露出小説




   『OL佐伯みなみの野球拳狂想曲』

                              作;ベンジー

5.野球拳、第1回戦

 各部署とも、その日の業務を早めに終え、全社員が、忘年会会場となるホテルのパーティールームに集まっていた。
 200人は入る部屋だ。みなみの会社にはピッタリだった。
 会場には円卓が人数分用意され、料理とお酒で埋め尽くされていた。
 社長たち役員が座る上座の正面にはステージが設けられ、参加者4人の名前が書かれたトーナメント表と脱衣かごが4つ、用意されていた。
 有田の司会で忘年会が開会。社長の訓示、乾杯、歓談と進む。

「どれもこれも美味しそうね」

 フォークを取るみなみに、里奈は、

「食べ過ぎると、脱いだ時にお腹が出るわよ」

 すっかり覚悟はできているようだ。
 それにしても良く気が付くものだ。お腹が出ていたら、みっともないのは間違いない。そういう時間が、目の前に迫っていた。

「皆さま、お待たせしました。待ちに待った野球拳の時間です。参加者の方は、ステージ上にお集まりください」

 有田がマイクを握り、会場を盛り上げる。

「しゃーない。行くか」と威勢よく、里奈がみなみの手首を掴み、引っ張る。その手が汗ばんでいることに、みなみは気づいた。
 歩いて行く間に、一瞬だけ高瀬裕也と目が合った……気がした。

(高瀬さんも見たいのよね。私のハダカ……)

 今日のみなみは、裕也の目にどう映るのだろうか。

 ステージ袖の衝立に隠れ、ストッキングを脱ぐ。4人とも、いつもの制服姿。着衣は5枚だけ。それが今日のルールだった。
 拍手喝采の中、ステージに上がる野球拳参加者一同。元気よく大手を振る里奈。それに負けじと投げキッスを大判振る舞いの笠井麗子。大人の妖艶さを醸し出す西田課長。
 わかっていたことだが、みなみ一人だけ場違い感が否めない。

「ここで一つお知らせがあります。先日のアンケートですが、全女子社員の中で一人だけ、問2の回答でC全部に〇を付けた方がいるそうです。その一人が、この4人の中にいると良いのですが」

 一瞬、血の気の引く思いのみなみだったが、すぐに平静を装った。決して悟られるわけにはいかない。知っているのは、みなみと西田課長だけの筈だ。
 だが、会場の盛り上がりは尋常ではなかった。

「ウォー、マジぃ」
「それってヤバいじゃん。この場で全部脱いじゃうの」
「ねぇ、誰? 誰なのよー」
「この4人の中にいるのかなぁ」
「早く見てぇ」

 盛り上がりが一段落するのを待って、有田が宣言した。

「それでは第1回戦、第1試合を始めます。西田課長対笠井女史。果たして部下は上司を越えられるか。因縁の対決です。どうぞ盛大な拍手をお願いします」

 みなみと里奈はステージの隅に控え、西田課長と笠井女史が中央に立った。おなじみの野球拳音頭が流れ、ジャンケンバトルが始まる。

「アウト、セーフ、ヨヨイのヨイ」

 二人がどこまで脱ぐのか。みなみも気になるところだったが、勝負はあっけなく終わった。西田課長の4連勝。そこで笠井女史がギブアップ。バストを晒すことなく、第一試合は終了した。
 驚いたことに、笠井女史は制服の下に水着を着ていた。大胆な黄色のビキニだ。

「ヤダぁー。恥ずかしい」

 そう口では言っているが、たいして恥ずかしそうにも見えない。案外、みんなの前で水着姿を披露したかったのではないか。水着のままはしゃぎまくっている彼女を見ていると、そんな気がしてならなかった。

「続いて第2試合です。西條里奈 対 佐伯みなみ。こちらは宿命の同期対決です。どちらが勝つのでしょうね。こんなに近くで二人が脱いでいく様子を見られるなんて、私は幸せです」

 第一試合が一方的な展開になり、盛り上がりに欠けたせいか、みなみと里奈の対決に期待が集まっていた。
 ステージ上で向かい合うみなみと里奈。
 二人の足元には、それぞれの脱衣かごが置かれていた。どちらのかごが、先に一杯になるのだろうか。

「それではスタートです」

 とうとう野球拳が始まってしまった、それがみなみの本音だった。
 ジャンケンの勝ち負けなんて運任せだ。西田課長のように、一方的に勝つなんて、そうそうあるものではない。

「アウト、セーフ、ヨヨイのヨイ」

 みなみはグー、里奈はチョキ。みなみの勝ちだ。

「あーん、私から脱ぐのね」

 里奈は勢いよく制服の上着を脱ぎ捨て、脱衣かごに投げ捨てた。その潔さに観客たちは湧き上がる。

「いいぞ。里奈ちゃん」
「その調子で頼むよー。最後まで」
「みなみちゃんも負けないで」

 声援を受けた里奈は、ブラウス姿で手を振り、余裕の笑顔をアピールした。

「盛り上がってきましたね。さあ、ドンドンいきますよ」

 有田の合図で野球拳音頭が流れ始めた。
 初戦は勝てたものの、いつまでも続くわけがない。里奈にしたところで負け続ける気はないだろう。みなみの内心が絞めつけられていく。

「アウト、セーフ、ヨヨイのヨイ」

 みなみはパー、里奈はチョキ。里奈の勝ちだ。

 自分の手を見つめ、動きを止めるみなみ。
 負けてしまった。それはイコール、脱がなければならないと言うことだ。
 制服の上着を脱ぐくらい、普段なら何でもない。夏場は皆が脱いでいるし、この時期でも、掃除の際に脱ぐことはある。
 それなのに、みなみの手は動かない。
 ここに来て、里奈がなんであんなに勢いよく脱いだのか、初めて理解した。一度手が止まってしまったら、その後が、こんなにも辛くなるからだ。

「さあ、佐伯さんが脱ぐ番ですよ。さっさといきましょう。後がつかえてます」

 有田が、目配せして見せた。
 ――後がつかえてます……そうだ。まだこんなのは序の口。上着を脱ぐだけで躊躇してはいられない。

「みなみちゃん、頑張ってぇ」

 同じ部署の女子社員たちの声援にも後押しされ、みなみは上着を脱いでいく。
 みなみの脱衣かごにも上着が納まった。
 観客の歓声が一際大きくなる。みなみの脱衣を躊躇する仕草に、観客の好感度が爆上がりと言ったところか。

「いよいよ、ここからですよー。次に負けた方は……ああ、口には出せません。私はただ祈るばかりです」

 次の対戦は、みなみがグー、里奈がパー。里奈の勝ちだ。
 二連敗のみなみ。もう二度と勝てないのではないかと、気持ちが落ちていく。

「あら。もうギブアップかしら」

 対戦相手の里奈が煽りを入れて来る。
 軽く睨み返したみなみだが、さすがにここでギブアップは許して貰えないだろう。第一試合の笠井女史も、水着とは言え、スカートもブラウスも脱いだのだ。その重みが、みなみに圧し掛かってくる。

「さあ、どっちから脱ぐのかな」

 有田の言葉に、観客が沸く。

「スカート脱げぇー」
「ブラウスが先だぁー」
「良いから全部脱げぇー」

 言いたい放題である。
 明確な覚悟こそできていなかったみなみだが、こうなることはわかっていた。脱がないで終わる選択肢はないのだ。

「スカートから……に、します」

 そう宣言したみなみだが、観客には聞こえていなかったかもしれない。
 スカートのホックに手を掛けると、パーティールームが一瞬、ウソのように静まり返る。観客の視線がみなみの指先に集まっているのは明らかだった。

「ホントに脱ぐよ」
「あの佐伯さんが……信じられないかも」

 囁く声が聞こえてくる。里奈や笠井女史とは全くタイプの違うみなみだ。野球拳に参加すること自体、会場の誰もが半信半疑だったはずだ。そうした本音が、漏れ出していた。

(がんばれ、私!)

 スカートのホックを外し、ファスナーを下げる。ウエストにフィットしていた感触がなくなり、スカートが静かに床に落ちた。
 ブラウスの裾を下に引っ張るみなみだが、元々のサイズが短く、ショーツを隠し切るにはムリがある。

「白だぜ。白」
「佐伯さんは下着なんだ」
「俺、惚れちゃいそう」

 前に男子社員が言っていたことを意識しなかったと言えばウソになる。
 みなみは、この日のために、真っ白なブラジャーとショーツのセットを選んだ。鏡に映しておかしくないか確認していた。

(大丈夫よね。おかしくないよね)

 里奈はと見ると、何か言いたげにニヤニヤとしていた。

「さすがは佐伯さん。わかっていらっしゃる。ここはちょっと聞いてみましょう」有田はマイクをみなみに向けると「もしかして、上も白だったりしますか」

「えっ、は、はい。その、ブラも白……です」

 蚊の鳴くような声がマイクに拾われ、会場に流れる。みなみの所作の一つ一つが会場のボルテージを上げていた。

「上も白だとわかったところで、続けてまいりますよー」

 これで終わりではない。
 もう充分に恥ずかしい思いをしているみなみだったが、それでも野球拳は続いていく。

「アウト、セーフ、ヨヨイのヨイ」

 みなみはチョキ、里奈はパー。みなみの勝ちだ。

「あちゃー、負けちゃったよ」

 みなみとは対照的に、里奈は堂々とブラウスのボタンを外していく。上から脱ぐんだと思っている内に、里奈はブラウスを脱ぎ捨てた。
 現れたのは黒のビキニだ。里奈も水着を着ていたのだ。

「マジで下着なんて、みなみだけよ」

 それならそうと言ってくれれば良いのにと里奈を睨む。里奈は涼しい顔でブラウスを脱衣かごに放り込んだ。

「うおっ、里奈ちゃん、水着だぜ。ウエスト締まってるぅー」
「胸の谷間がたまらねぜ。顔を埋めてぇー」
「おヘソ。初めて見た」

 男子社員の歓声が大きくなる。肌の露出を一気に増やすことで、里奈は巻き返しを計ったのだろう。みなみの目にも抜群のスタイルだった。

「はい、はい。すごいことになって来ました。期待は高まるばかりです。次の対戦、行きますよー」

 有田と目が合った。その目は「ムリはするな」とも「早く全裸になれ」とも取れる目だ。どっちも本音なのだと思う。

(でも今は、少しだけ後者かな)

 みなみは、有田に微笑み掛けた。

 その後、勝負は一進一退。二人の脱衣かごには、同じように上着、ブラウス、スカートの3点が重なっていた。
 みなみも里奈も、残りはブラジャーとショーツのみ。水着である分、里奈の方が肌の露出は多かった。
 堂々と水着姿で手を振り、投げキッスまで飛ばす里奈と、下着姿で少しでも恥部を隠そうと両手の置き場にも困るみなみ。二人のどちらに視線が集まっていたことか。
 いずれにしても、次に負けた方がバストを晒すことになる。
 それは誰の目にも明白。会場のポルテージは、異様な程に盛り上がっていた。

「アウト、セーフ、ヨヨイのヨイ」

 みなみはチョキ、里奈もチョキ。あいこだ。
 会場から落胆の声が集まる。

「こういうこともあります。続けて参りましょう」となだめる有田。

「アウト、セーフ、ヨヨイのヨイ」

 また、あいこだった。
 その度に漏れるフーイング。だが、この流れは止まらない。その後も、5回、6回とあいこが続く。緊張感と共に、会場の苛立ちが膨らんでいった。
 正面の特等席で黙って見ていた社長が立ち上がる。

「有田君、あいこだったら、二人とも脱ぐことにしたらどうかね」

 無礼講だった忘年会に、突然、社長の号令が掛かり、会場が静けさに包まれた。
 その中、有田は、

「しかし社長、それはこの後……」
「良いからやりたまえ」

 社長が機嫌を害しているのは明白だった。
 あいこなら二人とも脱ぐなんて。
 どこまで脱がせたいのかと苛立ちを覚えながらも、せっかく盛り上がった場の空気を何とかしなければと、みなみでさえ思う。こういうところで如才ないのが里奈だった。

「それ良いです。さすが社長。そうしましょうよ。ねっ、有田係長」

 里奈が、フリーズしていた有田の二の腕を叩いた。
 会場のあちこちでヒソヒソ話が始まり、それが徐々に広がっていく。社長の機嫌を損ねてはいけない。里奈の意図は明白。有田も、この話に乗るしかなかった。

「わかりました。それでは続けます。あいこなら二人とも脱ぐ。良いですね」

 みなみが反対する余地もなく、次の勝負が始まった。
 社長も、やっと腰を下ろした。

「アウト、セーフ、ヨヨイのヨイ」

 みなみはグー、里奈はチョキ。みなみの勝ちだ。

「きゃあー、最悪。負けちゃった。里奈、脱ぎま〜す」

 社長にウインクをした里奈は、臆することなく、背中に両手を回す。

(えっ、マジで脱ぐの?)

 みなみじゃなくても、会場の全員がそう思ったことだろう。
 視線が里奈のバストに集まる。
 司会の有田も、この時ばかりは言葉を失くしていた。

「なーんちゃって。ごめんなさい。西條里奈、ここでギブアップで〜す」

 言うが早いか、里奈は、逃げ出すようにステージから消えていた。
 会場から落胆の声が漏れる。それだけ期待が大きかったと言うことだ。皆が里奈の乳房が零れる様を想像していたのだろう。
 社長のご機嫌も戻ったようだ。一時はどうなることかと思ったが、里奈の機転と勝負運に助けられた形だ。

「決着が付きました。第2試合は、佐伯みなみさんの勝ちです」

 有田がみなみの手首を掴み、高々と掲げて勝利宣言をした。みなみからしたら、それは恥ずかしい部位を隠す手段の一つを取り上げられることだった。里奈のように、ステージを駆け下りていれば良かったと後悔した。

「西條さんの、おっぱいが見られなかったのは残念ですが、次に期待しましょう」

 そう言う有田の目は、みなみの真っ白なブラジャーに向けられていた。
 すかさず反応する有田の部下たち。

「係長、イヤらしい。どこ見てんのよ」
「佐伯さんの手、いつまで握ってるの。早く離しなさい」

 会場からも「そうだ、そうだ」と言う声が上がっていた。一見、みなみを養護するように見えてはいるが、その実、早く次に進めと言っているに違いない。みなみの下着に隠れていない肌が、会場の視線に焼かれているようだった。

(つづく)



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