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奈緒先生の場合(パート6)


           原案:奈緒子、ベンジー  作:TEKE・TEKE


「奈緒の恥ずかしいオナニーをもっと見てください!奈緒をもっと気持ちよくしてください!」
私が発したとんでもない声で、伊藤先生はフリーズした。しばし見詰め合う私と伊藤先生。そして私は激しく気をやりながら失神した。

気がつくと走る車の中だった。伊藤先生の上着がかけられている。
「気がつきましたか?」
「・・・はい」
「いきなりあんな現場に遭遇して驚きました」
「・・・」
「今は適当に走っていますが、家まで送ります。どこですか?」
「・・・」
「よかったら訳を話してもらえませんか?それとも話したくないですか?」
「・・・どこか落ち着いて話せるところへお願いします」
やっとそれだけを言った。
伊藤先生はちょっと考えていたが、目の前の交差点を左折した。
停車したのは、あのすべての発端となった丸山公園の駐車場だった。
夏は来園者が多いので有料だが、季節はずれの今は無料開放されている。
なかなか口を開かない私に代わって、伊藤先生が話し始めた。
「あのコンビニの店員は気がききます。奈緒先生が入ってきてすぐに防犯カメラの録画を止めたそうです。店員にお金を渡して、どこまで有効かどうかはわかりませんが、一応あの店にいた全員への口止めを頼みました・・・」
 涙が溢れてきた。私はなんということをしていたのだろう。
「ご迷惑をかけて申し訳ありません」
 私はこの丸山公園で全裸ラジオ体操を目撃されたことから、秘密倶楽部のこと、
野球部高校生との事、今回のコンビニ露出まで全てを伊藤先生に話した。
「僕を秘密倶楽部に巻き込むつもりだったのですか・・・」
「ごめんなさい」
「しかし松本君もまだまだ子供ですね。その程度で大人を言いなりにしようだなんて。そんなに大人は甘くないですよ」
「・・・」
「それで、奈緒先生はこれからどうするつもりですか?このまま生徒達との関係を続けるのですか?それとも僕と結婚しますか?」
「結婚なんて全く考えていません。でも生徒達と関係を続けるのも無理だと思います」
「そうでしょうね・・・。では教師をやめるつもりですか?」
「そうしようと思っています」
「それで、その後は?これまでのような野外露出を続けるのですか?」
「・・・それは」
「奈緒先生。僕は、あなたは野外露出を止められない、と思います。今までの話を聞いていると、無事だったのが奇跡ですよ。でもいつか破綻するときがきます。犯罪にまきこまれるか、警察に捕まるか・・・。何度も警察に捕まれば、精神鑑定を受けて強制入院ということもありえます」
「・・・」
「僕との結婚を真剣に考えてもらえますか?」
「えっ?」
「僕ならあなたの露出癖をコントロールできるかもしれない。少なくとも生徒達よりは
社会的地位も財力もあります。それでもあなたが満足できなければ、あなたの願望を満足させることのできる場所に連れてゆくことができるかもしれません」
「それはどういうことでしょうか?」
「僕の両親はとある私立学園を経営しています。きれい事だけでしのげる業界ではありません。つまりいろいろな伝手がある、といことです。僕と結婚して、この学校を退職して、僕共々その学園の教師になる、というのであれば生徒たちとも自然に手が切れるのではありませんか?」
「そうですけれど、それでは伊藤先生の一方的な負担になってしまうのでは?」
「あなたを愛している、といったら信じてくれますか?愛する人のためであれば負担でもなんでもありません」
「・・・」
「ただ一つ心配なのは、あなたがそれで我慢できるのか?ということです。僕と結婚する以上、世間体もありますから、表面上は貞淑な妻を演じてもらわなければなりません。野外露出が全く出来なくなるわけではありませんが、かなり制限されるでしょう。
それでもいいでしょうか?」
「その、もし私が満足できなければ、願望を満たすことのできる場所に連れて行ってくれると・・・」
「申し訳ありません。口が滑りました。そこは禁断の場所です。あらゆる快楽と頽廃、そして恐怖が渦巻く城です。行ってしまえば二度と戻ることはできないかもしれません」
「そこはどういった場所なのでしょうか?」
「日本ではありません。マカオのある会員制の高級カジノですが、特別フロアがあって
限定の客にショーを見せたり、そのショーで賭けをしたりするんです」
「賭けですか・・・?」
「もともとは負けが込んだ女性客が、借金を返すためストリップショーを行ったのが始まりのようですが、今は専属の女性ディーラーが客とセックスショーを行い、その結果に他の客が賭けるのです。例えば、女性ディーラーが手を使わずフェラチオだけで、男性客を何秒で射精させることができるか、とか・・・。規定時間以内に射精させられたら客は掛け金をディーラーに払い、できなければディーラーが客に払う。そして秒数をあてた客にも掛け金が支払われる、というふうになります。もちろん女性客が飛び入りで参加することもできますが、かなり大きな金額が動くので、負けが込むと借金を返し終わるまで専属ディーラーとして働かなければなりません。そうしたディーラーたちは
相当過激なSMショーに出演させられるそうです。あくまでうわさですが、あまりに負けの込んだディーラーは自分自身を賭けの対象に差し出す場合もあるそうです」
「人身売買ということですか?」
「いえ、もっとおぞましいものです。"肉体改造権"です」
「肉体改造権?」
「世の中にはとんでもない大金持ちの好事家がいます。彼らは普通の性奴隷では満足できません。奴隷達の全身にタトゥーを入れたり、その・・・、手足を切断して犬のようにしたりするんです」
「・・・そんな!」
「もちろん、そんなことをされればまともに生きてゆけません。ディーラーの借金はカジノに対してですので、改造権を行使した好事家が借金を精算して引き取ってくれないかぎり、そのディーラーはオークションにかけられます。その時点でそのディーラーは法律上死亡したことにされてしまうんです」
「・・・なぜ、伊藤先生はそこまで詳しいのでしょうか?」
「・・・実は知り合いの女性が・・・」
「・・・ごめんなさい」
「・・・中東の好事家に引き取られたようです。その後どうなったかわかりません。あちらではそういう特殊な奴隷を所有することが高いステータスにつながる、と聞いたことがあります」
 しばらく沈黙が続く。私自身は、本当はどうしたいのだろう?
でも私はカジノのセックスショーの話を聞きながらオマンコを濡らし、こっそり触っていた。おぞましい肉体改造の話を聞きながら興奮していたのだ。
隣に伊藤先生がいなければ、激しくオナニーしていたに違いない。
ショーに出て不特定多数の人に恥ずかしい姿を見られ、弄ばれたい。
私の中にそうした願望があるのは確かだ。でもその先にあるものは・・・。

「そのカジノの名前は何と言うのですか?」
「レッドキャッスルです。ま、まさか奈緒先生行くつもりじゃないでしょうね!」
「行ってみたいと思っています」
「だめです。一般客用はともかく、会員用フロアには入れませんよ。ましてショーの行われるフロアは特別会員しか入れないんです!」
「でも、伊藤先生は入れるんですよね。いっしょに行ってもらえませんか?」
「たしかに僕がいれば1名だけゲストを同伴することができますが・・・」
「伊藤先生のプロポーズ、真剣に考えたいと思います。だからこそ、その場所をこの目で見ておきたいんです」
「・・・判りました。パスポートはお持ちですか?」
「大学の卒業旅行でカナダに行ったとき取得したものが、まだ失効していないので大丈夫です」
「では、そこはホテルも併設されているので、年末12月30日から新年3日までの予約を入れておきます。新年の特別ショーが開催されますので、それを見れるように手配します」
「お願いします」
「そうだ、奈緒先生、クリスマスイブに付き合ってもらえますか?」
「え、ええ」
「カジノに入るにはドレスコードがあるので、僕の服を見立ててください。そのかわりあなたにもふさわしい服をプレゼントしますよ」
「わかりました」
 伊藤先生が急にそわそわし始めた。
「すみません。ちょっとトイレにいってきますね。絶対そんな格好で外に出ないでくださいね」
 そういうと伊藤先生は車をおりてトイレに向かった。車の暖房があるとはいえ、伊藤先生の上着は私がずっと羽織っていたので冷えたのだろう。
そういえば私もオシッコが急にしたくなってきた。
 この駐車場内にトイレはなく、公園の中まで5分ほど歩かなければならない。
女は尿道が短い分オシッコを我慢しづらいらしい。車の中で漏らすわけには行かないので、取りあえず外にでることにした。ここで車から締め出されてしまったらシャレにならないので、エンジンを切りキーをもって出る。
すっかり日が暮れており、外は非常に寒かった。強烈な尿意が襲ってくる。
羽織っていた上着は車の中に置いてきてしまった。取りに戻るのも間が抜けているので
早く済ませることにした。さすがに駐車場の真ん中でするわけにはいかない。
なんとか端のほうまで行って、と思いながら歩き出そうとして、なぜかそこにしゃがみこんでしまった。そのまま四つんばいになってしまう。私は一体何をしようとしているのだろう?手のひらと膝に冷たいアスファルトが当たる。
そのまま駐車場の端にある潅木に向かって這ってゆく。
 途中漏らしそうになるのを何とか我慢しながら、その木の根元にたどり着くと片足を大きくあげ幹に右足の足の裏をつけると括約筋を緩めた。
まさに雄犬がマーキングする格好でオシッコをする。圧倒的な開放感とともに快感がこみあげてくる。ああ、私いま、犬になっているんだ、きもちいい・・・。
そのとき不意にさっき聞いた話がよみがえる。
"全身にタトゥーを入れたり、手足を切断して犬のようにしたりするんです"
 脳裏に手足を切断され、犬のようにリードに曳かれて歩く自分の姿を想像する。
珍獣のように晒し者にされ、牡犬との交尾を見世物にされる。発情しても、自ら慰めることもできない不自由な体にされても、快楽を追い求める私・・・。
 いつのまにかオシッコは終わっていた。私はその場に仰向けに寝転がると狂ったようにオナニーを始めた。すぐに絶頂に達するが、そこで終わらない。大きな波が何度も何度もくる。これがイキッパなし、というものだろうか・・・。
 目の前が真っ白になり私は気を失った。

 気がつくと、私は車の助手席にいた。上着も羽織っている。なにもかもオシッコしに出る前のままだ。運転席を見ると伊藤先生がシートを倒して寝ていた。
車の時計をみるとここに来てから2時間以上経っていることが判った。
「伊藤先生、伊藤先生」
小声で呼びかけてみると、目を開けた。
「ああ、起きたんですね。僕が戻ったとき、奈緒先生が寝ていたので、そのままにしておきました。僕もちょっと疲れていたので、少しだけ休憩するつもりが寝てしまったんですね」
 では、あのオシッコは、オナニーは夢だったのだろうか?それにしては体がすっきりしているように感じるが気のせいだろうか?
「とにかく家まで送ります。道を教えてください」

 部屋に帰り、今日1日を改めて振り返ってみる。考えることが山ほどあったが、一つだけ確かなことがあった。これ以上教師は続けられなかった。今すぐに退職するのは無理だ。やはり卒業式で退職するのが社会人としてのマナーだろう。

ようやく期末テストが終わった。出来はそこそこだったと思う。
奈緒先生と伊藤先生の仲はいつのまにか進展していたらしい。クリスマスイブにデートすると伝えられた。そのときに伊藤先生を引っ掛けるのかと思っていたら、それは待つように言われた。
"下手に仕掛けて逆上されたらまずいことになりかねない。もっと伊藤先生と深い仲になってから、タイミングを見て、まず自分の性癖を打ち明けて、野外露出の共犯者にした上で秘密倶楽部のことを打ち明けたほうが確実だ"と説得された。
「だから、伊藤先生との仲がもっと進展するまで、秘密倶楽部はしばらく休部にしたいの。途中でばれたら全部だいなしになるかもしれないから・・・」
 僕はなにか釈然としないものを感じながらも了承し、志村と加藤に伝えた。
「奈緒先生がそうしたいって言うんならいいんじゃないの?」
「そうだね」
 志村も加藤もやけにあっさりと認めたので僕は驚いた。
「でも、このままだと秘密倶楽部は自然消滅ってことにならないか?」
「それでもいいんじゃねー」
「でもせっかく作ったんだし・・・」
「おい、浩介、前と言っていることが違うんじゃねーか」
「どこが違うんだ!」
「前に伊藤先生を巻き込む計画を話したとき、最終的に奈緒先生と伊藤先生が結婚してもいい、っていってなかったか」
「確かに言ったけれど、それは俺達が卒業してからの話だ」
「なあ浩介、俺達が秘密倶楽部を作ったのは何のためだ?露出性癖をコントロールできない奈緒先生の欲求不満を解消してやるためじゃなかったのか?奈緒先生が伊藤先生とつきあうことで、それが解消されるなら秘密倶楽部は必要なくなる。べつに卒業まで無理に延ばす必要はないんじゃないのか?」
「でも・・・」
「少し時間を置こうよ。もし奈緒先生と伊藤先生との仲がうまくいくのなら、あえて秘密倶楽部のことをばらさなくてもいいんじゃないの?」
「加藤!秘密倶楽部のことを無かったことにしろっていうのか!」
「あくまで選択肢の1つだよ。それに万が一、先生が複数の生徒と肉体関係をもっていたってことが公になったら、皆にとってまずいんじゃないの?」
「・・・」
「とにかく、俺は奈緒先生からお呼びがかかるまで倶楽部には来ない」
「僕も奈緒先生の意思を尊重するよ」
「わかった・・・」
 僕は家に帰る間ずっと考えていた。伊藤先生と結婚したところで、奈緒先生のあれだけ強い露出癖を満足させられるわけがない。奈緒先生のことは僕が一番良くわかっているんだ。いずれ僕のもとに戻ってくるはずだ。

終業式も無事に終わり、明日は伊藤先生とのデートだ。どんな服を着ていこうと悩んでいて重大なことに気がついた。まともな下着を持っていないのだ。ずっとノーパンノーブラが当たり前になっていたし、あるのは整理用のショーツか、スケスケや乳首部分やクロッチに穴が開いているもの、Tバックといったエロ下着だけだ。おそらく連れて行かれるであろう高級ブティックの試着室でそんなものをさらすわけにはいかない。
どうしよう、これから買に走るべきだろうか、と悩んでいると電話が鳴った。
伊藤先生からだった。
「もしもし、奈緒先生明日の約束ですけど、11時に迎えに行きますので、まず食事をしてからブティックを回って・・・」
「あ、あの、下着!」
「はっ?」
「私、その高級な服にあう下着を持っていないんです!」
「じゃあ明日下着も買いましょう。とりあえず明日は普通のでいいですよ」
「い、いえ、その下着そのものをほとんど持っていなくて・・・」
「・・・じゃあ今から窺います」
それから15分とたたずに伊藤先生は来た。それまで私は全裸で散らかした服やエロ下着の中に立ちつくしていた。
「あ、あの、奈緒先生は家ではいつも全裸なんですか?」
「は、はい」
「それに普段は下着を着けないんですか?」
「ええ」
「判りました。とにかく服をきてください。知り合いの下着専門店に行きます」
 連れて行かれたのは、フランスの大手下着ブランドが日本に出したセミオーダーメイドの店だった。伊藤先生は店の女性店長と親しげに話している。
「ふーん、これが英明の彼女ね、こっちきて」
やけに親しげだが、どういう関係だろう。
「あなた、自分のサイズはわかっているの?」
「大体は。でも最近は測っていません」
「じゃあ、こっちきて」
 案内された先には透明の円筒があった。
「じゃあ服を脱いで中に入ってください」
「えっ?」
「今は機械で自動的にしかも正確に測れるのよ」
 どのみち脱がなければならないので、覚悟を決めて服を脱いだ。
「あら、あなた下着を着けない派なの?日本ではめずらしいわね。モデルさん?」
「・・・いえ」
「じゃあ、露出系か・・・。わかるわ、きれいなカラダしているもの。皆にみせびらかしたいのよね」
「あ、あの」
「はい、これをかけて」
レーザー防護用のサングラスを渡されたので、それをかけて円筒内に入る。
「その真ん中の印の上に立ってね、そうそこ、はい動かない」
 円筒に沿ってリングが降りてくる。リングは一番下までいったあと、計測用レーザーを発しながらゆっくりと登っていった。
「はい、お疲れ様。データの編集と商品の準備に10分ほどかかるからちょっと待っていてね」
 私が円筒からでると、伊藤先生のいる店のほうに全裸のまま連れて行かれた。
「あ、あの、服は?」
「あら、そのままのほうがいいんじゃないの?」
「でも・・・」
「そうだ、待っている間ライブマネキンやってみない?」
「ライブマネキン?」
「そう、商品を着てショーウインドに立つのよ」
 そのまま、手を引かれてストックに連れ込まれる。引き出しから取り出されたのは真っ赤なランジェリーのセットだった。
「これを着てちょうだい。ナイティー用のセクシーランジェリーよ。ジャストフィットとはいかないけれどサイズは合っているはずよ」
 総レースのものでかなり透け感があるが、一目で超高級品だとわかる。セクシーでありながら、ちっともいやらしさが無い。これなら着用して大勢の人に見せてみたい、と
思わせるような商品だった。
「ブラはつけてあげるから、ショーツは自分で履いてね」
言われたとおり、ショーツを履くと、慣れた手つきでブラが当てられ、うまくフィットするように微調整しながらつけてゆく。
「はい、OK。こっちがショーウインドよ」
ショーウインドの裏側に案内される。スライドドアをあけると、1畳ほどのスペースがあり、ランジェリーを着けたマネキンが並んでいた。
ウインドの外が歩道になっており、その外側は幹線道路だ。かなりの車が行き来し、駅が近いため歩道の人通りも多い。
 店長は一番近くにあったマネキンを運び出すと言った。
「ここに立っていてちょうだい。ポーズは任せるわ」
中に押し込まれ、ドアを閉められる。歩道の人々が私に気づき、何事かと足をとめた。
 いくら全裸ではないといっても、目を凝らせば、ブラカップもクロッチも透けており
乳首もオマンコも見えてしまう。反射的に両手で胸と股間を隠してしまった。
モデルをやったことなど無いので、どんなポーズをとったらよいのか皆目見当がつかない。M字開脚のポーズならよくやるが、このスペースでは無理だし、これだけの往来のなかではさすがにまずいだろう。いろいろ考えているうちにウインドの前に人が集まり始めていた。大半は男性だが、何組かカップルも足を止めている。
後ろから小声で指示が入った。
「ほら、ポーズを取って。ファッションショーでモデルがよくやる決めのポーズ、わかるでしょう?」
(たしか右肩をさげて、左手を腰に当てて、脚を開いてちょっと斜めを向いて、体がS字みたいになるようにするんだっけ)
うろ覚えながらポーズを取る。
 おおっとガラス越しに観客がざわめいた。大半の人は本物の人間だと思っていなかったらしい。通りすぎようとしていた人たちも足を止めて私のほうを見ている。
 全裸露出しているときは、たまにジロジロ見る人はいたが、大半はすぐに目をそらしたり、私が存在しないかのような態度で通りすぎてゆき、ここまでしっかりと大勢の人に注目されたことは無かった。
全裸ラジオ体操や高校生達にオナニーを見せたときや、秘密倶楽部ではせいぜい数人だったのに、今は20人以上の人達が私を見つめている。
いくら下着を着けているとはいっても、かなり透けており全裸と大差はない。
そして多くの視線がクロッチ部分にあるのがはっきりとわかる。
(ああ、だめ、濡れてきちゃう!)
またざわめきが起こった。クロッチに染みが出来ているのが見えたらしい。
 群集の好奇の視線が、驚きと蔑みのそれに変わる。下にたらしていた右手がいつのまにか、太腿の上に移動していた。皆の見守るなかオナニーしたらどれほど気持ちいいだろう?もう少しで指がショーツの縁に届く、その瞬間にウインドの照明が消えた。
 すぐに後ろのドアが開き、すかざず引っ張り出される。
「ちょっとからかっただけなのに、感じちゃって・・・。この店をストリップ劇場にする気だったの?あなたって本当に露出狂なのね」
「ご、ごめんなさい」
「別に謝る必要はないわ。十分客寄せになったし・・・」
店を窺うと、1組のカップルが入店してランジェリーを選んでおり、別の女性スタッフが対応していた。
「そのランジェリーはあげるからそのまま着ていきなさい。あなたに合うものを3セット選んでおいたわ。精算は済んでいるから」
「ありがとうございます」
「お礼は英明に言って」
「あの、伊藤先生とはどういう・・・」
「元カノよ。私がカジノに嵌まってバカをやるまではね・・・」
「え、じゃあ、レッドキャッスルで?」
「そこまで話しているのなら、英明は本気ね・・・」
「でも、その、犬にされたって・・・」
「最後の賭けに負けていたら本当にそうなっていたわ。でも私は99%負けると言われていた賭けに勝ったの。そうしたらこの会社の社長が、ミラクルガールだ、と自分の愛人にするために身請けしてくれたのよ。そしてこの店の店長にもなれたわ。だからこれでもう十分なのよ。あなたの邪魔はしないわ」
「・・・」
「レッドキャッスルに行くの?」
「・・・はい」
「そう、目的は特別フロアのショーかしら?出てみたいの?」
「わかりません。でもどんなショーなのか凄く興味があります」
「ショーとは名ばかり、何でもありの性奴隷の公開調教よ。それでもいいの?」
「それを自分の目で確認したいんです」
「そう、なら気をつけてね。あそこには人を狂わせ、虜にしてしまう何かがあるわ。それに取り込まれないようにね。ちゃんと帰ってきて、英明と一緒に居てあげて・・・」

服を着て店を窺うと、カップルはすでに帰ったようだ。ウインドの前の群集も散っていた。包装されていた下着を持って、伊藤先生とともに店を出る。
帰りの車の中でずっと考えていた。
私は、本当は何を望んでいるのだろうか?
平凡な結婚生活なのか、生徒達に囲われる生活を続けるのか、晒し者にされ性奴隷として生きるのか、それとも・・・。

クリスマスにデパートに行ったとき、伊藤先生と奈緒先生を見かけた。デートのようだったのでこっそり後をつけると、旅行用品売り場にいった。売り場ブロック1つはさんで様子を窺っていると、スーツケースを購入した。家へ直送してもらうらしく、支払いを済ませると今度は紳士服のフロアに行った。
 まさか2人で旅行にいくのか?二人の仲はもうそこまで進展したのだろうか?
楽しそうに服選びする2人を見ながら考える。3学期が始まったら婚約発表、卒業式で寿退職、典型的なパターンだ。これでは秘密倶楽部はこのまま自然消滅を免れない。
 だめだ!絶対このままでは終わらせない!
僕は奈緒先生を陥れるための計画を練り始めた。

今日、いよいよ英明さんとマカオに旅立つ。もしかしたらもう日本には帰らないかもしれない、と思い昨日は両親に会ってきた。一応旅行に行くことだけは伝えたが、相手は女友達だと言っておいた。大学時代にも何度か同じように旅行しているので両親は疑いもしなかった。 浩介君にはメールを入れておいた。年末年始旅行に行くので会えないこと、旅行から帰ったら、秘密倶楽部の事を話し合いたい、と伝えた。
返信は一言"わかった"とだけ。秘密倶楽部休部を伝えたとき、なにか不満げだったので、もっとなにか言ってくると思ったが拍子抜けした。やっぱり生徒達に囲われる生活というのは無理がありすぎる。現実は小説のようにはいかないのだ。

奈緒先生からメールが来た。旅行か・・・。そりゃ伊藤と2人きりの旅行なら楽しいだろうな。秘密倶楽部の事もどうせ解散、ってことだろう。いいさ、今はいい夢を見させておくさ。そのかわり最後の卒業式で父兄はおろか世間にも全てをばらしてやる。
そう、リベンジポルノってやつだ。今にみていろ!

マカオに着いたその日は市内観光とホテルの一般客用のカジノで遊んだ。
最初はスロットで景気付けし、次に初心者向けのクラップス、そしてルーレットと難度を上げてゆき、その日の最後はブラックジャックで締めた。ルーレットで多少儲けたが、その分を全部ブラックジャックですってしまい、最終的に1,500ドルくらいは負けたと思う。後で聞いたら、その程度の負けはここでは勝ちに等しいそうだ。
部屋はジュニアスィートでジャグジー付きだった。ベッドはもちろんダブルでほとんど新婚旅行だった。いや、婚前旅行か・・・。 
その夜、初めて英明さんに抱かれた。普通の優しいセックス。
激しいオルガスムスはない。暖かいミルクを飲むようなほっとする時間。
緩やかに上がって、緩やかに降りてくる。 これが普通の幸せなのかもしれない。
ずっと一緒にこうしていたい。この時はそう思っていた。

翌日は一日中観光して、夕方にホテルに戻った。それからホテル最上階のレストランで食事をしたあと、再びカジノを訪れた。今夜カウントダウンパーティーがあり、その後特別フロアでショーがあるという。今夜は会員専用フロアに入る。ここでは会員証がそのままクレジットカードの代わりとなり、このカードでチップを購入するのだ。
カジノの勝ち負けもすべてこれで精算され、どんなゲームでいくら勝ち負けしたかが全てカジノ側にわかる。特別ショーは、予約をしたうえで、一般フロアと会員フロアの両方で、指定されたゲームで一定金額以上遊んだ客にしか招待されないらしい。
会員フロアでは、ルーレットとバカラ、ポーカーをやった。レートは一般フロアの3〜10倍という高額でバカラはルールが良くわからなかったので、負けが込んだが、ポーカーで最後に大きな勝負に勝ててなんとかトントンに持ち込めた。
英明さんはビギナーズラックだ、と笑っていたがそれが無ければ、負けは5万ドルを
超えていたに違いない。ポーカーのテーブルを離れ、カクテルを飲んでいると、一人の
男性ディーラーが近づいてきて金色のカードキーを手渡された。これが特別ショーへのパスのようだ。一緒に手渡されたメモには"24.5−25東3"とあった。
 24.5−25はおそらく今夜の夜中0:30から1:00ということだろう。
東3が判らなかったが、英明さんは多分東にある第3エレベーターに乗れ、ということだろうと言った。このカジノにはエレベーターに表示されていないフロアがあり、そこへ行くためにこのカードキーが必要だという。指定されたエレベーターが限られた間だけ、そのフロアにいけるようになるということだ。
0:30きっかりそのエレベーターの前に到着する。東側には5基のエレベーターがありそれぞれが別の階に止まっている。ボタンを押すと、なぜか近くの階にあったエレベーターは動かず第3エレベーターのみが下の階から上がってきて扉が開いた。
中に入って扉を閉め、カードを入れるスロットを探す。
階数ボタン下にあったメンテナンス用の扉をスライドさせると、テンキーとスロットが現れた。カードをスロットに差し込むとエレベーターが動き始めた。最上階まで上昇したがそこで扉は開かず今度は下降し始める。エレベーターの階数表示は最上階のままだ。長い下降のあとようやく扉がひらく。
そこはエレベーターホールになっており、左右にもエレベーターの扉がある。
東側のエレベーター全てがここに降りれるようになっているらしい。
奥にカウンターがあり2名のディーラーがおり、その横には大きな木の扉が見える。その両脇には明らかにボディガードとわかる巨漢が立っていた。
カウンターに歩み寄り、カードキーを差し出す。ラップトップにカードを差し込み、情報を確認していたが、カードを抜き取ると黙ったままカードと目の部分だけを隠す仮面を2つ渡された。
仮面をつけるとガードマンが扉を開く。中は半円形のホールになっていた。
中央に半円形のステージがあり、それを取り囲むように丸テーブルが3列配置されている。テーブルの列はそれぞれ20cmほどの段差があり、互い違いに配置されているのでどの席からもステージがよく見えるようになっている。すでに半数のテーブルはカップルで埋まっていた。
すぐさま案内係が寄ってきてテーブルに案内される。場所は2列目だったが中央に近いところで、特等席と言って差し支えないだろう。バニーガールがすぐさまドリンクの注文を取りに来た。英明さんはスコッチのロック、私はモスコミュールを頼む。
30分ほど待つ間、どんなことが行われるのか英明さんに聞いてみた。
「最初は大抵ピロリーターンだ」
「ピロリーターン?」
「女性ディーラーを1人ピロリー、つまり昔罪人を晒し者にした枷に拘束して、複数の男性が順番に犯すんだ。持ち時間は1人2分、大抵5、6人の男性が順番に犯していって女性ディーラーを絶頂させたら、イカせた男性の勝ち、2周りしてディーラーがイカなければディーラーの勝ちで人数分の掛け金を総取りになる。もちろん男性が射精してもディーラーの勝ち、いかに自分がイカず、相手をイカせるかが勝負になる。不公平がないように男性の順番はくじ引きで決められるんだ。女性ディーラーは大抵新人がやることになっている。男性側も新会員がやることが多い。ま、お互い顔見せだね」
「顔見せにしては皆仮面をつけているけど・・・」
「これにあまり意味はないよ。雰囲気を盛り上げるためさ。それにゲームに参加するときは皆はずすんだ。この世界は広いようで狭いんだ。体つきや喋り方、身のこなしだけでもある程度身元の見当はつくんだよ。お、そろそろ始まるぞ!」

 会場が暗くなり、仮面に燕尾服の男性がスポットライトの中、開会の口上を述べる。
やがて舞台袖から奇妙な台が引き出されてきた。鉄パイプを組んだ脚の上に分厚い木の板が載っているのだ。ちょっと想像していた台と違っていた。
「あれが晒し台?よく映画なんかで見るのとは違うようだけど?」
「ギロチン台みたいのとは違うよ。あれだと後ろからしか挿入できないだろう?持ち時間内なら前後どちらからでもいいし、アナルを犯してもいいんだ」
 司会者の紹介とともに女性ディーラーが登場した。彼女はアマンダと名乗った。
くすんだショートの金髪にまだ幼さの残る顔立ち。二十歳前後だろうが見覚えがある。
「ねえ、あの人・・・」
「さっきポーカーで君が勝ったディーラーだよ」
「えっ!じゃあ、あそこにいるのは私が彼女に勝ったせい?」
「・・・そうかもしれないね」
 急にドキドキしてきた。さっきの勝負にもし負けていたら、あの台に拘束されるのは私だったかもしれなかった。そう思うと彼女にすごく悪いことをしたような気がした。
 それなら私が代わって・・・。
「奈緒、何を考えているの?」
「な、なんでもない!」
思わず赤面してしまった。アマンダが晒し台に脇に立つと司会者が天板を開く。
天板には首と両手首を入れるくぼみがあり、彼女はおとなしく首をくぼみに合わせる。
司会者が彼女の手を取り手首のくぼみに合わせてゆく。
司会者のマイクが"キィ"という天板を閉じる音をひろう。続いて"カチャカチャ"という留め金をかける音、そして最後に"ガチャリ"という南京錠をかける音が響いた。
その瞬間、私自身があの台に拘束されたような錯覚を覚えた。
アマンダの服が、下着がはさみで切りきざまれ、全裸にされてゆく。
アマンダにマイク付ヘッドセットが着けられ、その上から黒い布で目隠しされた。
スピーカーから彼女の息遣いが会場に響く。
 次に下半身を露出した5人の男性が入ってきた。公開くじ引きにより順番が決まる。
「それでは始め!」
チン!とベルが鳴り一人めがアマンダに取り付く。すぐに挿入するのかと思ったら、彼女の後ろ側にまわり、右手でオッパイを揉みしだきながら、左手でクリトリスを刺激し始めた。
「どうして・・・?」
「一人目がいきなり挿入してもだめだからさ。一周目でイク女はほとんどいないよ。勝負は2周目だから、次の自分の番のときに一番興奮するようにコントロールするんだ」

 アマンダは2周目、2人までクリアしたが3人目にとうとうイカされてしまった。
その男性はアマンダを後ろから抱えあげて、大股開きの体勢でアナルに挿入したのだった。散々前を攻められて息絶え絶えになっていたところに、アナルへの刺激は強すぎたらしい。イッた瞬間、アマンダは盛大にお漏らしをした。
 拘束から開放されたアマンダは自分の粗相を舐めとらされた。
ここで次のショーに移るのかと思ったら司会者が意外なことを言い始めた。
「さて、ここでこのピロリーターンに参加されたいと言う女性ゲストがいらっしゃいます。その方と勝負してみたいという男性ゲストの方はご起立願います」
 ざっという音とともに10人を超える男性が起立した。
「ええと、つごう12人ですね。それでは1人1分の持ち時間に変更させていただきますがよろしいでしょうか?そのかわり女性がイッた場合でも、全員2周するまで続けさせてもらいます。何度もイッ場合は、イカせた男性は全て勝者とします」
 起立した全員が拍手する。
「それでは女性ゲストに登場していただきましょう!」
 会場のライトが消え、ドラムが鳴り、スポットライトが会場を縦横無尽に走る。
そしてスポットライトが照らしたのは奈緒だった。
「え、わ、私?どうして!」
 なぜ私なのか訳がわからず英明さんを見る。
「果たして僕一人で奈緒の性癖をコントロールできるのか、君自身が自分の性欲をコントロールできるのか、ずっと考えていた。それで奈緒を試すことにした。このパーティーの主役は君だ。いまから24時間、君はここで特別会員達に嬲られ続ける。君のこれまでの経験と性癖はディーラーの調教責任者に話してある。奈緒がずっと望んでいたことをすべて実現させてくれるだろう。この試練を経験して、それでも僕と結婚したいと思うのであれば、結婚しよう。もし、このままここに残りたいと言うのであればそれでもいい」
「・・・要するに自分自身をとことん見極めろ、ということなのね?」
「・・・そうだ」
「わかったわ」
 顔をあげると全裸のアマンダが迎えにきていて、私のほうに手を差し出していた。
私はアマンダ手をとって立ち上がるとステージに向かって歩き出した。

                      (パート7最終章に続く)




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