いアダルトSMビデオの1シーンだった。 DVD化されておらずビデオテープもほとんど残っていない代物で、まだ公然わいせつ罪の適応がゆるい時代に撮影されたものだった。 許可をとらないゲリラ撮影を強行したことで、ビデオが商品化されたとき話題になったらしい。 現在同じことをやったら即警察が来て連行され、DVD化もできないだろう。 もし今それを実現させるとしたらバーチャルしかない。 実際の繁華街の交差点で360度撮影をおこない、そのデータをもとに通行人を一人ひとり加工してゆく。 目線や表情を変え、こちらを指さしするポーズをとらせて、群衆が自分に注目し、驚いたり、あざ笑ったり、蔑んでいるように変更してゆく。 撮影していれば、必ず注目を浴びるので加工はわりと楽だった。 これに雑踏の音を加えて、自分がまるで現実の交差点にいるよう錯覚する映像に仕上げていった。 作業自体はパソコンでできても、実際投影するには会社の特殊スタジオにある画像投影装置をつかうしかない。 しかし高価な機器であり、使用には許可が必要だし、事前に仕事内容のチェックも受けなければならない。 自分の私的欲望を満たすための申請などできなかった。
途方に暮れていたとき、「お客様のお好みに合った特別などのようなお部屋でもリーズナブルな賃料でご用意することができる」という宣伝文句につられ、ダメ元で依頼してみたのだった。 すると、かすみのアパートから電車で2駅のところのマンションに1室にクリエーターが使っていた部屋があるという。 見に行ってみると理想通りだった。 しかも賃料は、かすみのアパートの1か月分の家賃とほぼ同じだった。 なぜこんな優良物件が格安で、と尋ねると、この部屋の持ち主が現在海外で仕事をしており、帰国まで2か月間、少しでも家賃収入が欲しいとのことで、借り手も同業者に限定されていたためだった。 また、持ち主が早く帰国すれば、すぐ出てゆかなければならないことも条件だった。 それでもこんな良い物件を逃す手はない、とかすみはすぐに申し込んだ。
かすみが借りた部屋は、2LDKだが、そのリビングが普通とは違っていた。 リビングが壁、天井、床すべてが真っ白のスクリーンのようになっていた。 そしてその中心の天井には、小型プラネタリウムのような無数の穴の開いた黒い球体がぶら下がっている。 機器はかすみの会社で使っているものの小型版で操作はまったく同じだった。 さっそく自作したデータを入力し投影してみる。 一瞬で部屋が繁華街の交差点に変わった。 プログラムは20分の映写時間になっており、最初の3分は皆普通に行きかうだけになっている。 かすみは部屋の中央に立つと、呼吸を整え、目を閉じた。 自分がこれから何をするのかを想像するだけでアソコが濡れてくる。 心の中で時間をはかり、おもむろに脱ぎだす。 カーディガンを脱ぎ、ブラウスのボタンを一つずつ外す。 ブラウスを脱ぎ、上半身はキャミソールとブラだけになる。 すでに自分が注目されているシーンになっているはずだが、怖くて目が開けられない。 スカートのホックに手をかける。 何度もためらったのち、ようやくホックを外し、スカートを足元に落とす。 自分の部屋でごく当たり前に服を脱ぐことが、ちょっと景色がかわるだけで、こんなにも怖く、そして興奮する。 おそるおそる目を開けると周りの皆がかすみに注目していた。 「い、いや、見ないで・・・」 思わず映像に喋りかけてしまう。 (なんだ、あの女こんなところで服を脱いでいるぜ) (きっと露出狂なのよ。変態ね) (もっと脱げよ。見せたいんだろう?) (ぬーげ!ぬーげ!) 会話など入れたはずがないのに、かすみを蔑み、嘲笑い、ストリップを強制する声が聞こえる。 震える指がキャミソールの肩ひもをずらし、足元に落とす。 (ほら、オッパイを見せろ!) (見せろ!見せろ!) 背中に手をまわしてブラのホックをはずす。 肩ひもをずらし、手で交互に胸をかくしながら、ブラを腕から抜き取った。 (最後の一枚だ。脱げ!) 胸を隠していた手がショーツの両脇にかかる。 見られていることは感じるが、もう周りの状況は理解できない。 ショーツを下げたとき、アソコとショーツの間で粘液の糸をひいたことを自覚してかすみは真っ赤になった。 ひざ下まで下げたショーツを脚の動きだけで足元に滑りおとす。 左腕で胸を、右手でアソコを隠してかすみは部屋の中央にたたずむ。 ぐるりと見渡すと皆がかすみを注目している。 かすみはあの動画を思い出していた。 かるく脚を開き、手をうしろに組んですこし体を回転させる。 しばらくして、再び回転する。 どこを向いても皆がかすみに注目している。 ああ、これだ。これがしたかったんだ。 かすみはいつの間にか立ったままオナニーを始めていた。 今まで感じたことが無いほどの快感が湧き上がってくる。 「ああ、いいっ!気持ちいい!皆見て!もっと見て!」 自分が声を出していることに気が付かないまま、かすみはオナニーに没頭していった。
************************ A壁がマジックミラーの部屋。 外を歩く通行人を眺めながら室内で擬似露出行為が楽しめる物件。 夜は逆に明るい室内が外から丸見えになるため 擬似露出に満足できなくなっても安心。 ************************
バーチャルで散々疑似露出を堪能したかすみだったが、持ち主が急遽帰国したため引き払わなければならなくなった。 残念だったが、バーチャルの疑似露出では少々ものたりなくなっていたかすみは、新しい部屋を探してくれるように珍貸物件紹介社に依頼したのだった。 紹介社が見つけてきたのが、都内有名歓楽街の角地に立つ雑居ビル1Fにある閉店したコンビニだった。 ここは一等地でありながら入居したスナックやレストラン、コンビニになぜか客が入らず、ことごとく撤退していた。 通行人に聞いてみると、なぜか皆そんなところに店があるなんて思わなかった、というのである。 心理的に人の関心が向かない人間や場所が存在することは知られているが、ここもその1つのようだった。 そこの道路に面した部分を全面マジックミラーに交換した物件を珍貸物件紹介社かすみに提示したのである。 もとコンビニなのでお風呂以外の生活に必要な施設はそろっている。 そこに道路に面した一部分にガラス張のシャワールームを追加してあり、トイレもシャワーの隣に移設してあった。 「これなら、ご満足いただけるでしょうか?」 「・・・そうね」 「昼間は外が明るいので、中からは素通しですが、外からは見えません。でも夜になると外から中は見えますが、中から外は見えなくなってしまいます」 「えっ?それってなんだかおかしくない?昼間、私が裸で部屋にいて外は見えるけど、外からは私が裸でいるかどうかわからないのよね。逆に夜になったら、外から私の裸は見えても、私には外から見られているかわからないのよね。それって意味がないんじゃない?」 「・・・」
************************ B壁がガラス張りの部屋 室内どころかトイレや風呂まで外から丸見えで 安全な室内に居ながら過激な公然露出が楽しめます。 動物園で見世物にされているような充実した露出ライフを貴女に。 ************************
「どうなの?」 「じ、じつはこのマジックミラーにはもう一つ仕掛けがありまして・・・」 「このスイッチを押しますと、マジックミラーがすべて透過するようになりまして、どちらからも見えることになります。私有地である家の中でどんな格好をしていようが咎められることはありません。むしろ覗き見るほうが罪に問われます」 「たしかに理屈はそうだけど、前の道路は公道よね。ここに衝立を建てられても文句は言えないんじゃないの?これならバーチャルのほうがまだましだわ」 「で、ではこういうのはどうでしょうか?」
************************ C入居者が貴女以外、全員男のシェアハウス。 入居条件に露出狂であることを明記されているため、 遠慮などあるはずもなく、リビングの檻に全裸で入れられた貴女は 彼らのペットとして全裸で犬のように飼育されるのです。 途中で嫌になっても出て行くことは決して許して貰えないので 契約書にサインする前に再度よく考えることをオススメします。 ************************
「あなたなにか勘違いしていない?私は野外露出がしたいのであって、輪姦願望があるわけじゃないのよ。彼らが私を毎日外で散歩させてくれるだけなら考えてもいいけど、そうじゃないでしょう?それに私はペットになるつもりもないわ。看板に偽りなしじゃなかったのかしら?」 「な、ならば、とっておきを・・・」
************************ D露出狂の霊がいる部屋。 波長の合ってしまった貴女は、取り憑かれた霊に操られて意識はそのままなのに 自分ではできないような過激な露出行為を実行させられてしまいます。 全ての衣服をゴミに出され、全裸のまま学校や職場へ行くことになっても止める事は できません。 心の中で羞恥に泣き叫んでも体は勝手に動き破廉恥極まりない露出行為を重ね続けて 露出狂としての人生を歩き続けるしかないのです。 ************************
「本当にそんな部屋あるの?」 「ええ、でも霊との波長が合うかどうかまず確認しなければなりませんので、この首輪をつけてみてください」 かすみは渡された首輪をうさんくさそうに見た。 鈍い銀色の金属製で、思ったより軽いからチタンでできているのだろう。 かすみは、チタンは人体に対して不活性なので長時間触れていてもかぶれたりすることはない、と聞いたことがあった。 「これでわかるの?」 「ええ」 かすみは言われるままに首輪を装着する。 「それで?」 そのときバチンと音がしてかすみの目の前が真っ暗になった。
珍貸物件紹介社の営業マンは気を失ったかすみを抱え上げてつぶやいた。 「ふむ、動作は良好ですね。その首輪にはスタンガンが仕込んであるんですよ。もともとは躾の悪い犬を矯正するためのものですが、人間用に作ったものです。むりに外そうとしたり、リモコンの電波の届かないところに一定時間以上いると作動するようになっているんですよ。もちろん今みたいに手動操作もできます。ちょうどあなたのような野外露出趣味をもつ女性をペットとして飼える家をご要望のお客様がいましてね。その方とあなたが一緒に暮らしていただければ、両方の要求も満たせるので利用させいただきます。ただしその家は九州の山奥の廃村になりますので、通勤はできませんね。あなたは今後その廃村でご主人様が飽きるまで、全裸に首輪だけの姿で飼われるのですよ。まあ、相当のお金持ちですから御主人様の言うこと聞いていれば飢えることはないでしょう。その廃村を整備してあなたをペット扱いしてくれる村人役を何人も雇ったそうですから、あなたも露出ペットライフを思う存分満喫できるでしょう。ペットとしての躾やいろいろな芸をしこむため調教師も手配しているそうですから、至れり尽くせりですね」 迎えに来た車にかすみを乗せると、営業マンは走り去る車に向かって深々と頭を下げた。 「珍貸物件紹介社をご利用いただきましてありがとうございました。機会がありましたらまたのご利用をお待ちしております」
終わり
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