露出小説『露出っこクラブ〜佳織』 作;ベンジー 第3章 女子高生 四人の女子高生が、五階の女子トイレの前に集まっていた。 このフロアには、他に人の気配はなかった。この子たちさえ気づかずに帰ってくれれば、今頃、服を回収できていたはずだ。 それを思うと、悔やまれてならなかった。 佳織が、もう少し早くここに来ていたら……それは微妙な時間との戦いになっていただろう。女子高生たちが来る前に、用を済ませて立ち去ることができれば良いが、トイレの中で鉢合わせなんてことになれば、最悪だった。 いすれにしても、今、佳織の服は、彼女たちの手の中にあった。 四人の女子高生が、自転車のチェーン鍵で固定されたTシャツとスカートを、不思議そうに広げていた。 「ウッソー。これもあの女のだよねえ」 「うん、間違いないわ」 「それじゃオールヌードってこと?」 「中にはいなかったの」 「いないわよ」 「だって、ハダカでどこに行くのよ」 「何これ、鍵がかかっているじゃない」 「これじゃ服、着れないね」 「この鍵で開くんじゃないの」 「あれ、ダメみたい」 「鍵が合わないの」 「っていうかあ、全然違うみたいよ」 「ねえ、これどうなっているの」 「やっぱ、あの女、見つけるしかないよ」 この状態で「服を返して」と出ていくのは、非常に危険な行為に思えた。 好奇心旺盛の女子高生たちに今の姿を見られたら、何をされるかわかったものではない。だが、もし、このまま服を持って行かれてしまったら、手錠の鍵も付いているのだ。佳織一人では、どうにもならない。 「わかったわ。うん、きっとそうよ」 女子高生の一人が、両手をポンと鳴らした。佳織は、ドキッとして頭を低くした。ここにいるのが、ばれたのかと思った。 「えっ、何がわかったの」 「だからぁ、あの女って露出狂でしょ。あの女の服が、こういう状態で、ここにあるということはぁ……」 彼女は、佳織の服を、目の高さに持ち上げて、続けた。 「あの女は今、ハダカで鍵を取りに行っているのよ」 「ええっ、どこまでぇ」 「うん、でも、それなら全部、説明付く」 「だったらこの鍵は何?」 「何だろう。簡単な鍵よね」 「おもちゃの手錠に付いていたのに、似てるけど」 「あの女、手錠なんか付けてんのぉ。ますます変態じゃん」 「もう取りに来ないんじゃない」 「バカねえ。ハダカで帰れる訳ないでしょ。パンツも履いてないんだよ」 「だったら、そんなに遠くまで行けないよねえ」 「そうね。せいぜい、男子トイレくらいかな」 「入ってみようか。さっきから誰も出入りしてないし」 すべてバレてしまった。 「誰か、いますかぁ」 「変態女、いたら出てきなさーい」 女子高生たちの推理力に、感心している場合ではなかった。 今は、まだ男子トイレを気にしている彼女たちだが、いないとわかったら、次はこちらに来るかもしれない。 佳織は、逃げ出すしかなかった。 と言っても、行くところが、あるわけではない。結局、四階のトイレに戻る以外に、どうしようもない。 人がいるかどうかの確認もそこそこに、男子トイレに飛び込んだ。 誰もいなかったのは、幸運としか言いようがない。個室に入り、後ろ手で鍵を掛けると、洋式の便座に腰を下ろした。ついさっきオナ狂った場所だが、今は手錠付きの身である。何ができるということもない。女子高生たちに見つかる恐怖で、佳織の肌は冷えていた。 ただ、待つことだけが唯一だった。 あの男に助けを求めたら…… 佳織の頭に過ぎった。携帯電話は右手に握っているものの、後ろ手錠では、やはりメールを打つことができない。仮に、あの男がまだ近くにいたとしても、連絡することもできなかった。 佳織は、これから自分がどうなるのか、想像もできなかった。 女子高生たちに捕まるのが怖かった。 だが、もし彼女たちが五階の女子トイレで見張っていたら、服を取りに行った時点で捕まってしまう。取りに行かないとすれば、ハダカのまま、繁華街を歩いて帰るしかない。誰にも見つからないというわけには、いかないだろう。 運良く繁華街を駆け抜けることができたとしても、女子高生たちには、手錠の鍵も握られているのだ。家に戻っても、手錠を外すことができない。 どっちにしてもピンチだった。 佳織に残された道は、スーパーの店員に保護してもらうか、女子高生たちに捕まってひどい目に遭わされるしか、ないのかもしれない。 店員に保護されれば、あの男のことを説明するしかない。 それは、絶対にできない事情があった。そうでなければ、あの男の命令でこのような事態に陥ることもなかった。 やはり女子高生たちに捕まって、できるだけひどいことにならないように祈るしかないのだろうか。多少のことは、覚悟するしかないのだろうか。 佳織は、自分を捕まえた女子高生たちは、どうするつもりだろうと考えた。 さっきの会話のように、全裸のまま置き去りにされたり、一階のフロアに放り出されたりするのだろうか。 後ろ手に手錠をした佳織には、たいした抵抗もできない。 多少のことで済む保証もない。 相手は四人、彼女たちのなすがままだ。このまま、極限の羞恥を味合わされることになるのだろうか。 女子高生たちが、男友だちを呼ぶ可能性だってある。好きなようにレイプされて、その姿を笑いモノにされて、ビデオにも撮られて……佳織は、あの子たちが飽きるまで、奴隷のように扱われるのだろうか。 考えるのも恐ろしい妄想の一方で、佳織は、下半身に甘い痺れを感じた。 (そんなことって……) あの男にオナニーを命令された時もそうだった。 ついさっき、激しいオナニーに狂った時を思い出すように、女性自身が内側から熱くなってくる。こんなにひどい目に遭っているのに、体の反応は、気持ちと同調してはいなかった。 こんなことで感じるはずないのに、と思ってみても、女の源泉は、全く別の意志を示していた。 さっきと同じ場所に座っているから、身体が思い出しただけ。佳織はそう思った。 いや、思おうとした。 だが、身体は、佳織の意志を否定する。もどかしさが、体の奥からこみ上げる。 両手の自由が奪われていなかったら、佳織は、また、女の花芯をかき毟っていたかもしれない。 それすらも許されぬ身が、惨めさを募らせた。 (どうしたらいいの。こんなことしてる場合じゃないのに) 佳織は、女子高生たちから服を取り戻さなければならなかった。誰かに鍵を拾われる前に、エレベーターまで行かなければならなかった。 個室のドアを開けようと、腰を浮かした時、 「ねえ、ここじゃない」 女子高生の声が聞こえた。四階まで追いかけてきたのだ。 「個室に入ってたら、どうするのよ」 「まかせて。よじ登って上から中に入るから」 「そこまでする」 「もちよ。こんなチャンス滅多にないもの」 「だって、もうそんなに時間ないよ」 「ここにいなかったら、あきらめるわよ」 女子高生たちは、どうあったも佳織を見つけたいらしい。 (どうして、そんなに苛めるの?) 佳織の苦悩をあざ笑うかのように、複数の足音が近づいて来た。それもかなりの数である。あの女子高生たちだけではないのだろうか。 (もうダメ。終わりだわ) 恐ろしい妄想が現実のものになろうとしていた。 「あっと小便、小便」 「満タン、ピンチ」 男性の声だった。「えっ」と思う間もなく、それらの声でいっぱいになった。 「面白かったなあ」 「でも、ラストがイマイチだったんじゃないか」 「俺としては○○のセリフに感動したよ」 四階で上映中の映画が終わったのだろう。尿意を堪えていた観客たちが、一斉になだれ込んで来たようだ。これではさすがに女子高生たちも入って来られない。 それは、佳織にとっても、外に出られないということだ。 「入ってるよう」 個室のドアをノックする音が聞こえた。小用が一杯なので、個室で済ませようと考えたのだろう。佳織の心臓は、爆発しそうだった。 声に出して返事をするわけにはいかない。佳織は、横の壁板を後ろ手で叩いた。舌打ちするような音が聞こえたが、それきりだった。 何人くらいいるのだろう。 佳織は、板一枚隔てているとは言え、大勢の男性に囲まれていた。それも後ろ手に手錠をかけた丸裸である。生きた心地もせぬまま、息を潜めて、外が静かになるのを待った。 長い時間だった。 何一つ、まとまったことを考えられなかった。 人の気配がなくなり、暫く経って、ようやく冷静さを取り戻した。 女子高生たちは「そんなに時間がない」と言っていた。この男子トイレから、男性がいなくなるまで、待っているだろうか。 彼女たちにとっては、佳織が、ここにいるという確証もないはずだ。 佳織は、五階の女子トイレに、向かうと決めた。 四階は、人が多すぎる。 時間もない。エレベーターの中にある鍵も、五階の女子トイレにある衣服も、いつまで佳織を待っていてくれるだろうか。早くここから出なければと、気持ちが急く。 それでも、個室から出るには、勇気が必要だった。 何度やっても慣れることがない。佳織は、男子トイレの中を何度も確認しながら、首を出し、上半身を出し、全身を出していった。 トイレから出る時も同様である。ここに大勢の人が押し寄せたばかりなのだ。足を忍ばせながら階段へと向かった。 五階へと上る足取りは、さらに重くなった。フロアに女子高生たちが待ちぶせているかもしれないからだ。 ハイヒールのサンダルを置いてきた灰皿が見えた。見えたのは灰皿だけである。佳織の不安が急に強くなった。 女子高生たちがサンダルを持っていってしまったのか。 それとも別の誰かか。 いずれにしても、女子トイレの洗面台に置いて来た服もなくなっている可能性が高くなった。人影が見えないのを確認すると、佳織は、小走りになった。 中をちょっと覗いただけで、女子トイレに飛び込む。 不安は的中した。洗面台に置いておいた服はなくなっていた。 手錠の鍵らしいものも見当たらなかった。 悪い想像が、次々に浮かんで来た。そのどれもが、佳織を辱めるものだった。 どこかに隠してないか。 女子トイレの中を探そうとして、ふと、洗面台に目を戻す。一枚のメモ用紙が目に入った。かわいいイラストの入った紙で、手帳の一ページを破いたもののようだ。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 変態さんへ。 会えなくて残念だわ。 あなた、今どんな格好なのかしら。 服はさっきのプリクラの中よ。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 助かった……と思って良いのだろうか。 とりあえず、服のありかがわかったが、安堵している場合ではない。すぐに、女子高生たちの罠かもしれないと、思い当たった。 プリクラの周りに隠れていて、こんな姿で現れた佳織を笑おうとしているのではないか。 時間がないというのが本当なら、佳織を虐めることができなくなった腹いせかもしれない。ゲームコーナーの真ん中まで、恥ずかしい姿で来させようとしているのだ。 プリクラまで行くとなれば、トイレや階段とはわけが違う。 トイレの個室から出るだけでも必死の覚悟だった。階段を歩いている時の緊張感は、これまでに味わった覚えのないものだった。 それでも、殆ど人が来ない場所だったから、救われていたのだ。 今にして思えば、あの男は、見つかりにくい場所を選んでいたのかもしれない。フロアの真ん中に出るような命令は、なかった。 女子高生たちのほうが、余程、残酷だった。佳織の露出行為を、強制的にカミングアウトさせようと言うのか。 今の佳織は、一糸纏わぬ姿で両手の自由を奪われている。 こんな格好でフロアを歩くことなんて、できない。ちょっと前なら、トイレに隠れていることすら考えられなかった。 気持ちが乱れたままの佳織だが、やらなければならないことは、待ってくれない まずは、エレベーターの中の鍵を、確保しなければ。 ようやく、その事を思い出した。 四階と違って、五階ならエレベーターホールに出ても、人に見られる可能性は少ない。ボタンを押して、エレベーターがこの階に止まるのを、ここまで戻って待っていれば良い。 それなら、すぐに実行できると思った。 間もなくチンと音がなり、エレベーターが五階に着いた。誰か乗っていないか心配だったが、どうやら大丈夫みたいだ。 佳織は、エレベーターに乗り込んだ。 十人は乗れるだろうか。ごく普通の密閉型だった。昔のようにエレベーターガールがいたり、壁が素通しのガラスになっているタイプだったりではなくて、本当に良かった。 鍵は、すぐに見つかった。キーホルダーもなく、ただ無造作に転がっていた。何人かに踏まれたのか、足跡のような汚れが付いていた。誰にも拾われずにいたことは、ラッキーだった。 佳織は、お尻を付き、鍵を拾い上げる。 後ろ手錠では、これがまた一苦労だったが、鍵を掌に握ると、心の底から喜びが湧いて来た。小さな鍵に貰った勇気。これでプリクラまで服を取りに行けると思ったのも、束の間だった。佳織は、忘れていた現実を、突き付けられた。 エレベーターのドアが閉まり、下の階に向かって、動き出したのだ。 (つづく)
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