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fld_nor.gif 『転生少女ミリアの冒険』
投稿日 : 2025/06/15(Sun) 05:02
投稿者 ベンジー
参照先 http://www.benjee.org
『転生少女ミリアの冒険』の本文です。

ちょっと長いです。
掲示板の仕様上、下から上に読み上げる形になっています。
ちょっと読みづらいかもしれませんが、
エッチな要素を挟みつつ、割と本格的なファンジー物になっていると思います。
最後までお付き合い頂ければ幸いです。
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1234>
件名 最終話「また会う日まで、勇者さま!」
投稿日 : 2025/06/26(Thu) 05:26
投稿者 ベンジー
参照先 http://www.benjee.org
最終話「また会う日まで、勇者さま!」

「――ミリアさん!」

薄れゆく空の彼方から、誰かの声が聞こえた。耳の奥に残る優しい呼びかけ。それにミリアは微笑みながら、指先を伸ばす。

「バカだなあ、あたし……勇者のこと、けっこう好きになってたんだよね」

フィーフィが慌ててミリアの頭上を飛び回る。絶対防御結界を張りっぱなしにしたまま、泣きそうな声で叫んだ。

「お願い、ミリア! あとちょっとで、元の場所に戻れるんだから!」

「うん、わかってるよ。でも、ちゃんとバイバイって言わないと……あたし、未練タラタラになっちゃいそうだから」

ミリアの視線の先、そこには、瓦礫の中から必死に立ち上がろうとする勇者――レオナルド・ヴァレンシュタインの姿があった。血に染まったマント、折れた剣、傷だらけの顔……それでも、彼はミリアの名を呼び続けている。

「さよなら、レオくん! あたし、また違う世界でイチャイチャできるように、がんばるからさっ!」

天使のような笑顔で、ミリアは手を振る。

その瞬間、世界の中心にひび割れが走った。ミリアの背後に現れる、黄金色の魔法陣。空間を断ち割るように、眩しい光が彼女を包み込む。

「ちょ、まってぇええ!! お別れ前にもう一回くらいお色気イベントやらせてええええっ!!」

最後までブレないミリアに、フィーフィがツッコミを入れながら一緒に光の中へ消えていく――

---

世界は、静けさを取り戻していた。
魔王軍は壊滅し、異界の裂け目は閉じた。

勇者レオナルドは、傷ついた身体を引きずりながら、その場所に立ち尽くす。

「また……会えるのか?」

空に問いかけるように呟いたそのとき、どこからか、軽快な声が聞こえてきた。

『ちょっとそこの美形勇者くーん! あたしがいなくて寂しかったでしょ?』

「……!」

振り返っても誰もいない。でも、たしかに、あの声が聞こえた。

レオはそっと笑った。そして、自分の胸の奥を優しく叩く。

「……うるさい女だったな」

そう言って、空を見上げる。そこには、どこまでも広がる青空――

---

### エピローグ「そしてまた、どこかの世界で」

どこかの世界、どこかの村。

「ふぁあああ……お腹すいた~。フィーフィ、次のクエストは~?」

「ええと、山の奥にいる触手モンスターの討伐で――」

「それ絶対お色気イベントじゃん!」

「やめなさーいっ!!」

今日も元気な転生少女・ミリアの冒険は――まだまだ続く!

\To Be Continued?/

---
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件名 第三十八話「ふたりの転生者」**
投稿日 : 2025/06/26(Thu) 05:25
投稿者 ベンジー
参照先 http://www.benjee.org
第三十八話「ふたりの転生者」**

「あんたも転生者って、どゆこと!? しかも魔王になってるし!? え!? 転生者が魔王になってもいいの!? ズルくない!?」

「お前が勇者っぽい行動してるのも同じことだろう……」

魔王の声には、どこか諦めと苦笑が混じっていた。

静かに、魔王は語りはじめた。

かつての名前は「斉藤 創(さいとう はじめ)」。

現代日本に生きる平凡な青年だったという。

「……あの世界で、誰からも期待されず、ただ“無”のように生きてた。ある日、目が覚めたらこの世界で……“勇者として選ばれなかった者”だった」

ミリアはじっと耳を傾ける。

「でも、俺は気づいた。この世界にも矛盾や不平等はある。『正義の側』に立つことが、必ずしも人々を救うことじゃないってな。だから、俺は“魔王”を選んだ」

「うわ……なんか厨二すぎて、ちょっとカッコいいじゃん……」
ぽそっと呟くミリアに、クラウディアが肘で小突く。

「真面目な話してる時に茶化さないで」

「ごめんってば!」

それでも、空気は重たくならなかった。

魔王(斉藤)は、ミリアの顔をしっかりと見据えて言った。

「お前は、どうする。俺を倒せば、“正義”は勝つかもしれない。でも、それだけじゃ何も変わらないぞ?」

ミリアは、口を噤んだ。

フィーフィがそっと肩に降りる。

「ミリア……あのね。ひとつだけ、まだ伝えてないことがあるの」

「え?」

「ミリアの“チートスキル”のこと。本当に、ずっと……忘れてて……」

「おい。忘れてたんかいッ!!?」

恒例のツッコミとともに、空気が和らぐ。

「その力はね……“自分で選んだ結末に、世界を上書きできる”っていう能力」

「えっ、それって――チートっていうか、ズルすぎない!? 世界の脚本家じゃん!」

「でも、発動するには、たった一度きり。“絶対に自分が信じる未来”を選ばなきゃいけない」

ミリアは目を閉じた。思い返すのは、クラウディアとの旅。フィーフィとの出会い。ギルド。勇者レオナルド。
この世界で過ごした、たくさんの「楽しい」「くだらない」「でも大切な」日々。

そして――

「うん、決めた!」

ぱっと目を開けたミリアが、にかっと笑う。

「この世界、魔王がいるからヤバいって言うけど、あんたが魔王なら――そんなに悪くないかもって思えた!」

「……何?」

「だったら、倒すんじゃなくて、共に世界を変えようよ!」

空に一筋の光が差し込んだ。

その光がミリアの手から溢れ、空中に魔法陣を描く。

世界の書き換えが、始まる。

「いっけぇえええええええええええっ!! 《スーパーウルトラ世界再構成☆ミリア式Ver.1.0》!!」

「なにその魔法名ッ!?」

「わたしが名付けた!」

叫びと共に、世界は、光に包まれた――。

---

次回、**最終話!**
ミリアが選んだ未来、その結末とは!?
そして、すべてが終わった後の「日常」へと――!
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件名 第三十七話「終焉と再生――ミリアの選択」**
投稿日 : 2025/06/26(Thu) 05:23
投稿者 ベンジー
参照先 http://www.benjee.org
第三十七話「終焉と再生――ミリアの選択」**

空が割れる。大地が軋む。

魔王とミリアの力の衝突は、周囲の風景すら塗り替えていた。

魔王の放つ漆黒の力が、まるで世界の意志をねじ伏せるように広がり、ミリアは光翼を翻してその全てを受け止めていた。

「――っ、くぅ! やばっ……ちょっと想像以上に強すぎ!」

「ミリア! 無理しないで! フィーフィの防御を最大にするから――!」

フィーフィの結界が再び展開される。だが、その光すら魔王の闇に押され始めていた。

「そう、これが……この世界の“闇”そのものだ」

魔王が低く呟く。

「お前が愛したというこの世界には、欺瞞、差別、欲望、戦争、そして絶望が満ちている……! それでも――それでも守るというのか?」

「当然っ!」

ミリアが叫ぶ。その声に、力が宿る。

「わたし、知ってるよ。この世界に“ダメなところ”があるって。でも、だからって全部壊していい理由になんてならないよ!」

彼女の手に、光の剣が形成される。前世の妄想がそのまま具現化されたような、異世界の神器――名前はもちろん……

「《エクス☆カリバーン・オブ・ラグナロク∞(無限)》!!」
(※命名:厨二脳100%)

「うわ、名前長すぎて笑うしかないわ……」
クラウディアが絶句。

「いっけぇえええええええっ!!」

ミリアが跳ぶ。

魔王も迎撃する。

剣と爪がぶつかり、光と闇が弾ける。

――だが、その瞬間、ミリアの胸に何かが走った。

(あれ……なんか、懐かしい……?)

魔王の顔が、どこかで見たような……いや、知らないはずの感情が、湧き上がる。

(この感じ……まさか)

ミリアは、斬撃を止めた。

「ちょっと待って! あなた、本当に“魔王”なの?」

魔王の瞳が揺れる。

「……気づいたか。いや、そうだな……“思い出した”と言うべきか」

魔王の姿が、ほんの少し変化する。

角が折れ、禍々しさがやわらぎ、どこか人間に近い姿へ――

「私は……お前と同じ“転生者”だ」

「えええええええええええええ!?!?!?」

ミリアの絶叫が空に響いた。

---
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件名 第三十六話「魔王、全力解放!ミリアの厨二バトルが止まらない!」**
投稿日 : 2025/06/26(Thu) 05:22
投稿者 ベンジー
参照先 http://www.benjee.org
第三十六話「魔王、全力解放!ミリアの厨二バトルが止まらない!」**

空間が軋む。世界の法則が捻じ曲がる。

ミリアの身体を包んだ光が弾け、そこに立っていたのは、もはや“ただの少女”ではなかった。

黒と白が交差するバトルスーツ風の衣装(※ビキニアーマーに変形可能)、背中からは謎の光翼、瞳は金と赤のオッドアイに。

「ちょっ……誰この美少女!?わたし!? いや、わたしだけど!? 厨二病ど真ん中なんですけどーーーッ!?」

「ミリア、それが……あなたのチートスキル!?」
クラウディアが思わず息をのむ。

「うんっ、どうやら“世界境界越え(ワールド・クロスオーバー)”っていうらしい! 転生者が、本来の世界の力を一時的に引っ張ってこれる、超チート能力!!」

「しかもわたし、フィーフィがうっかり伝え忘れてたから、ずっと気づいてなかったっていう……!」

「ご、ごめーん……ついうっかり……」
フィーフィがしょんぼり浮かんでいる。

「気にしてないよ! むしろ今までノースキルで無双してたって、自信になるし!」

ミリアはニッと笑い、前に出る。

魔王の顔に浮かぶのは、警戒――そして、興味。

「なるほど……これが“鍵”の真の姿か」

「鍵って言い方やめて? 自分が超重要人物みたいでゾクゾクするからっ!!」

そして、戦いは始まった。

魔王が放つ漆黒の波動が、空間を裂きながら突き進む。

ミリアは宙を滑るように回避しながら、片手で魔法陣を描き――

「いっけぇ、厨二必殺奥義その1――《星穿つ閃光(シューティング・ルミナス)》!」

天から降り注ぐ光の槍が、魔王に突き刺さる。

だが魔王もただでは済まない。闇を纏った翼を広げ、空を裂く咆哮を放つ。

「ッ!!」

その攻撃を、フィーフィの防御結界が防ぐ。

「ナイス、フィーフィ!」

「任せて! でもミリア、くれぐれも“余裕こいてピンチ演出”とかしすぎないでね!?」

「うっ……バレてる!? だ、だって盛り上がるじゃんっ!」

「盛り上がってる場合じゃないわよ!!」
クラウディアが怒鳴る。

ミリアは笑った。

「……でもね、これだけは本気で言えるよ」

彼女は魔王を真正面から見据える。

「わたし、この世界が大好き。フィーフィも、クラウディアも、みんな大切なの。だから――あなたを倒して、ちゃんと終わらせたい」

魔王の瞳が細められる。静かに、戦いの結末を見据えるように。

「ならば、我も応えよう。全てを懸けて――」

「最終決戦、開始ッ!!」

爆発するように、光と闇が交差する!

(つづく)

---
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件名 第三十五話 今、この世界のルールを超え、ミリアが「本気」を解放する――。
投稿日 : 2025/06/26(Thu) 05:21
投稿者 ベンジー
参照先 http://www.benjee.org
第三十五話 今、この世界のルールを超え、ミリアが「本気」を解放する――。


魔王城――。

黒曜石で築かれたその城は、まるで闇そのものが形を成したようだった。空は血のように赤く染まり、雷が縦横無尽に走る。魔力の圧が大気を押しつぶし、ただ立っているだけでも正気を削ってくるような感覚。

しかし、その中に、ただ一人だけ、やけに元気な少女がいた。

「うわーっ、すっごいラスボス感!うっかり転生モノの最終回っぽいよね!」

「……これが、ミリアが言う“緊張感のない状況”ってやつなのね……」
クラウディアは眉間に深いしわを寄せている。

「でも、気を引き締めなきゃダメだよ。魔王ってこの世界の秩序そのものに関わる存在だし、油断してると――」

「はーい、了解でーす!とりあえず、ビキニアーマー装備してから行くね♪」

「なんでよっ!?!?!?!?」

ふざけているようで、ミリアの気配には確かに殺気が混じっていた。

魔王城の玉座の間。

そこに、彼はいた。

黒と紅のローブをまとい、仮面で顔を隠した長身の男。静かに、しかし威圧感に満ちて、ミリアたちを迎えた。

「ようこそ、ミリア・オルティナ。この世界の異物よ」

「えっ、異物って言われた!? ショック!!でもちょっと嬉しいっ!!」

「……お前がこの世界の因果を乱している。すべては、お前を“ここに来させた存在”の計画通り……」

「なんかよくある展開来たー!!陰謀!?黒幕!?わたし実は鍵だったとか!?」

魔王の瞳がわずかに揺れる。

「……だが。お前が“この世界を選んだ”というのなら、我も全力を持って迎えよう。異世界の少女よ」

「うん。いいよ、全力で遊ぼう? こっちも、全力でいくから!」

ミリアの背後に、クラウディアが剣を構え、フィーフィが防御結界を展開する。

「魔王戦――開幕っ!!」

次の瞬間、空間がねじれ、魔王が放った闇の刃が三人を襲った。

だが、それを包んだのはフィーフィの絶対防御結界。

「いけるよ、ミリア!」

「もちろん!フィーフィ、クラウディア、よろしく!」

ミリアの身体が、まばゆい光に包まれる。

“世界境界越え(ワールド・クロスオーバー)”

今、この世界のルールを超え、ミリアが「本気」を解放する――。

(つづく)

---
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件名 第三十四話 「魔王、爆誕!?ミリア、全力でおふざけモード突入!」**
投稿日 : 2025/06/26(Thu) 05:20
投稿者 ベンジー
参照先 http://www.benjee.org
第三十四話 「魔王、爆誕!?ミリア、全力でおふざけモード突入!」**

魔王城――。

黒曜石で築かれたその城は、まるで闇そのものが形を成したようだった。空は血のように赤く染まり、雷が縦横無尽に走る。魔力の圧が大気を押しつぶし、ただ立っているだけでも正気を削ってくるような感覚。

しかし、その中に、ただ一人だけ、やけに元気な少女がいた。

「うわーっ、すっごいラスボス感!うっかり転生モノの最終回っぽいよね!」

「……これが、ミリアが言う“緊張感のない状況”ってやつなのね……」
クラウディアは眉間に深いしわを寄せている。

「でも、気を引き締めなきゃダメだよ。魔王ってこの世界の秩序そのものに関わる存在だし、油断してると――」

「はーい、了解でーす!とりあえず、ビキニアーマー装備してから行くね♪」

「なんでよっ!?!?!?!?」

ふざけているようで、ミリアの気配には確かに殺気が混じっていた。

魔王城の玉座の間。

そこに、彼はいた。

黒と紅のローブをまとい、仮面で顔を隠した長身の男。静かに、しかし威圧感に満ちて、ミリアたちを迎えた。

「ようこそ、ミリア・オルティナ。この世界の異物よ」

「えっ、異物って言われた!? ショック!!でもちょっと嬉しいっ!!」

「……お前がこの世界の因果を乱している。すべては、お前を“ここに来させた存在”の計画通り……」

「なんかよくある展開来たー!!陰謀!?黒幕!?わたし実は鍵だったとか!?」

魔王の瞳がわずかに揺れる。

「……だが。お前が“この世界を選んだ”というのなら、我も全力を持って迎えよう。異世界の少女よ」

「うん。いいよ、全力で遊ぼう? こっちも、全力でいくから!」

ミリアの背後に、クラウディアが剣を構え、フィーフィが防御結界を展開する。

「魔王戦――開幕っ!!」

次の瞬間、空間がねじれ、魔王が放った闇の刃が三人を襲った。

だが、それを包んだのはフィーフィの絶対防御結界。

「いけるよ、ミリア!」

「もちろん!フィーフィ、クラウディア、よろしく!」

ミリアの身体が、まばゆい光に包まれる。

“世界境界越え(ワールド・クロスオーバー)”

今、この世界のルールを超え、ミリアが「本気」を解放する――。

(つづく)
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件名 第三十三話 「このチート、代償アリ。でも、それがどうしたっての!」
投稿日 : 2025/06/26(Thu) 05:19
投稿者 ベンジー
参照先 http://www.benjee.org
第三十三話 「このチート、代償アリ。でも、それがどうしたっての!」

魔王軍の本拠地へと続く黒の渓谷――。その入口に、ミリアたちは立っていた。

「うわぁ……。まさに最終決戦の舞台って感じ!」

黒い岩肌は裂け、底知れぬ瘴気が谷底から立ちのぼる。空気は重く、息を吸うたびに魔力の圧が胸に響く。

「もう戻れませんわよ、ミリア」
クラウディアは剣の柄を握り締めながら、真っ直ぐ前を見て言った。

「うん。でも、なんかワクワクしてるかも!」

その笑顔は、かつての能天気さとは少し違う。
好奇心と、覚悟。背負うものの重さを知ってなお、前に進もうとする力。

「ここに来て成長したわね、ミリア」
フィーフィがぽつりとつぶやいた。
その表情には、少しの寂しさと、誇らしさ。

「……あのね。さっき、やっと思い出したんだけど」

「ん? なにを?」

「ミリアのチートスキルの話。ずっと言おうと思ってて……忘れてたの」

「はァ!? 今さら!?!?」

「ごめんごめんっ! でも、ちゃんと説明するね」

フィーフィが小さな手をひろげると、淡い光が渓谷の入り口を包んだ。

「ミリアのスキルは――“世界境界越え(ワールド・クロスオーバー)”。」

「……なにそれ。厨二病っぽくて好き」

「簡単に言えば、“この世界のルールを無視できる力”。魔法、物理法則、運命、因果……全部、部分的にねじ曲げられるの」

「うわっ、めっちゃチートじゃん!? というか、今までどうやってたの!?」

「ミリアがそれを“無自覚に使ってた”からよ。攻撃が効かないのも、変な妄想が現実になるのも、そのせい」

「なるほどー! じゃあ、わたしが“触手に捕まりたい”って思ったとき、触手がノリノリだったのも……」

「……たぶん、そう」

「……チートすぎない!?(でも最高!)」

「でも、代償があるの」
フィーフィの声は、すこしだけかすれていた。

「代償?」

「この力を使いすぎると、ミリアの“存在”がこの世界からはみ出すの。つまり、どこにも属さない存在になる」

「……なにそれ。消えちゃうってこと?」

「ううん。消えはしない。でも、“どこにも居場所がなくなる”の」

しんと静まる空気の中、ミリアは小さく笑った。

「そっか。でも、大丈夫だよ」

「え……?」

「フィーフィも、クラウディアも、みんなが居てくれるし。わたし、どこにいても“ここにいた”って胸張れるからさ!」

ふわりと、フィーフィが涙をこぼした。

「――行こう。ラスボスのとこへ!」

渓谷を越えた先に、魔王城の影が揺れていた。

(つづく)

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件名 第三十二話 ―運命の夜、語られる真実―
投稿日 : 2025/06/26(Thu) 05:18
投稿者 ベンジー
参照先 http://www.benjee.org
第三十二話 ―運命の夜、語られる真実―

ぱち、ぱち、と焚き火が静かに音を立てていた。

森の小さな開けた空間に、ミリア、クラウディア、フィーフィ、そして勇者レオナルドが輪になって座っている。空はすっかり夜の帳に包まれていた。

ミリアは膝を抱えながら、少しだけ視線を上に向けた。

「で? 私のチートって、なんだったの?」

レオナルドは焚き火の光に照らされた静かな目をミリアに向けた。

「君の力は、“存在の再定義”だ」

「……はい?」

ミリアが一瞬でフリーズした。

「もっとわかりやすく言うと……“自分の状態を、意識で書き換えられる”能力だ」

「ちょっと待って。チートの名前、なんか難しすぎない? “リナ=リビルド”とか、そういうのじゃないの?」

フィーフィが小さく手を挙げる。

「えーっと、つまりね、たとえば“私は怪我してない”って思えば、実際に怪我が消えるし、“絶対勝てる”って思えば、その瞬間だけ勝てる力が湧いてくる、みたいな……」

「え、それってめっちゃ強くない!?」

「だから、チートだって言ったじゃん……最初から」

「うっそ、フィーフィ。そんな大事なことを……」

「……忘れてた☆」

ミリアが頭を抱えた。

「忘れ癖、なんとかして……でもまあ、なるほど。だから、私、素でモンスターぶっ倒せたのか」

「ただし」レオナルドが言葉を継ぐ。「その力には、“意識の代償”がある」

「代償……?」

「“意識”が現実を書き換える代わりに、君の“心”にも負荷がかかる。過剰な使用は、自己の崩壊を招く」

クラウディアが息をのんだ。

「つまり……?」

「自分のことを“最強”と強く思い込むたびに、君の心は本当に“最強の存在”として再構成されていく。気づかないうちに、“普通の女の子の自分”を失ってしまうかもしれないんだ」

しばしの沈黙。

ミリアは焚き火を見つめながら、小さく呟いた。

「……そっか。でも」

「でも?」

「――ちょっとカッコよくない!? なにその“力に溺れて暴走する未来”感! 厨二心、超くすぐる!」

「そこ!?!?」

フィーフィが転げ落ち、クラウディアは額を押さえ、レオナルドは小さく笑った。

「君は本当に……この世界にとって異質で、希望だ」

「ふふん♪ じゃあ、私が心を失わない程度に、世界を救ってみせましょうか!」

「ま、どうせ妄想が元で暴走するような子ですし。今さら崩壊したところで、私たちは気づかないかもしれませんわね」

「え、それ褒めてる?」

「もちろん、皮肉です」

夜空の星が、焚き火の周りを優しく包んでいた。

そしてその時、フィーフィがぽつりと呟いた。

「ミリア……もしかしてもう、少しだけ変わり始めてるのかもね。無自覚なまま、少しずつ」

誰もが黙る中、ミリアだけが楽しげに笑っていた。

「なーに、今までも、これからも! 私は私だもん! ねっ?」

その無邪気な笑顔が、どこまでも輝いていた――。

---
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件名 第三十一話 ―代償と再会、そして運命の胎動―
投稿日 : 2025/06/26(Thu) 05:17
投稿者 ベンジー
参照先 http://www.benjee.org
第三十一話 ―代償と再会、そして運命の胎動―

「……で、代償って、何?」

戦いが終わり、荒れ果てた森に沈む夕日を背に、ミリアは気楽な声で問いかけた。

フィーフィは小さな羽根をぱたぱたと動かしながら、そっと目を逸らす。

「えっと……うん……それがね……」

「うん?」

「忘れてた……」

「またかーっ!!」

森にミリアの叫びがこだました。

「ご、ごめんごめん! ほんとに! ちょっと前に“あっ! そういえば!”って思い出したんだけど、マレヴァさんとの戦いでテンパってて……」

「え、じゃあ、私……何か重大なモノを失ってたりする?」

「たぶん……ない、と思う……たぶん……」

「絶対あるやつじゃーん!!」

クラウディアは呆れ顔で腕を組みながら、それでも心配そうにミリアを見ていた。

「まあ……今のところ、異常はないようですけれど。体に違和感は?」

「ないねぇ。ちょっとテンション上がりすぎて喉が渇いてるくらい?」

「それは……異常じゃなくて、ただの元気バカですね」

「おお、褒められた! さすがクラウディア!」

「褒めてません!」

そんなやり取りをしていると、森の奥から蹄の音が聞こえてきた。

「誰か来る……馬だわ」

クラウディアが手を剣にかける。

現れたのは、一騎の白馬に乗った青年――銀色の鎧に身を包み、まばゆい金髪を風になびかせる、まさに絵に描いたような“勇者”だった。

「――やはり、君だったか。ミリア」

ミリアの目がキラーンと輝く。

「きたっ!! イケメン!!」

「名前を覚えていないのか……?」

勇者、**レオナルド=ヴァレンシュタイン**は、若干困ったような微笑を浮かべた。

「ごめん、見た目のインパクトが強すぎて! でも大丈夫、これからいっぱい名前呼ぶから!」

「呼ばれ慣れていないので、優しくお願いします」

「くぅ〜! なんかその落ち着き、ズルい! 一度でいいから『フン、貴様ごときが!』とか言ってみて!」

「……言う意味がないだろう?」

「そこがイイのッ!!」

フィーフィがぽつりと呟く。

「……これは長くなりそうね」

レオナルドが馬を降り、静かにミリアたちの前に立つ。

「君の力が覚醒したのは、偶然ではない。世界が動き始めている。……そろそろ、語るべき時だと思って来たんだ」

その真剣な眼差しに、ミリアも少しだけ――ほんの少しだけ、表情を引き締めた。

「そっか。じゃあ、話してよ。私が、この世界でどんなポジションなのか」

「……そして、“代償”とは何なのかも」

火が灯り、焚き火の音が夜の静けさに響き始めた。

静かに始まる、真実の語り。

次回――**ミリアのチートスキル、そして“代償”の真相が明らかに!?**

---
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件名 第三十話(続き)―幻想拳・第二形態、炸裂!マレヴァとの決着―
投稿日 : 2025/06/26(Thu) 05:16
投稿者 ベンジー
参照先 http://www.benjee.org
第三十話(続き)―幻想拳・第二形態、炸裂!マレヴァとの決着―

「異界適応:幻想拳・第二形態――バグる寸前!!」

ミリアの拳が光を帯び、空間が歪んだ。まるで現実そのものがミリアの“設定”に引っ張られるかのように、空気がピリピリと震える。

「これが私の……厨二の極致っ!」

「ふざけた力ね……けれど、その力が暴走すれば――!」

マレヴァが身を翻し、今度は宙に舞い上がる。空中で手をかざし、禍々しい魔法陣が次々に展開されていく。

「【終焉の連鎖(デスペラード・リンク)】!」

次の瞬間、黒紫の魔弾が無数に放たれた。まるで雨のように降り注ぐ破滅の魔力。ミリアの周囲が一気に闇に染まる――!

「ふっふっふ……今の私は無敵。さぁ、行けっ! 厨二バリアッ!!」

「名前で発動すんの!?」

フィーフィが絶叫した瞬間、バシュンッと金色の結界が展開。魔弾の雨を一斉に弾き返した。

「な、なに!? 私の魔法がっ……効かない……?」

「説明しよう!」ミリアがなぜかポーズを決める。「この結界、見た目はフィーフィのやつだけど、実は私の“自己都合妄想”によって三割増しに強化されているのだ!」

「ちょ、そんな勝手に――」

「てことで、そろそろ反撃いっくよおおおおおっ!!」

ミリアが地面を蹴った。

速度は音速を超え、衝撃波が地を割る。その拳が、一直線にマレヴァへと突き刺さる――!

「幻想拳、第二形態・究極奥義!!《世界が私を主人公にしている》ッ!!」

ドカァアアアアンッ!!

眩い閃光と共に、マレヴァの周囲が一瞬で吹き飛んだ。魔力の渦が崩壊し、空間が震え、そして……静寂が訪れる。

「ぐっ……ふ、ふふ……見事よ、ミリア」

瓦礫の中で、マレヴァが膝をつく。だが、どこか満足そうな表情を浮かべていた。

「あなたこそ、異世界に選ばれし者……この私を、真正面から破った初めての相手……」

「へへっ、やった! あ、でも服ビリビリになってないなぁ。ちょっと残念」

「なぜそこを気にする!?」

クラウディアの鋭いツッコミが炸裂する中、マレヴァが力尽きて崩れ落ちる。

――こうして、魔王軍幹部マレヴァとの死闘は幕を閉じた。

だが、それはまだ始まりにすぎない。

「フィーフィ、なんか今、世界の法則が揺らいでる感じしなかった?」

「う、うん……正直、今のでミリアちゃんの“チート能力”が覚醒しちゃったかもしれない……!」

「え、今ので? うわ、やったー! 無敵モード突入じゃん!」

「その代わり、“代償”もあるって言ってたけど……大丈夫、かな?」

「だいじょーぶ、だいじょーぶっ! そんなもん、都合よく無視すればいいんだよ!」

……都合よく、はたして済むのかどうか。

次回、**ついに勇者レオナルド=ヴァレンシュタインと再会!?**
そして、“世界の綻び”に迫る者たちが、静かに動き始める――!

---
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