露出小説




   ペットショップの女畜体験(前編)

                              作;ベンジー

 中学三年生の頃、市内で初めてのミスコンがあり、身体的な成長の早かった私に、周囲の声が集まりました。
「私なんかダメだよ」って、誰でも一度は言いますよね。水着審査も恥ずかしかったし。
 あの時、誰かがもう一押ししてくれていたら……結局、私の代わりに出たお友だちが、初代ミスコン(中学生の部)に輝きました。
 と言うわけで、今の私は、どこにでもいる普通の女子高生・藍野さゆり。十六歳。
 きっかけは、ネットで女畜の画像を見たことでした。
 牧場の豚舎で、横一列に並んで餌を貪る豚の中に、一匹だけ異物が混ざっていました。それが女畜だったのです。
 綺麗な女の人が全裸で後ろ手に拘束され、豚の列に繋がれていました。首枷で頭を餌箱の高さに固定された姿は、まるで土下座させられているようでした。
 いえ、手を付くこともできない姿勢は、全裸土下座よりも惨めです。
 後ろ手も、首にも、鉄製の枷が掛けられ、南京錠で施錠されていました。逃げ出すことは不可能です。家畜と同じ扱いを受けるための拘束なのだと知りました。
 涙が出ていました。
 女の人に、こんな酷いことをするなんて信じられません。鍵を掛けていると言うことは、強要していると言うことです。豚と一緒に飼われるなんて。
 酷いと思いながらも、目を離せないでいる私がいました。
 胸がザワザワしました。
 たまたま見つけたページなのに、それから何度も見に行ってました。
 この牧場の場所はとても遠くで……って、私はいったい何を考えているのでしょう。近かったら、見に行くつもりだったのでしょうか。
 なんて考えていたら、ある日、いつものページに告知が表示されました。

『女畜見学&体験募集』

 初めて見た時のザワザワが、何倍にもなって戻って来ました。
 あの女の人を見られるんだ。
 お話できるかなぁ
 なんで、あんな格好をしているのだろう、って。
 そうです。私は聞いてみたかったのです。あんな綺麗な女性が、どうして全裸土下座みたいな惨めで恥ずかしい姿になっているのか。
 そして、見つけてしまいました。
 女畜を見学できる場所が、家から割と近かったのです。

 数日後の土曜日、ペットショップの前に立っている自分に驚いていました。そこが例の見学場所だったのですが、私って、こんなに行動力があったのかしら、みたいな。
 見た目は普通のペットショップでした。
 でも、胸がザワザワしています。小型犬や子猫のケージを覗き込んでいるだけなのに、何だか、とても悪いことをしているような気がしました。なんで私は、ここに来たのでしょう。
 そんなことを考えている時でした。店員さんに声を掛けられたのは。
「ペットをお探しですか」
「い、いえ。私は……その」
 返事に困っていると、店員さんは、そんな私の様子を見て、
「あなた、もしかして」
「えっ!」
「そうじゃないかと思って声を掛けたの。こちらへどうぞ」
 店員さんが何を納得したのかわからなかったのですが、私は手を引かれるままに着いて行きました。何となくそれで良いような気がしていました。
 店内から、一つ奥の部屋に入いると、雰囲気がガラッと変わりました。
 床こそコンクリートの打ちっぱなしですが、そこは豚小屋でした。真っすぐに伸びた通路の右側にある牧柵の向こうから、餌を求めた豚が顔を出していてもおかしくない造りになっていました。広さは、本物の豚なら三頭分くらいでしょうか。ネットで見た牧場の光景が再現されているようです。
「あのぅ、ここは……」
 胸のザワザワが大きくなっていました。
「展示室ですよ。希望者には、ここで畜化体験をして頂いてます」
 心臓が、一つ大きく跳ねました。
「あのっ、私、そんなつもりじゃ……」
 冗談じゃありません。こんな場所でハダカになって、家畜小屋に繋がれるなんて。それもあんな恥ずかしい格好で……
「でも、興味はあるのでしょ」
 返事に困りました。確かに興味はあります。だから今日、ここに来てしまったのは否定できません。でも、それを認めてしまうのはマズいかもしれません。それに、店員さんの言う興味とは違うような気もしました。そう思っていたのに、
「えっ。は、はい」
 言ってしまってから、店員さんの顔を見られませんでした。
「大丈夫ですよ。体験と言っても、レベルは選べますから」
(選べるの?)
 顔を上げてしまった私を見て、店員さんは脈ありと判断したのでしょう。何としても体験させてみせる、そんな目付きになっていました。
「パンフだけでも見て行って。ほら、キレイでしょ」
 渡されたパンフレットに写っていたのは、ネットで見たあの女畜でした。
「うわぁ〜」
 ホントにキレイです。
 女の人が酷いことをされている画像なのに、目が離せなくなる魅力がありました。食い入るように見つめてしまいます。
「よく見て。この写真はここで撮ったのよ」
 そのようです。背景に、ここと同じコンクリートの床と牧柵が写っていました。
「これ、貰って行っても……」
 声に出してしまってから、慌てて口を塞ぎました。
「もちろん良いわよ。ついでに、これも貸しておいてあげる」
 そう言って渡されたのは鉄の首輪でした。パンフレットの女畜が着けているものと同じもののようです。
「ありがとうございます」
 とは言ったものの、店員さんの笑みが、ちょっと怖かったかも。
 だって「貸しておいて」と言うことは、またここに来る前提になっているわけで、店員さんの魂胆が見え隠れしています。
 それなのに私は、鉄の首輪から目を離せなくなっていました。
「気に入ったみたいですね。そうだ。名前を彫ってあげるわ。あなた、お名前は?」
「藍野です。藍野さゆり、十六歳です」
 聞かれてもいないのに、歳まで答えてしまいました。名前を教えてしまって良かったのでしょうか。
「さゆりちゃんって言うんだ。ちょうど良かったわ」
 何がちょうど良かったのかわかりませんが、店員さんは、奥の事務所みたいな部屋に入って行きました、と思うと、すぐに戻って来ました。
 名前を彫るのって、そんなに簡単だったのでしょうか。
 店員さんの掌に金色のプレートがありました。犬の首輪に付いているものに似ています。それを察したように店員さんは、
「耳標の方が良かったかしら。ピアスの穴、開けているなら着けられるわよ」
 反応がちょっと遅れましたが、思い出しました。例の豚舎に並んでいた豚たちが、耳に着けていたアレのことでしょう。
「ダメです。そんなの困ります」
 私は、胸の前で両手を開き、左右に振りました。
「だったら、やっぱりこっちね」
 店員さんは、私の手に首輪を持たせたまま、器用にプレートをはめ込んでくれました。《SARY》と刻まれています。
「でもこれ、サリーって……」
「女畜になった時のさゆりちゃんの名前よ。今、私が付けたの。かわいい名前でしょ」
「は、はい?」
 これで良かったのでしょうか。女畜の名前まで付けられてしまいました。
「因みにそれ、体験用じゃなくて本物なの。着けてみても良いけど、外れなくなると困るから、南京錠は預かっておくわね」
 本物って……胸が跳ねます。そう聞くと、首輪が一段と重く感じられました。
(これ以上はマズイかも)
 早く逃げた方が良さそうですが、なかなか帰してくれません。それから小一時間も、店員さんの話を聞くハメになりました。

 家に帰り、パンフレットを広げました。
 パンフレットに書いていることと店員さんの話を総合すると、女畜と言うのは、先進諸国で問題になっている少子化対策の一つとして生み出された人工生命体だそうです。
 人の女の姿をしているのは、元々が高級ダッチワイフとして生産されていたものが、より高度な技術により研究、改良を重ね、今日に至るからだとか。
 物質的な意味では、本物の人間と区別が付かないところまで来ているようです。
 将来的には、元々の目的とは別に、単純な労働力としても期待されているのですが、知能が追いついていないとか、人間の言葉を理解して話をする個体もあるとか、いろいろと覚えてしまいました。
 なんだかんだ言って、女畜への興味が募っていきました。
 人のせいにはしたくないのですが、ペットショップの店員さんが貸してくれた首輪がいけないんです。部屋の中でも存在感がすごいんです。
 着けてみても良いと言っていたし……なんて、危ない、危ない。
 もう少しで、店員さんの手の内にハマるところでした。君子危うきに近寄らず、です。
 だったら何で借りてきたのかと突っ込みが入りそうですが、私って、それだけ優柔不断なんです。人に勧められたら断れないんです。

 取り敢えず、首輪は見えないところに仕舞っておきましょう。
 今、気になっているのはパンフレットの方です。『女畜見学&体験募集』の案内が載っています。見学はともかく体験なんて、そんな気は全くないのに、いえ、ない筈なのに、さっきからずっと目の前にあります。

 ――「大丈夫ですよ。体験と言っても、レベルは選べますから」

 レベルが選べるなら、ホントに体験しても大丈夫かもって、思ってしまいました。これも店員さんの手の内だとわかっていながら、パンフレットの隅々まで読み込んでしまう私がいました。
 体験レベルは、以下の通りとなっています。

【一日体験コース】

 項目   レベル1    レベル2     レベル3
 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 着衣 : 私服      スクール水着   全裸
 覆面 : 全頭マスク   ベネチアンマスク 無
 餌付 : 普通食     フレーク     家畜飼料
 施錠 : 無       有(解錠有)   有(解錠無)
 口枷 : 無       有(施錠無)   有(施錠有)
 調教 : 無       有(店員のみ)  有(フリー)
 繁殖 : 無       有(避妊有)   有(避妊無)
 公開 : 非公開     有(同店のみ)  有(フリー)

 注1 初回に限り、体験の途中でギブアップすることができます。
 注2 体験レベルの変更も可能です(変更不可も選択可)。
 注3 二回目からは体験期間を設定することができます。
 注4 体験期間中のイベントには参加して頂きますのでご承知ください。
 注5 詳しくは『家畜体験申込書』を参照してください。

【オプション】

 馴らし飼育
 オークション体験
 女畜化

 ※その他、ご希望がございましたら、お気軽にご相談くたさい。


 なんかすごいことが書いてあります。
 項目ごとにレベルを選べるようになっていて、私服や水着でも体験できたり、顔を隠せたり、施錠なしにできたりと、一見、良心的にも見えます。
 ギブアップができたり、途中で体験レベルを変更できたりするのもありがたいです。
 ただ、気になる記述もあります。初回に限りギブアップ可と言うのは、裏を返せば、二回目以降は、ギブアップできないと言う意味です。
(変更不可も選択可)との表現も怖そうですし、期間中のイベントについては触れられていません。どんなイベントなんでしょう。詳しくは『家畜体験申込書』を、なんて書いてあると言うことは、この他にも何かあると言うことですよね。
 一番の問題は、そうしたパンフレットの記述を怖いと思う一方で、それと同じくらいワクワクしている私がいることです。

 さて、どうしましょう。

 因みに体験が無料なのは初回のみで、二回目からはお金が掛かるそうです。高校生のお小遣いでは、ちょっと厳しいくらいの金額が。
 くどい様ですが、私は体験なんて考えていない……筈です。
 それでも敢えて選ぶなら、全部レベル1でしょうか。スクール水着も有りかな、とか、覆面はなくても、とか、人が食べられるものなら家畜飼料も食べてみたい、とか、考えるところはいくつかあります。調教と繁殖の項目は見なかったことにして、顔見知りに見られるのもNGです。
 そんなことを考えていたら、急に首輪を着けてみたくなりました。
 店員さんも言っていたし、せっかく重い思いをして借りて来たのだから、着けないのは勿体ない、みたいな言い訳をして、ついさっき仕舞ったばかりの首輪を出します。
 鉄の輪が蝶番で二つに割れる仕様です。首の後ろ側から掛けます。蝶番の反対側は両端が直角に曲がっていて、その部分に穴が開いています。顎の下で合わせて、そこに南京錠を掛け、施錠するようです。
 私の家畜名を刻んだプレートは、首輪の左側にあります。右側にも個体登録番号と表示されたプレートがあり、その下に七桁の数字が刻まれていました。
 何の登録する番号なのか。言うまでもありませんよね。

 ――「因みにそれ、体験用じゃなくて本物だもの」

 南京錠を掛けられて首輪が外せなくなったら、本物の女畜と言うことでしょうか。
 少しだけ身震いを覚えました。
 でも、今は簡単に外せます。鏡に写して見ると、顎の下の合わせ部分がわずかに開いたままで、だらしなく見えます。南京錠も借りてくれば良かったかしらと、少しだけ後悔しました。
 店員さんの言う通り、外せなくなったら一大事でしたけど。

        ◇

 スマホが鳴りました。ペットショップの店員さんからです。
 ちょっとドキドキしながら取ると、
『パンフレットは、目を通して貰えたかしら』
 このタイミング……まさか、この部屋に隠しカメラが仕掛けてあるのでしょうか。
「は、はい。一応、全部見たつもりです」
「突然なんだけど、明日は空いているかしら。家畜体験のキャンセルが出たの」
 キャンセルしたのは何度も利用している方で、キャンセル料も貰っているから、私が希望するなら無料で体験ができると言うのです。
 怪しい匂いがプンプンしていませんか。
 それに私の場合、どうせ初回は無料なのだから、メリットなんてありません。それでもすぐにNOと言えないのは、私の優柔不断故でしょうか。
 店員さんは、私が断らない前提で話をしています。他の店員に取られない内に、とか。ネットで仮登録もできる、とか。こんな機会は滅多にない、とか。
 結局、私は「取り敢えず、顔を出してみます」と返事してしまうのでした。

(つづく)



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