容子の場合
- [1] 容子 容子は一生、奴隷です
- 乳房を絞り出すような緊縛姿の上から、膝上までのハーフコートを一枚羽織っただけの姿で、私は室田に導かれるままエレベーターに乗り、最上階の一室にたどり着いた。
部屋は元々住居用のものを改装したのだろうか、キッチンなどは立派なものがあるが、部屋の仕切りなどはなく、廊下を抜けると生活感のないフローリングの、かなり広い部屋が広がっていた。 家具のたぐいはテレビぐらいで、そのかわり壁際や床の上に、裸体を晒したものと同じようなX字形の磔台や木馬、そして産婦人科の治療台を模した開脚台などが置かれ、その横の戸棚には無数のバイブレーターや、ローターなどが所狭しと並んでいた。 私は部屋に入ると同時に、室田によって縄尻を天井から垂れ下がる鎖に繋ぎ止められ、後ろ手のまま踵がやっとつく程度の、高さに吊り上げられている。 部屋にはすでに、鮫島、堀田、大井、「エロティカギャルズ」が来ており、今全員が床に腰を下ろし、吊り上げられた私に背中を向けて、室田が持参した私の、奴隷宣言を収めたビデオを凝視していた。 「私・・・・・・曽賀容子は・・・・・・」 誰一人、声を上げる者もいない静まり返った部屋の中に、私の淫らな言葉だけがテレビから流れ続ける。 私は自分の口から次々に出てくるあまりに淫らな言葉に、その縄にくびれた白い身体を、真っ赤に染めて切なそうに身体をくねらせた。 「マゾヒストの容子に厭らしい、ご命令をお与えください」 やがて、私の最後の挨拶が終わり、ビデオの再生が終わる。 私のあまりに変貌した姿に全員が呆気にとられる中、鮫島がゆっくり立ち上がって振り返った。 「ふふ、容子ちゃんは露出狂か、くっくっくっ」 鮫島は私達がやってくるまでに、「エロティカギャルズ」らと一戦交えていたのか、パンツ一枚の格好で出張った腹を揺らしている。 「ああ、いや」 中年男の厭らしさを凝縮したような、鮫島の笑顔を見た私は慌てて、目をそらして顔を伏せる。 「なんだ、その態度は」 鮫島は、横を向いた私の太腿の辺りを平手で叩きながら、そう言って空いている方の手で、私の顎を持ち、無理矢理自分の方を向かせた。 「ああ・・・・・・」 「ほれ、さっき言っていたことを、もう一度言ってみろ。私は鮫島先生の奴隷です、とな」 顎を掴まれたまま、鮫島にそう怒鳴りつけられ、私はさも哀しげな瞳を、鮫島の背後に立つ室田に向ける。 その視線を感じた室田が、ゆっくりと首を縦に振るのを確認した私は、しっとりと潤んだその切れ長の瞳を鮫島に向けて、 「ああ、私は・・・・・・容子は一生、鮫島先生の奴隷です」 と言って、再び顔を伏せた。
- [2] ベンジー
- ハーフコートは着せて貰えたのだね。
わたしはまた「露出狂にコートは不要だ」とか言われて、全裸緊縛姿でエレベーターに乗せられるのかと思ったよ。 連れて行かれた部屋はSMクラブさながらの造りになっていたのだね。 容子も早速吊られてしまったか。 そんな姿で自分が奴隷宣言したビデオを公開されたのは、どんなに恥ずかしかったことか。 鮫島の姿を見て思わず口にしてしまった言葉も不興を買ったようだ。 さて、どんな仕打ちが待っているのかな。
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