『最下層社員せいら』

                                  作;れぃ

上 せいらの採用面接

「私、小谷 せいらは生まれてくる存在を誤ってしまいました。
思えば、小さな頃から違和感を覚えておりました。
両親から可愛がっていただいたり、友達と遊ばせていただいたりしながら、なぜ価値もない私にそんなことをしていただけるのだろうと。
私は本来人間様などに生まれてはいけない存在なのです。
道端の石ころ様や、犬のフンだって存在意義はありますが、私にはそんな贅沢なものは何もございません。
ただ、いるだけで役にもたたない、存在させていただくだけ無駄な最下層の下の存在なのです」

会社の面接試験で全裸で頭の後ろで手を組み、がに股に足を開いたまま語った私の自己PRがこれです。
ことの始まりはSNSに書いたマゾヒストとしての妄想でした。
フィクションの形ではございましたが、本気で自分を価値がなく最下層の存在として扱って欲しいという思いを書き連ねた文章。
就活をしていた時に、その駄文にご連絡をくださったのが、川原咲商会という今の会社でした。
面接は他の就活生と一緒でしたが、会場に入ると、
「面接を受けるかたはお掛けくださってけっこうです。あと、そこのゴミは着衣をすべて脱ぎ、土下座!」
と、ついでのように指示されました。
すぐさまリクルートスーツを脱ぎ去り土下座いたしました。
一人だけ全裸で土下座しながら面接を受けるという異常事態にも関わらず、何事もないように面接試験が始まります。
しかし、私の番だけは冒頭の自己PRにもわかるように、下品で、みじめな回答をいたしました。
そして、そのたびに恥ずかしいポーズをとらされたのです。
例を挙げると、
犬のチンチンのポーズで、「御社のアットホームな社風を知り家庭に住むゴキブリ様以下の私でも社内の隅に置いていただければと思い、応募させていただきました」とか、後ろ向きのでんぐり返しの途中みたいな(いわゆる、まんぐりがえし?)体勢で性器をぱっくり開き、「ご覧の通り、便器様にも劣る汚い身体を活かし皆様の侮蔑と嫌悪感を一身に集める存在になります」おしりを割り開き、ふりふりとふりながら、「私の特技は誰にでも股を開けるゆるさです。アピールポイントは、貞操観念など捨ててしまえる動物様以下のバカな頭です」などです。
このような調子で、全ての面接が終わりました。
そして最後に面接官の方が、
「ゴミせいらの頭ではわからなかっただろうが、この面接に参加している就活生は皆採用が確定している。面接を受けていたのはゴミだけだ」
と、おっしゃいました。
私は、本当にゴミ程度の頭なので気がつきもしなかったのですが確かに、私の汚物にも劣る姿を見られても気分を害さずにいて下さったということは真実なのだと、納得いたしました。
そして、理解するとすぐに、
「私などのために無駄な時間を使わせて、汚いものをお見せしてしまい、誠に申し訳ございませんでした」
と、皆様の前で土下座させていただいたのです。
皆様は、
「本当に無駄だったなー」「仕事のためとはいえこんな汚いゴミを見ないといけないと思わなかった」などと、もっともなことをおっしゃいました。
本当に申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
さらに、面接官の方が
「何の価値もないゴミせいらには特になにかを期待して面接に呼んだわけではない。こちらの、ベンジー社長が今度当社の社長になったのだが、社長が残した人材はサディストばかりで、自由になるマゾが一人欲しいそうでね。だが・・・」
と、ベンジー様の方を見ながらおっしゃいました。
ベンジー様は、私の面接を誰より穢らわしいものを見るようにご覧いただいていたかたでした。
面接中その瞳に一目で撃ち抜かれてしまったのかこの方に私の全てを所有していただき、ゴミくずのように打ち捨てられたいと思ってしまっていたので、嬉しさで胸が高鳴りました。しかし、次の言葉ですぐに青ざめました。
「正直誰でもいいんだよね。まさかこれほどゴミで汚ならしいものとは思わなかったし、他の志願者を募ろうかな」
それを聞いて、焦ってしまった私は、
「何でもいたしますから、この会社で使用してください!」
と、叫んでしまいました。
と、それまで一言も喋らなかったベンジー様が私に話しかけてくださいました。
「大山せいら、君は自分で語った通り、人間であることを捨て最下層のモノに堕ちてもいいというんだね?」
すがるように私は、ベンジー様を見つめて言いました。
「はい。全てを会社に委ねると誓います!ですから・・・」
ベンジー様は、静かに、
「そうかい、じゃあ、おいてあげてもいいけど、まさかモノがお給料を貰おうなんて考えていないよね?」
と、おっしゃいました。そして、私は、
「はい、私は会社に所有されるどのような備品より最下層です。一円も頂くつもりはございません。どうか私の全てを所有してくださいませ」
そう答え、ベンジー様もそれに納得したように頷きました。
この日から私の、最下層社員としての生活が始まったのでした・・・


下 最下層社員として

私の最下層社員となるための手続きは先ずは私の存在を、なかったことにすることからだったそうです。
が、どのような手を使ったのかは知らされておりません。
知らされているのは、日本に私の存在がなかったことにされたことと、両親や、親戚が探そうという意思を持つことがないこと、その手続きのために私は、学生の時にバイトなどで貯めたお金を全て失い、さらにまっとうではない金融会社へ負債を負ったことくらいです。
私にとって、人間のふりをしていた過去より、本当の姿を得た現在の方が大切なのです・・・
そんな私の、現在の生活を少し書かせてくださいませ。
私は、人間を捨て新たに名前をいただきました。
ゴミ以下の記憶力に配慮し、読み方は今までとおなじにしていただきましたが、現在私は、
「性淫乱(せいら)」
と呼ばれております。
私は、敷地内の社員寮の「方から」毎日誰よりも早く出勤いたします。
朝は会社の外から見えてしまうかも知れないので生意気にも制服を着ておりますが、会社に入ると警備員の前で全てを脱ぎ去ります。
なぜかと言いますと、警備員様に、社員証をお見せするのですが、そこには裸になりがに股のいやらしいポーズで両手でピースして果てている私の姿が写っているからです。
そのため、毎朝、警備員様に私であると納得していただくためにも、そのポーズで警備員様に私の性器をいじっていただき、「最下層社員 性淫乱、おまんこいじられながら出社いたしました!」と叫びながらいき果てる必要があるのです。
さて、社内に入ると、毎日私は入り口のそばで土下座をして皆様の出勤をお待ちいたします。
誰か来られるたびにご挨拶をいたしますが、皆様は特に何の価値もない私に見向きもされずデスクに向かわれます。
たまに、靴の汚れを落とすために使っていただいたりはしますが・・・
ベンジー様が出勤されますと、仕事の始まりです。
営業に男性社員の皆様が出られると、ほとんどが女性社員だけになります。
同性の方には存在しても邪魔にならないように道具として使っていただきます。
メモを身体に書いていただいたり、性器をゴミ箱にしていただいたり、足おきや、ストレス発散に叩かれたりです。
食事時は私のような汚物を見せるわけにはいかないのでお手洗いに正座しています。ひときわ汚れた便器様のよこが定位置で、その便器様には「最下層社員性淫乱専用弁当箱」と書いてあります。
食事のあと、皆様が便器様に捨てられたお弁当の残りが私の昼食です。
捨てたうえに大概は大小どちらかの用を足していかれますので、糞尿混じりの食事になりますがそのまま流すとトイレ様がつまりますのですべていただきます。
午後もまたお仕事の道具として使用いただいていますと、男性社員が営業から戻られます。
今度は男性社員の足ふきマットとして使われます。
営業先で頭を下げたぶん、私を蹴飛ばしていかれるかたもいらっしゃいます。
基本的には、毎日のお仕事はこんな風に過ぎていきます。
仕事が終わると社員寮の「方に」帰ります。
「方」と、さっきから申し上げていますが、もちろん部屋などございません。
社員寮の共用トイレの裏側に私の檻が設置されており、どなたからも生活が丸見えになっているのです。
さらにトイレから呼ばれたら便器様のかわりや、性処理に使うためにトイレに顔や性器をつきださないといけません。
小屋には皆様の糞尿が流れこみますし、ゴミの一時保管場所にもなっていますので私にふさわしい匂いがいたします。
会社にはさすがに朝必ずシャワーを浴び体を清めてから、シャワー室のロッカーにあるスーツを着用してから出勤するのですが最近はその行為すら自分を偽っているように感じてきました。

休みの日には負債を返すためにアダルトビデオに出演いたします。
しかし、出演本数は会社から制限され、負債を返しきることはできず、また利子で同じくらいの金額にもどる、減りも、増えもしない状態に調整されています。
会社から飽きられたら人身売買だか、臓器売買だかの、裏のルートで捨てられるようになっているということでした。
そんな私の生活ですが、月に一度はお給料日があります。
とはいえ、先に書いたように一円も頂いていないので、私には意味合いが異なります。
いろんな方にかけた迷惑料が私の0円のお給料からマイナスをされるのです。
その方にマイナス分を次のお給料日までに精算するのです。
しかし、以前は物珍しがってオモチャにされたり、いたぶられるのを精算の代わりとしていたのが最近は、私なんかを使うのが嫌なのか、現金での精算が増えてまいりました。
そのため、会社に申請を行い休日のアダルトビデオ出演を増やしていくようにしているこの頃なのでした。

皆様が私に完全に飽きてしまうと私は捨てられてしまいます。
飽きられないよう、毎日色々新しいことをしなければなりませんが、限界が近づいているかもしれません。
最近、ベンジー社長様は私を眺めることもなくなりSNSのマゾ女性の書き込みを検索しているみたいです。
でも、捨てるときはどんな風に捨てられるのか、期待してしまっている自分がいます。
どんなモノだって捨てられるのを期待するなんてあり得ないと思います。
だからこそ私は、どんなモノよりも下の存在、最下層社員性淫乱(せいら)なのだと実感するのです。

皆様、どうか私を罵ってください。それが私が存在する唯一の理由なのです・・・
(終)



   ※ご意見・ご感想を、お待ち申し上げております。

   ■お名前(匿名可)
   

   ■ご意見・ご感想