露出小説ヒーローごっこ 作;ベンジー 朱音は心臓が止まるかと思った。 今まで無口だったカナの唐突な行動に見えるかもしれないが、それは、カナを家まで送って行った日に、朱音が頼んでおいたことだった。 > 「そのイラストはカナちゃんにあげる。だから一つだけお願いを聞いてくれるかな」 あの日の朱音は、思いがけず遭遇した『ヒーローごっこ』に興奮していた。普段なら、考えられない精神状態に陥っていたと言って良いだろう。 約束の日になって朱音が磔にされた時、「もし、お姉ちゃんがパンツを穿いたままだったら、男の子たちにこう言ってね」と。 ――「あたしはパンツも脱がされたんだよ」 カナは朱音のお願いを、忠実に実行しただけなのだ。 朱音は、自分がショーツを脱げなくなる可能性に気づいていた。そうなった時のために保険を掛けておいたのだが、最悪のタイミングで保険金が支払われてしまった。 「脱がしていいのかよ」 男の子たちの当然の反応だった。 一人が脚立を上がって来た。一応、疑問形ではあるが、「パンツを脱がす」は確定していると言っているような顔つきだった。 膝頭が内側に向かって合わさる。 唯一の拠り所だったショーツまで脱がされてしまうなんて…… (イヤっ!) 声にはならなかったが、全身で「イヤっ」を表現していたに違いない。 残りの男の子たちも脚立の二段目まで上がって来た。朱音がショーツを脱がされる瞬間を間近で見ようと言うのか。 「パンツ脱がされると恥ずかしいのかあ?」 男の子の一人が問いかけた。 「恥ずかしいに決まってるだろ。ボクだって、おちんちん見られたら恥ずかしい」 (君たちが、おちんちん見られるのと一緒にしないで) 「でもこいつ、思いっきり恥ずかしい目に遭わせてって言ってたぞ」 (確かに言ったけど、もう忘れてくれないかな) 「手加減はいらないとも言ってた。パンツ、脱がしちゃおうぜ」 (やめて。それだけは許して) 「ボク、こいつのお股、見たい」 (お姉ちゃんは見られたくないの。お願い、わかって) 「うん。ボクも見たい」 朱音の望まぬ方向で意見の一致を見たようだ。好奇心旺盛な男の子たちの会議なら、結論がこうなるのも道理だった。 「だってさ」 脚立の天板に立った男の子の顔は、ちょうど朱音の胸の高さになる。近くから無防備な膨らみを見られる恥ずかしさはハンパない。 それでも朱音は祈った。 おっぱいなんていくらでも見て良いから、ショーツだけは脱がさないで、と。 「お前、さっきから大人しいな」 言葉が出せない。 出せば「イヤっ」と言ってしまうだろう。それは朱音の負けを決定付ける言葉だ。 朱音は、男の子の目を見つめた。 言葉にしなくてもわかって欲しい。これ以上、恥ずかしい目に遭わせないで。そうした思いが込められていたのだが、 「パンツを脱がすからな」 全く逆の答えが返って来た。さらに、返答のできない朱音に、 「どうした? 何か言ってみろよ」 ――「イヤって言ったらお前の負けだからな」 どうしても「イヤっ」と言わせたいのか。朱音の負けにしたいのか。負けを認めたら、どうなると言うのか。 手枷と南京錠で両手をバックネットに固定された朱音は、男の子たちに何をされても抵抗できない。 その「何を」の第一歩が始まった。 男の子の指がショーツの両側を摘まみ、真っ白な布を下げていく。 文字通り無抵抗の朱音。「イヤっ」と言うこともできず、下瞼に溜まった涙をこぼさないようにすることしか出来なかった。 男の子の指が太股まで進む。ショーツは裏がえり、朱音の薄い繊毛が現れた。男の子の息が掛かりそうだ。 「お股、見えた!」と二段目の男の子の声。 咄嗟に股間を手で隠そうとするのは女の子の無条件反射だが、今の朱音は手枷と南京錠で両手を大きく広げた磔の身だ。金具とバックネットの擦れる音が、わずかに聞こえただけだった。 「オケケ生えてる。ママと一緒だ」 「カナは生えてなかったよな」 頬の火照りが耳の裏まで広がっていく。 脱ぐのと脱がされるのとでは、こんなにも違うなんて。自分で脱いでおけば、この恥ずかしさを味わうことなく済んでいたのか。 「足の力を抜けよ。パンツを下ろせないだろ」 男の子の声に怒りが込められていた。 防衛本能が自動発動するのは女の子の性だったが、男の子には邪魔モノでしかない。 「力を抜かないなら、こうしてやる」 男の子は、右手の人差し指で朱音の乳首を弾いた。 「イ、イヤっ」 思わず声が出てしまう。 言ってはいけないワードに、男の子の反応は素早かった。 「今、イヤって言ったよな。お前の負けだ」 やはり、朱音の負けにしたかったようだが、このまま認めてしまうわけにはいかない。 朱音は焦った。何をするつもりか知らないが、無抵抗の状態で罰ゲームは怖過ぎる。せめて磔から解放された後にして欲しかった。 「ち、違う。いきなりおっぱいを……そ、そうよ。痛っ、て言ったのよ。女の子のおっぱい弾かれたら痛いんだからね」 必死でごまかそうとするが、無理があるのは見え見えだった。それで男の子が納得してくれるとも思えなかったのだが、 「まっ、いっか。足を開いたら許してやるよ」 意外な返事だったが、ここは乗るしかない。防衛本能を解除する朱音。それを見て取った男の子は、嬉しそうにショーツを足首まで下げた。 足を拘束されてない今なら抵抗は可能だったかもしれない。が、ここで男の子の機嫌を損ねるのは得策ではないだろう。促されるままに片足ずつ上げ下ろし、ショーツは完全に朱音から離れた。 「これ、な〜んだ」 男の子は、ショーツの端を摘まみ、朱音の鼻先に揺らして見せた。 ついさっきまで、最後の羞恥を守ってくれていたショーツが目の前にある。下腹部を覆ってくれるモノはない。生まれたままの姿だ。 「君って、イジワルなんだ」 朱音は、男の子の目を真っ直ぐに見つめ、静かな声で告げた。 男の子たちに「お姉ちゃんをハダカにしていいわよ」と言った時から、全裸にされることは覚悟していた。 こんな筈じゃなかった。相手は年端も行かない男の子だ。親戚の子なら一緒にお風呂に入っていてもおかしくない年齢だ。 想定以上の恥ずかしさに悲しみが上乗せされていた。 「何言ってんだ。お前をイジメるのはこれからだぞ」 きっとそうなのだ。男の子たちにとって、ショーツを脱がす行為は準備段階に過ぎないらしい。これからが本番と言うわけだ。 「小学生のくせに、女子高生をイジメるなんて、君たち……」 くらいだわ、と言うつもりだったのだが、その先は遮られた。 「このパンツ、濡れてやがる」 大きな声だった。 (ウソっ!?) 朱音は、瞬時にその意味を悟る。おっぱいを丸出しにされて、死ぬほど恥ずかしい目に遭っていた筈なのに、まさか、そんなことって…… 「ちょっと、何言ってるのよ」 両手が自由だったら、間違いなく男の子からショーツを取り返していたに違いない。それは決して、男の子の手に有ってはならないものだ。 「きったねぇ。お前、チビリやがったな」 盛大な勘違いだった。 「えっ、何? オシッコ漏らしたの?」 下の段にいた男の子も参戦して来た。 「ほら見ろ。濡れてるだろ」 ショーツが男の子たちの手から手へと行き来する。 「ホントだ。こいつ、大きいのに、オシッコ漏らしだ」 朱音は、目の前の男の子を睨みつけた。 やはりこの子はイジワルだ。それも自覚がない分、質が悪いとも言える。 「エラそうなこと言ってたくせに、ホントは怖くてたまらないんだろ」 「怖くなんかないわよ」 「だったら、なんでパンツが濡れてるんだよ」 「それは……」 言い淀む朱音に、 「今からお前は、お漏らし女だ」 下の段の男の子が、そう言って指さした。 ショーツを濡らしたのはオシッコではない。が、真実を知られることは、女の子にとって、ハダカを見られるよりも、ずっと恥ずかしいことかもしれない。 もっとも、白状したところで、この子たちに理解できるかどうかは疑問だったが。 「もう、お漏らし女でいいわ」 怖くなんかない……ことはないが、手枷と南京錠でバックネットに繋がれた時に比べれば、少しはマシになって来た。恥ずかしいことに変わりはないが、それでも一種の開き直りとでも言うべきか。 磔の身で丸裸にされ、下着の汚れを指摘されたのだ。もうこれ以上、恥ずかしい目に遭うことはないと思うのもムリはなかった。 「これはどうするんだっけ」 下にいた男の子の一人が、両手に一つずつ足枷を載せていた。 ――「手枷を繋いだら、次は足枷も着けるのよ。それで磔が完成するの」 思い出してしまったようだ。 「これで足も縛るんだよね」と足元に近づく男の子たち。 元々、足枷も着けて貰うつもりで渡したのだ。両手を広げて固定されただけでも恥ずかしい部位は隠せないし、逃げ出すこともできない。全裸磔の必要条件は整っていると言って良いだろう。 だが、充分ではない。両足の自由も奪われることで磔が完成する。本当に身動き一つできなくされてしまうのだ。 裏を返せば、この磔は未完成…… 朱音の心は揺れていた。 ショーツまで脱がされてしまい、見も世もなく恥ずかしい思いを強いられている朱音だが、これ以上、拘束が増えたらどうなるか。 股間を覆う術は無くなっても、自ずと内股に力が籠るのはムリもなかった。 「おい、お前。足を開けよ」 男の子の一人が、朱音の左足首を掴んだ。両足をピタリと付けたままでは、足枷を着けられないと言うのだ。 「えっ……?」 返事に困る朱音を無視して、男の子は足首を引っ張った。膝はまだ割れていなかったが、足枷を着けるには充分な空間は確保された。 左足首に巻き付く皮の感触。 「じゃあ、ボクはこっちの足だ」 脚立の下の段にいた男の子二人が、朱音の両足にそれぞれ足枷を着けようとしていた。 (このままでいいの?) 今ならまだ間に合う。両足が自由な内に蹴り上げれば、これ以上の拘束は避けられるかもしれない。それなのに…… 「足にもこれ、着けるんだよな」 男の子たちが南京錠を取り出した。朱音が頼んでいたことだ。予定通りなのだ。そうは思いながらも、心の揺れは治まらなかった。 朱音にとって磔の完成形は『ヒーローごっこ』のイラストだった。お気に入りのサイトでゲットした全裸大の字磔の少女だ。 足を閉じたまま磔にされてしまって良いのか。 カナが神社の境内で磔にされていた時は十字磔だった。だから、男の子たちは、朱音にもそうするだろうと予想できていた。 このままでは、十字磔になってしまう。 今日のところはそれでも良いかと思いもしたが、次の機会があるかどうかもわからない。 だからと言って、男の子たちに「南京錠を掛けるのは、両足を大きく広げてからにしてちょうだい」と頼むこともできない。 今のままでさえ、消えてしまいたい程の恥ずかしさに身を落としているのだ。その上、足を広げて、熱く濡れそぼった女の子の秘密を曝け出すなんてあり得ない。そう、頭ではわかっているのに…… (わたしは、なんでカナちゃんを見ているの?) ついさっき、カナの一言でショーツを脱がされた。自分で頼んでおきながら、カナが悪魔に見えた。この子がいなかったら、丸裸にされることはなかったかもしれない。全部、カナのせいだ。 それなのに、朱音は今、カナから目が離せない。 カナと目が合った。 ――「だからお姉ちゃんも、仲間に入れてって言ったの?」 ふと思い出したあの言葉。カナの目が、もう一度、同じ質問を投げかけ、その答えを求めているように見えた。 「カナちゃん……」 朱音の言葉で、男の子たちがカナへと視線を向けた。 カナは動いた。 男の子たちに近づくと、ポケットから見覚えのある紙片を取り出した。女の子が全裸大の字磔にされたイラストの描かれたものに間違いないだろう。 朱音がそれに気づいた時には、紙片は男の子たちの手に渡っていた。 「お姉ちゃんは、こんな風にされたいんだよ」 (つづく)
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