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   小説『職員室で着替える明莉先生』

                              作;ベル

1.

私(男性)は地方の小学校の教員をしています。
新年度から職員室で隣の席になった明莉先生は
いつも明るくて可愛らしい女性です。
彼女は生徒からも人気があって誰からも好かれているのですが
少し変わった行動を続けています。
彼女は体育の授業のために着替える時、職員室で体育着に着替えるのです。

「更衣室がちょっと遠いから、行き来するのが面倒くさいんですよぉ」
「・・・(えっ、そんな理由で?)」
とは思いましたが、職員室で着替えていること自体は問題なかったのです。
もちろん職員室で着替えるのは女性教員の中でも明莉先生だけでしたが
本当に問題だったのは、周りに誰がいても彼女自身が気にしないことでした。

タオルやスカートで巧みに隠してはいますが
私のすぐ隣で着替えるので、コチラの方がドキドキされられます。
しかし最近は隠すのも面倒になったのか
堂々と下着を見せて着替えるようになりつつありました。

当然、同僚の女性教員からも注意されたのですが
「そもそも下着姿を見て欲情するような人は、教師になんてなりませんよぉ。
教師は聖職者なんですからぁ」
と意に介さないので、あきれられていました。

しかし夏になり、水泳の授業が行われるようになると
明莉先生はまるで自宅にいるかのように
下着まで脱いで水着に着替えるようになりました。
私を含めた教員たちの前で彼女が一糸纏わぬ姿になった時は
さすがに私も顔を背けました。

「一旦全部脱いでしまった方が着替えるのも楽ですしぃ
下手に隠したりすると、ちょっと卑猥な感じになっちゃうじゃないですかぁ。
私はそっちの方がかえって恥ずかしいですよぉ?」
明莉先生の理屈ではそうかも知れませんが、さすがに度を越えています。
しかし私も心の中では、彼女の隣の席で本当に良かったと思っていました。



2.

ところが夏もようやく終わりに近付いた頃、ついに事件が起きました。
プールの授業の準備を早めに始めた明莉先生が
一糸纏わぬ姿になって水着に着替えていた時、突然、叫び声を上げたのです。
「キャー、虫ぃ。毛虫よぉ!」
よほど虫が苦手だったのか、驚いた明莉先生は
一糸纏わぬ姿のまま職員室から飛び出してしまいました。
周囲の教員たちも驚きの表情を浮かべ
彼女が職員室を出て行く後ろ姿を、呆然としながら見送っていました。

「・・・ま、まるで映画のワンシーンのようだな」
そう思いながらも冷静さを取り戻した私は
この状況がいかに悪いのか思い至りました。
ちょうど授業中だったとはいえ、明莉先生が走り去ったのは
生徒たちがいる教室の方角だったからです。
私と数名の教員は、急いで彼女を追いかけました。

悪い予感ほど良く当たるもので、明莉先生は素っ裸のまま
悲鳴を上げながら教室の前の廊下を駆け抜けました。
授業中だったため、生徒たちと鉢合わせになることはなかったようですが
悲鳴を上げていたせいで、扉の窓越しや空いた扉の隙間から
裸で走る彼女に気付いた生徒もいたようでした。

明莉先生は廊下の端まで走った後、その先の階段へ行ったようでした。
行ったようでした・・・としたのは、追いかけるのが遅れたせいで
彼女がどこに行ったのか分からなかったのです。
やむなく私と数名の教員で手分けして探すことになり
私は屋上へ続く階段を駆け上りました。

屋上まで行くと、明莉先生を見つけることが出来ました。
屋上へ出る扉の前で立ち止まっていたのは、鍵が掛かっていたためでしょう。
人前で着替えられる彼女でも
この時ばかりは身を縮こませるようにして震えていました。

「明莉先生、大丈夫ですか?」
私が声をかけると、彼女はハッと振り返って私に抱き付いて来ました。
「もう大丈夫。ココには虫なんていませんから。それより早く何か着た方が・・・」
私が上着を脱いで明莉先生に羽織らせると
彼女はようやく安心したようで、一緒に職員室へ戻りました。

「なんだよ、いつもお前ばっかり!」
裸の女性に抱き付かれるという役得を得た私は
別の方向を探しに行った同僚の恨みを買いましたが
明莉先生と腕を組んで戻ったのですから、仕方がありません。
実際、珍しく恥じらうような表情を見せた彼女に
私は心を奪われていたのですから。



3.

その日以来、明莉先生は職員室で着替えるのをやめてしまいました。
恥ずかしくなったというよりも、また虫を見つけてパニックにならないためでしたが
本当の理由は別にありました。

実は彼女が職員室で着替え続けたのは、私を誘惑するためだったのです。
なぜか明莉先生は私に一目惚れし
職員室で着替える様子を見せることで、距離を縮めたかったのだとか。
「・・・(えっ、そんな理由で?)」
とは思いましたが、相思相愛だと知った私は明莉先生と付き合い始めました。
もっとも裸のまま職員室を飛び出したせいで
彼女は2週間の謹慎処分を受けてしまいましたが、今はもう復帰しています。

「職員室で着替えたりせず、素直に告白してくれた方が良かったんじゃない?」
謹慎を終えた後の初デートの時
私たちは喫茶店に入り、思い切って明莉先生に聞いてみました。
「後から思えばそうかも知れないけれどぉ
着替えを近くで見ていたからぁ、あなたも私に興味を持ったんでしょう?」
「まあ、そうだけれど。でも私以外の教員にまで、あんな姿を見せなくたって・・・」
「それはぁ、私があんなに誘惑しているのにぃ
あなたが全然口説こうとしないからぁ、エスカレートするしかなかったんだもん」
明莉先生は少し変わっていると思っていましたが
この屁理屈には開いた口が塞がりませんでした。

「私が悪いって言いたいのかい?」
「そうよぉ。それにぃ・・・」
「それに?」
明莉先生は少し口ごもりながら告白しました。

「・・・職員室で着替えるようになってぇ、いろんな人に見られたせいでぇ
私ぃ、露出に目覚めちゃったみたいなのぉ」
「はっ?」
「ウソじゃないわよぉ?・・・ほらねっ」
彼女は着ていたワンピースの裾を掴むと
器用に腰を浮かせて、首の下まで引き上げました。

「ええっ?」
明莉先生は私の見ている前で乳房を露わにしました。
どうやら彼女は、ワンピースの下は何も身に着けずにデートしていたようでした。
さいわい、私たちの席は店の奥の方で
彼女も店の入口に背を向けて座っていたため、誰にも気付かれませんでしたが
私の方があわてふためいてしまいました。

「し、信じます。信じますから、とりあえず服を戻して下さい!」
私の反応を見た明莉先生はクスクスと笑いながら
ワンピースの裾を戻しました。
「・・・初デートなんですよ?普通、そんな恰好で来ますか?」
「でもぉ、こういうの嫌いじゃないですよねぇ?」
私は苦笑いしながらうなずきました。

「うーん。これは、とんだ小悪魔に魅入られてしまったかの知れないな」
これ以上明莉先生が暴走しないうちに店を出ようと思った私は
伝票を持って席を立ちました。
【おわり】

***** ***** ***** ***** *****

(あとがき)
私が小学生の頃、男の先生と女の先生の仲が良いと
「本当は付き合っているんじゃないか?」と思ったものですが
実際はどうだったんでしょうか(笑)?
もし露出っ子の皆さんの中で、同僚の男性を誘惑したことがあるなら
どんなアピールをしてみたか聞いてみたいですね。

今回は恥ずかしい行為を実行する女性側ではなく
それを見守る(=凝視する)しかない男性側の視点で書きました。
たとえ下着姿までだとしても、顔見知りの前で脱ぐのは
初心者の露出っ子にはハードルが高いかも知れません。
でも、忘年会や懇親会があるのなら
お酒に酔ったフリをして、アピールしてみるのも良いと思います。
実は密かにあなたに思いを寄せる男性を見つけられるかも知れませんよ。

露出っ子の皆さんには、主人公のように
「今度のデートは、ワンピースの下は全裸で」を実行してもらいたいですね。
実際、首周りのボタンをちゃんと留めていれば
自分から暴露しない限り、気付かれないんじゃないかと思います。
大丈夫。もしバレたら、カミングアウトしちゃいましょう(笑)
【ベル】



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