露出小説




   お姉ちゃんのキッス

                              作;ベンジー

第一章 お姉ちゃんがヌードモデル

        1

 悠人の目の前で、由衣がブレザーのボタンに手を掛けた。
 指先が、震えているのが見えた。
「そんなにジッと見ないでよ」
 一つ違いの姉・由衣は十四歳だ。
 ボタンを外す手が止まり、祈るように胸の前で合わせる。その奥に隠された膨らみを、悠人は何度、想像したか知れない。
 服を着たままでもわかる。
 一緒に入浴していた頃の記憶は、全く当てにならないだろう。悠人の想像力を、刺激して止まなかった。
「わ、わかったよ。だから……」
 悠人は、顔の前で手を合わす。掌の間にはデジカメが握られていた。
「もう。お姉ちゃんだって、死ぬほど恥ずかしいんだからね」
 経緯はともかく、由衣は、悠人のヌードモデルになると約束してくれたのだ。
 別々の部屋で寝るようになってから、悠人が由衣の部屋に入ることも少なくなった。中学生になってからは、初めてかもしれない。
 由衣の部屋にいるだけでドキドキした。
 悠人に背中を向けたまま、ボタンを外す由衣。ブレザーが肩から滑り落ちた。ブラウスとスカートに白いソックスの出で立ちは、まだ全然、普通の格好なのに、どことなく色っぽい。
 薄いピンク色のブラジャーが、透けて見えているからか。
 ちょっとだけ間が空く。でも、由衣は決して約束を破らない。スカートのホックを捉えた指は、確実に目的を果たそうとしていた。
 ホックは外れ、ファスナーが小さな音を立てた。
 スカートが足下に落ちると、由衣は急いでブラウスの裾を伸ばす。すぐにそれも脱ぐのにと、悠人はおかしくなった。
「あーん、もう」
 誰に言っているわけでもない。由衣は両手で顔を覆った。背中を向けているから見えないけど、きっと真っ赤な顔をしているのだろう。
 女の子って、そんなにハダカを見られるのが恥ずかしいのかな。
「約束だからね。悠人も、ちゃんと守るんだからね」
 由衣は、何度も念を押しながら、ブラウスのボタンを外していった。
 一番下まで外れたはずだ。
 でも、由衣はすぐに動かない。
 ブラウスを脱げば、悠人に下着姿を晒す。そう考えると、先に進めないのだろう。悠人の心臓は期待で爆発しそうだった。
「ああ……」
 何とも言えない妖しげな吐息と共に、由衣のブラウスが肩から滑り落ちた。
(やっぱり薄いピンクだ)
 由衣の下着は、上下お揃いだった。派手さはない。むしろ至って清楚な雰囲気だ。由衣の真っ白な肌を、ことさらに強調していた。
 悠人は、以前に由衣の洗濯物をのぞき見たことがある。
 ブラジャーはDカップだった。
 あのカップの下を早く見たい。高鳴る心臓が、それを正直に告げていた。
「悠人……」
 由衣の口から、微かな声が漏れた。
「な、何? お姉ちゃん」
 悠人は、ドキッとした。心の内が、ばれてしまったのかと思った。
「見てる……悠人、見てるの?」
「う、うん」
「お姉ちゃん、死んじゃう」
 由衣は両方の肩を高くあげ、自分の身体を抱き締めた。ブルブルと全身が震えていた。その仕草は「これで勘弁して」と訴えているようだった。
(えっ、もう終りなの……?)
 悠人は、オールヌードのつもりだった。
 でも、由衣は固まっていた。
 悠人の前では、水着にもなったことのない由衣だ。全部脱ぐつもりだったとしても、これ以上は、身体が受け付けないのかもしれない。
 悠人の視線も、由衣の下着姿から離れなかった。
 あばた一つない真っ白な背中。ガラス細工のようにくびれたウエストライン。健康的にスラリと伸びた太もも。全体的に均整の取れた姿態は、由衣の童顔とかけ離れていた。
 一つ年下の悠人だったが、身長は中学生になるとすぐに追い越した。女子の中でも小柄で童顔の由衣だ。悠人から見たら、子供のようでさえある。
 それでもブラウスを脱いだ由衣は、悠人にとって、大人の女性そのものだった。
「お姉ちゃん、きれいだ」
 思わず、こぼれた言葉だった。
 ピクリと反応を示す由衣の素肌。身体の震えが止まっていた。
「もっと見たいよね」
 独り言のように小さな声だった。
 もちろん、見たい。悠人のおちんちんは期待に満ち、制服のズボンを突き上げていた。
「う、うん。でも……」
 由衣の様子を見ていると、酷な要求にも思えた。大好きなお姉ちゃんを、これ以上苦しめて良いものか。でも、こんな機会は、もう二度とないかもしれない。
 悠人は、由衣の下着姿から目を逸らし、拳を握り締めた。
「お姉ちゃん、ボク……」
 肩越しに、由衣が振り向く。悠人の迷いが、全身から溢れていたようだ。
「悠人も、中学生になったんだものね」
 由衣は、胸の前で堅く綴じ合わせていた腕を開き、背中に回した。
 ゆっくりとした動きで、ホックが外れる。
 支えを失って両側に広がるブラジャー。カップにも弛みが出たのだろう。由衣は少し慌てた様子で、前を押さえた。
 ドクドクと脈打つ心臓の鼓動。
 悠人は、由衣に聞こえてしまうのではないかと、心配になった。
 由衣の指先が肩ひもに掛かる。左肩が外れ、次に右肩が外れ、背中一面が素肌一色に描き出された。
 一拍の間を置き、ブラジャーが足元に落ちた。
 由衣は背中を丸め、無防備になったおっぱいを、両手で覆い隠した。身に付けているものは、ブラジャーとお揃いのショーツだけだ。
 悠人のおちんちんは、窮屈なズボンの中で痛みさえ覚えた。
「これで勘弁……」
 由衣は首を捻り、横顔を見せた。
「……というわけには、いかないよね」
 とても恥ずかしいのだろう。目尻に涙を溜めていた。今にも、こぼれ落ちそうだ。
 お姉ちゃんにこんな思いをさせてはダメだ、と思う悠人。
 でも、心の片隅では、もっと恥ずかしい目に遭わせてやりたい、お姉ちゃんの泣くところが見たい、と騒いでいた。
「お姉ちゃん、ごめん」
 思わず、声に出ていた。言った後で「しまった」と思う悠人と、「これで良かったんだ」と思う悠人がいた。 
 由衣は、どっちに解釈したのだろう。
「いいの」
 由衣は目を閉じ、首を大きく振った。
「お姉ちゃんがした約束だものね」
 悠人の心臓が、一際大きく脈打った。
(ホントに? ホントに脱いでくれるの)
 悠人の期待が、一気に膨らむ。約束はしていても、信じられない気持ちでいた。お姉ちゃんがオールヌードになってくれるなんて。
 ゆっくりと動き出した両手が、薄いピンクのショーツに掛かる。
 由衣のおっぱいを隠すものはない。背中を向けたままでも、前屈みになった胸で揺れているのが見え隠れするようだ。
 ショーツが少しずつ下がり出す。
 由衣の白い肌の中でも、さらに真っ白なお尻の膨らみが、悠人の目に晒されていく。悠人のおちんちんは暴発寸前だった。
 ピンクのショーツが太ももを降りていく。由衣は、丸出しのお尻を悠人に向けて、突き出すような姿勢になった。
 由衣の動きが止まった。
「こんなのダメぇーーー」
 自分の姿が、急に浅ましく思えたのだろう。由衣は膝を付いて蹲った。太ももにはまだ、ショーツが絡んだままだ。
「お姉ちゃん……」
 悠人は、由衣に駆け寄ろうとした。
「来ないで!」
 由衣の大きな声だった。悠人は、由衣に怒鳴られた記憶がない。そんなにひどいことをしているのかと、今度は悠人の方が泣きそうになった。
 悠人は、部屋の入り口で気を付けの姿勢を取り、こぶしを丸めて肩を持ち上げた。
 由衣は、ジュータンの上で背中を丸めていたが、悠人の異変が自分のせいだと思ったのか、優しい声になっていた。
「どうしたの。悠人」
 ショーツを脱ぎかけたままの恥ずかしい格好で、由衣は、顔だけを悠人に向けた。
「もういいよ。そんなに恥ずかしいなら」
 悠人は肩の力を抜いた。でも、がっかりしている様子は隠せなかった。
「ゴメンね、悠人。お姉ちゃん、大丈夫だから」
 由衣は、大きく深呼吸をすると、太ももに絡まっていたピンクのショーツを引き抜いた。

        2

 悠人が女子更衣室をのぞいた。
 被害者は女子バレー部。由衣の親友・瑞穂が所属するクラブだ。悠人がクラスメイトと二人で着替えをのぞいたのだが、気づいたのは瑞穂一人だった。
 悠人が由衣の弟だと知っていた瑞穂は、大騒ぎにはせず、由衣にだけ、ケータイで知らせて来た。
「私もハダカ、見られたんだからね。由衣の責任よ」
 瑞穂は、そう言って由衣を責めた。
 平謝りの由衣。学校を走り回り、悠人を見つけ出した由衣は、なんでそんなことをしたのかと、悠人を問い質した。
 悠人は、正直に答えた。「同級生のヌードが見たかったんだ」と。
 その場の勢いもあった。瑞穂に恥ずかしい思いをさせて、申し訳ないと思う気持ちも強かった。由衣は、悠人に告げていた。
「もう絶対にノゾキなんかしないで。その代り、お姉ちゃんのハダカだったら、いつでも好きなだけ見せてあげるから」
 顔をクシャクシャにして喜ぶ悠人。
「ヌードモデルになって」と頼まれ、それだけは勘弁と思った由衣だが、悠人の無邪気さに、ついOKと言ってしまった。
 家に帰ると、早速、悠人がデジカメを持って部屋に来た。
 由衣は、悠人の好奇心旺盛な目で見つめられ、急に恥ずかしさがこみ上げたが、今さら断れるわけもない。
(そんなに見たいのね。私のハダカ……)
 由衣は、やっとの思いで制服を、そして、下着を脱いでいった。
 丸出しのお尻を見られ、由衣の羞恥は極限に達した。悠人に向かってお尻を突き出した姿のハレンチさに耐えきれず、ジュータンに蹲る。
 駆け寄ろうとする悠人が、弟ではない男の子に思えた。思わず叫んでしまった言葉に、由衣自身が驚いていた。
(何を怖がっているの。相手は悠人じゃない)
 恐怖……? それとも、別の何かかしら?
 由衣が戸惑っている内に、悠人は「もういいよ」と告げた。ついさっきまで、あんなに喜んでいた顔が、落胆に染まっていた。
「いいわけはないじゃない。私が悠人に約束したんだもの」
 全裸になった由衣を、悠人が見下ろしていた。
 まだ手に持っていたショーツを胸に抱く。悠人の視線を全身に感じ、決心が鈍った。でも、悠人の期待は、視線より大きな力となって由衣を責め続けている。
「お姉ちゃん……いいの?」
 恐々と、問いかけてくる悠人。その一言一言が、由衣を苦しめている。悠人が知らないだけだ。
「うん。お姉ちゃんは大丈夫だから」
 由衣は、自分に言い聞かせているようなものだった。
 悠人の顔を正視できない。
 自分の部屋でハダカになっただけじゃない。悠人は家族じゃない。何もおかしなことをしているわけではない、と思ってみても、身体が動かない。
(どうしよう。どうすればいいの)
 頭の中ではてなマーク≠ェグルグルと回り続けた。悠人の前でハダカになった羞恥ばかりではない。ホントにどうしたら良いか、わからないのだ。
 そんな由衣を、ストロボの光が包んだ。
「あっ、ダメっ!」
 思わず口走る由衣。顔を背け、肩を窄め、身体を固くした。
(撮られちゃった。ヌード、撮られちゃった)
 週刊誌のグラビアなどで、ヌード写真を見た経験はある。でも、自分がヌードを撮るなんて、考えたことはなかった。
 人前でハダカになるだけでも、由衣には信じられない行為だった。
 まして、ヌードを写真に撮られて不特定多数の人の目に晒すなんて。男の子たちのイヤらしい視線で見られるなんて。
 ヌードグラビアを見たがる男の子は、まあ、仕方がないのかとも思う。
 でも、ヌードを撮らせる女の子は理解できなかった。なんでそんなことができるの、あなたには羞恥心がないの、と軽蔑さえしていた。
 それなのに、今、自分がヌードモデルをしている。
 由衣は、両手で顔を覆った。
 指にはまだ、脱いだばかりのショーツが絡みついていた。慌てて脚の下にショーツを隠す。ストロボが、もう一度、瞬いた。
「あーん、もう。こんなところを撮って」
 悠人に背中を向けたままの由衣だが、首だけ捻って、悠人を見上げた。
「だって、お姉ちゃんがポーズを取ってくれないから」
 悠人が返す。さっき「来ないで」と言われたからだろうか。部屋の隅まで下がって、デジカメをこちらに向けていた。
「ポーズ……?」
 由衣の脳裏に、グラビアの女の子たちが浮かんだ。
(違う! 私は、悠人に頼まれてハダカになったの。私が見せるのは悠人だけ。ヌードを撮らせるのも悠人だけ。あの子たちとは違うんだから)
 由衣は頭を振る。悠人がまたシャッターを押した。
「ねえ、立ってくれないの」
 やはり、そうなるのだろう。ヌードモデルになると約束したのだから。
「……そう、だよね」
 由衣は、曖昧な返事が精一杯だった。
「う、うん。立って全部、見せてよ」
 悠人は、声を上擦らせていた。正直な気持ちをぶつけているのだと思う。それだけに、由衣の胸を突き刺した。
(全部……そうなのね。全部、悠人に見られちゃうのよね)
 由衣は、視線をジュータンに落とし、肩で大きく息を吐いた。
 決心していたはずなのに、いざとなると恥ずかしくて堪らない。でも、悠人は許してくれないだろう。今も期待に満ちた目で、由衣を見つめているに違いない。
 これ以上、恥ずかしがっていたら、悠人にウソを吐いたことになる。
 由衣は右手を胸に当てたまま、片膝を立てた。
 足元に脱ぎ捨てたままになっている衣類に気づき、片手でまとめて、ベッドの掛け布団に押し込む。それをハダカでするのは、辛かった。
 由衣は、悠人に背中を向けて立った。
 もう一つ、小さな息を吐くと、胸をガードしたまま、振り向く。
「これが、私……お姉ちゃんのヌードよ」
 由衣は、ゆっくりと両手を下ろした。

        3

 悠人は、フリーズしていた。
 目の前に立つ姉・由衣の全裸象から目が離せない。スレンダーな姿態に、ことさら存在を強調するように膨らむ胸の隆起。
 あれがDカップのおっぱいなのだと、悠人の視線を惹き付ける。
 頂上には、淡い赤みを帯びたサクランボが、申し訳なさそうに揺れている。由衣の真っ白な肌の中で、乳首だけがアクセントとなっていた。
 腰に向かってキュッと窄まるラインはか細く、頼りない。その真ん中に、縦に刻まれたお臍の窪みが、いかにも可愛らしい。
 さらに目を落とす。
 そこは、見るだけでも憚られるような禁断の聖地だ。赤ちゃんの頭髪を思わせる柔らかな茂みが、その奥の羞恥を包んでいた。
 由衣の腰の両側で軽く結んだこぶしが、小刻みに震えている。
 恥ずかしくて堪らないのだ。
 首を思いっきり横に捻っていた。悠人の顔は見られないらしい。
 悠人の願望を聞き入れてハダカになったものの、由衣は、悠人に肌を晒す羞恥に身を震わせている。じっと耐えているのだ。
 そう思うと悠人は、そんな姉に、ますます甘えたくなっていく。
 あの胸に飛び込みたい。ハダカの胸でしっかりと抱き締めて貰いたいと、母親にすがる小さな子供みたいに思った。
 悠人は、ようやくデジカメを思い出した。
 ファインダー越しに見る姉の姿は、別格だった。この世で最も美しいものは何だと訊かれたら、今の悠人は間違いなく由衣のヌードと答えただろう。
 由衣は、まだ動かない。
 悠人は、シャッターを切った。ストロボの瞬きが、部屋中の影を消す。思い出したように、由衣が、胸を抱いた。
「あーん、撮ったのね」
 決して、返事を期待してのものではなかったのだろう。座り込みはしないものの、今さらながらに、身を揉む由衣だった。
「きれいだよ、お姉ちゃん。とってもきれいだ」
 悠人の素直な言葉だった。「きれいだ」と言われるのは嬉しいに違いない。由衣は、顔をますます赤く染めるだけだった。
「言わないで。撮るなら、早く撮って終りにして」
「終りなんてダメだよ。ちゃんと見せて。ポーズもとってよ」
 悠人は、ファインダーをのぞき込んだ。
 由衣は、もう半身を向けている。おっぱいも、しっかりとガードしたままだ。
 正面から堂々とヌードを見せるのは、すでに限界だったのだろう。でも悠人は、まだ全然満足していなかった。
「お姉ちゃん、こっち向いてよ」
 悠人は、由衣が恥ずかしさに身を揉む姿も、カメラに納めていた。
 ここまでやってくれたお姉ちゃんだ。悠人が望めば、どんなに辛いことだって、叶えてくれるに違いない。
「お姉ちゃん、死ぬほど恥ずかしいんだよ」
 由衣の恥ずかしがる仕草や表情に、悠人は胸がキュンとなる。週刊誌のグラビアやインターネットで見たヌード画像にはない感覚だった。
 悠人は、由衣に向かって一歩、踏み出した。
「ダメっ……」
 さっきのように「来ないで」と言いたかったのだろう。でも、言えなかったようだ。
「だって、全然ポーズを取ってくれないから。お姉ちゃんのハダカだって、もっとよく見たいのに」
「ああ……」
 由衣は、真っ赤にしていた顔を掌で覆い隠す。悠人が、もう一歩近づいた。
「わかったわ。ちゃんとやるから」
 由衣が身体を起こした。悠人に向かって真っ直ぐに立つ。両手は前を押さえていた。
 ストロボが瞬く。
「それじゃ、肝心なところが見えないよ」
 悠人の言葉に、身体を震わせる由衣。それでも、おずおずと両手を下ろしていく。おっぱいがまた、露わになった。
 期待以上に大きなおっぱいだった。
 真っ白な肌の膨らみは、胸から垂れることもなく、乳首をやや上に向けている。ゴムボールのように弾力がありそうだ。
 あの胸の谷間に顔を埋めたら、どんなに気持ちが良いだろう。
 悠人の考えていることが、そのまま由衣に通じてしまったのかもしれない。由衣は、額まで紅潮させていた。
(恥ずかしいんだ。お姉ちゃんはあんなふうに言われると、余計に恥ずかしいんだ)
 悠人の中に、複雑な感情が潜んでいく。
「背中で手を組んでみてよ」
「えっ、こ、こんな感じかしら」
 由衣は、言われるがままに、両手を背中に持っていく。ポーズというよりは、何も隠しませんと宣言しているような格好だった。
 顔は背けたままだった。
 悠人は続けてシャッターを切った。由衣は、その度に肩を動かす。
「今度は、両手を頭の後ろに」
 悠人は、いつか見たヌード写真を思い出しながら、注文を付けた。躊躇いながらも、言われた通りに動いてくれる由衣。
 モデルとしては様になっていないが、悠人には十分だった。
 シャッターを何度押しただろう。悠人にしたところで、そんなにポーズを付けられるわけでもない。こんなことになるなら、もっといろいろ勉強しておけば良かったと思った。
「まだ、撮るの」
 由衣の恥ずかしそうな表情は変わらない。
 この顔をもっと見ていたいと、悠人は焦る。ヌードモデルのポーズがなくなってしまったら、撮影は終りなのだ。
「そうだ。次はベッドに寝てみてよ」
 悠人は、名案だと思った。ポーズは何でも良かった。ただ、由衣がハダカで自分の前にいてくれれば、良かったのだ。
「もう。こんな写真、誰にも見せないでよ」
 由衣は、ベッドの上に正座した。両手で胸を隠していた。そんな仕草にも、悠人は堪らない思いにさせられた。
「それじゃあ、手を前に付いて」
 由衣は身体を前に倒し、掛け布団に指を立てる。支えを失ったおっぱいが揺れた。こうして見ると、身体に似合わないほどの大きさだ。
 可憐なサクランボを思わせた乳首も、心なしか、大きくなっているように見えた。
 悠人は、シャッターを押すのも忘れて、由衣のおっぱいに見入った。
「やだあ。悠人ったら……」
 由衣も、悠人の視線に気づいたのだろう。両手で胸を包み隠し、前屈みに身体を丸めた。
「あっ、ダメだよ。おっばい、隠しちゃ」
「だって、悠人がお姉ちゃんをエッチな目で見るんだもの」
 由衣の裸身が、さらに前屈みになる。
「そんなこと……あっ!」
 元々、ベッドの手前に膝を付いていたのだ。掛け布団がズレ、由衣はバランスを崩してベッドから落ちそうになった。気づいた悠人は、由衣に飛びついて支えるつもりが勢い余り、全裸の由衣をベッドに押し倒す形となった。
 状況を分かち合い、見つめ合う二人の視線。
 沈黙が、部屋に降りた……と思ったのも束の間だった。
「ダメよ、悠人。何やっているの」
 由衣は、無気になって、悠人を突き放そうとする。
「お姉ちゃん、俺……」
 悠人は、由衣を離さない。決して、意図したわけではなかった。気が付くと、由衣の裸身が、悠人の腕の中にあった。

        4

「ダメだってば、悠人。こんなことしちゃ、いけないんだよ」
 由衣は、両手を悠人の胸に当てて押し上げる。だが、男の子の力は解けない。
 考えてもいない展開だった。
 小さくて、かわいいだけの弟。悠人はそんな存在だったはすだ。それが今、自分の身にのしかかっている。
 ベッドの上。由衣は一糸まとわぬオールヌード。
 悠人が本気だったら……
「お姉ちゃん、俺……」
 経験のない由衣でも、こんな時、男の子は止まらなくなってしまうのではと、想像が付いた。
 でもそれは、普通の男女の話だ。
 由衣と悠人は血を分けた姉弟。そんなことがあって良い関係ではない。
「やめて、悠人。こんなことするなら、もうハダカになってあげないわよ。今撮った写真だって、全部取り上げるからね」
 悠人の腕の力が弱まった。
「ホントに。これからもハダカになってくれるの」
 由衣は、千載一遇のチャンスに思えた。
「えっ、ええ。約束するわ」
「そうだよね。いつでも好きなだけ見せてくれるって約束したんだよね。今度は俺も用意しておくから。もっといっぱい、写真撮らせてもらうから」
 身体を起こし、ベッドの脇に立った悠人だが、目だけは由衣の裸身を離さない。
 由衣は、そのまま掛け布団に潜り込んだ。
「それじゃあ、今日はもうおしまいね」
(お願い。もう勘弁して)
 首だけ出して、祈るように悠人を見つめた。
「うん、わかった。じゃ、また明日ね」
 悠人が、部屋を出て行った。あっさりと承諾してくれたのは嬉しかったのだが、
 また明日……?
 また明日って……
 また明日、悠人の前でヌードにならなければならないの?
 一人になったばかりのベッドで、由衣は胸のドキドキが治らなかった。「いつでも好きなだけ」だなんて言うから、悠人は明日も、由衣のハダカが見られると思っている。
(私……すごい約束しちゃったんだ)
 それだけじゃない。
「用意しておくから」とか言っていた。
 何を用意すると言うのか。今日よりも恥ずかしいことなのだろうか。考えれば考えるほど、胸の鼓動が高まるばかりだ。
(また、あんなことをするのかしら?)
 由衣は、悠人に抱きかかえられた時の様子を思い出した。
 男の子とエッチする夢を見た経験もある。自ら妄想したこともある。でも、絶対に相手は悠人ではないはずだった。
(ううん、違う。あれはただの事故。ベッドから落ちそうになった私を助けてくれただけじゃない。私の被害妄想だわ。悠人がそんなこと、望むはずがないもの)
 思った傍から、下腹部に感じた刺激が思い出される。あれは悠人の勃起したおちんちんだ。由衣のヌードを見て堅くなったのだ。
 丸裸の由衣にのしかかった悠人が、いきり立ったおちんちんをどうしたかったのか。
 それは、考えてみるまでもなかった。
 由衣は股間に変化を感じた。女の子の部分が異常に熱くなっていた。
(そんな……ウソっ)
 いつの間にか、指先が秘苑に近づいていた。中指の先端が滑りを帯びる。由衣の最も敏感な部分が濡れているのだ。
 中学生になって覚えたばかりのオナニーだが、由衣はあまり好きではなかった。興味本意で試してはみたが、それ以上はなかった。
 それなのに、今は無性に求めている。
 女の子の源泉が、早く嬲ってと呼んでいる。
(ど、どうして。私……なんでこんなになってるの?)
 由衣にはわかっていた。悠人とのセックスを想像してしまったからだ。
(ダメよ、それはいけないことなの)
 頭ではわかっていても、指先の動きは止まらなかった。
 数えるくらいだったオナニーだが、まるで今までの分を取り戻すように、秘密の肉を掻きむしる。甘い痺れが全身に広がっていく。乳首を堅くし、吐息を焦がし、脳を溶かす。
(こんなになるなんて……)
 由衣は、自らの指の刺激に喘いだ。
「ああぅ。ああーん。あっ、ダメっ、あっ、あああ……」
 頭の中には悠人しかなかった。
 由衣の裸身を見る悠人の目。
 おっぱいも、お尻も、ヘアーも見られた。全部、悠人に見られた。
 あんなに恥ずかしかったはずなのに、今はその感覚も曖昧になっていく。
 恥ずかしいのに気持ち良かった。身体の奥で、もっと見てと叫んでいた。そんな気さえして来る。
 悠人が喜ぶなら。
 ハダカを見せるって約束したから。
 ウソよ。そんなものは全部ウソ。
 由衣は、ハダカを見られることで、すでに感じていた自分を意識した。おちんちんを大きくしていた悠人と同じだ。
 恥ずかしいと身を隠す影で、とんでもなくエッチな感情をくすぶらせていたのだ。
「ああーん。ダメっ、そんなのダメよ。ああ、イヤっ。あああ、いやーん」
 由衣の意志から切り離された指先は、思う存分、秘苑を嬲る。嬲り続ける。
 それはいつ果てるとも、わからなかった。
(つづく)



 今月号はいかがでしたでしょうか。
 こちらにアンケートを設けさせて頂きました。ご回答、よろしくお願いします。

期待通りだった
期待していたほどではなかった
イマイチだが次回に期待する
もう読まない

その他 ご意見ご感想が頂ければ幸いです。