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   『ちょっとエッチな美香ちゃん日記』 その3


◇あの記事に再会◇

 わたしが下着姿で表へ出ようとして出られなかったあの時から、ずっとチャンスを伺う日々か続いていました。勿論裸で表へ出る機会です。そんなわたしにも現代高校生の宿命は避けて通ってくれませんでした。
 そうです。大学受験の時期がやって来たのです。
 学校でも家でも受験のことばかりで、しばらくの間わたしの悪癖は意識の底の方へと追いやられていました。とは言っても全く考えなかった訳ではありません。予備校の夜間特攻で黒板に出て問題をやらされた時など、一問間違える度に着ているものを一枚ずつ脱がなければならないなんてことになったら、どんなに恥ずかしいかなんて考えたこともありました。そんな不真面目な受験生でもなんとか拾ってくれる短大があって、わたしは今女子大生をしています。
 東京の短大に通うようになって、アパートの一人暮しを始めたわたしは、ある日女性週刊誌の見出しにいつかのお昼のワイド番組とおなじものを見付けました。
「夫は酔うとわたしを裸にして表へ出すのです」
 わたしは、しばらくの間意識の奥底に眠っていたものを呼び起こされた思いがしました。そして、本屋さんの店頭に置いてあったその女性週刊誌を取り上げてページをめくりました。そこには、
「裸でタバコを買いに生かされたわたし」
 そんなサブタイトルまでついていました。わたしはもう何も考える事なくその本を買って帰りました。
 早くアパートに帰ってその本を読みたくて、帰路を急ぎました。いつかのワイド番組のように期待はずれだったらどうしようなんてことは全く頭に浮かびません。とにかく、直ぐに読みたくて仕方がありませんでした。そして、その内容はわたしの想像を越えて過激なものでした。いつかのワイド番組とは違う話のようです。その記事の奥さんをわたしに置き換えて再現してみました。

 わたし(ここでは記事の中の奥さんの事です。)は、27才の人妻です。結婚して4年になりますが、まだ子供ができず、主人と二人の生活が続いています。7つ年上の主人は、普段はおとなしいのですが、お酒を飲むと人が変わるのです。
 それは結婚してすぐから現れました。お酒の入った主人はわがままで乱暴者になります。外ではいつも小さくなっているらしいのですが、酔うとその反動がでるのか、わたしは何度殴る蹴るの暴行にあったか分かりません。そんな主人でも、お酒を飲んでいない時はとても優しくしてくれるので、これまで本気で別れようと思ったことはありませんでした。
 いつだったか、わたしがクラス会で帰りが遅くなった日のことです。わたしは主人に買ってもらったワンピースを着てクラス会から帰って来ると、主人は一人で出来上がっていました。しかし、わたしも久し振りに会った旧友達と少しお酒を飲んで、ほろ酔いの良い気分でした。だから、主人の機嫌が悪いのも気が付かずに不用意な言葉を発してしまいました。
「洋子(旧友の一人)がねえ、ご主人に買って貰った指輪をあんまり自慢するものだから、わたしもこのワンピース主人に買って貰ったのよって言ってやったの。そうしたら洋子ったら憎らしいこと、あなたのご主人ってセンスがないのねって言うのよ。あなたのせいでわたし恥かいちゃったわ」
 会社で何かあった上にわたしの帰りが遅いことに腹を立てていた主人は、わたしの言葉に烈火のごとく怒りだしました。
「俺の買ってやった服が気にいらないなら着なくていい。すぐに脱げ」
 わたしはびっくりしました。こんなに怒るなんて全く想像していませんでした。すぐに謝ったのですが主人は許してくれません。わたしの着ているワンピースを乱暴に脱がそうとするのです。
「そんなに引っ張ったら破けてしまいます」
「どうせもう着ない服なんだから、破れようがかまうものか」
 お酒の入った主人に何を話しても無駄でした。
「わかりました。自分で脱ぎますから手を離してください」
 そう言って何とか手を離してもらいました。わたしは仕方なくワンピースを脱ぎました。お互いの体を散々見せ会った仲でも、自分一人強制されて服を脱ぐのは、やはり恥ずかしいものでした。
 主人はスリップ姿になったわたしからワンピースを取り上げると窓の方へ投げ捨てました。それでも気分か収まらないらしく、わたしに洋子の家の電話番号を教えろと言うのです。
「俺のことを馬鹿にしやがって。一言文句を言ってやらなきゃ気がおさまらねえ」
「それだけはやめて。わたしが洋子の分まで謝りますから」
「教えないなら、お前の友達に片っ端から電話して聞いてやる」
「あなた、そんな馬鹿なことはやめてください」
 わたしは言ってしまってから「しまった」と思ったのですが、もう後の祭りでした。主人の怒りに油を注いでしまったのです。
「馬鹿なことだと。お前も俺のことを馬鹿にするのか。主人の言うことも聞かずそんな口を聞く奴は出て行け」
 そう言ったかと思うと、主人はわたしの手を引っ張りました。そして、玄関から表へほうり出そうとするのです。わたしはまだスリップ姿のままでした。こんな恰好で表へ出されたら大変です。必死になって謝ったのですが、主人の怒りと腕力にはなす術が無く、わたしはとうとう下着姿で玄関から表に締め出されてしまったのです。
 夜も遅く、外は真っ暗で人通りも無かったのですが、わたしの住まいはアパートの二階で、玄関の外はベランダのような通路が道路に沿っていました。だから、もし人が通ったらわたしの姿は丸見えです。しかも隠れる所がありません。わたしは人が来ないことを祈りました。
「あなた、お願いです。部屋に入れてください」
 玄関に仁王立ちになっている主人の前で、コンクリートに頭をつけて許しを請いました。破れかかったスリップ一枚の姿でです。そんなわたしの態度に気分もほぐれたのか、「勝手にしろ」と言って主人はドアを開けたまま奥へ入って行きました。
 わたしは主人の後を追うように部屋に入りました。あのままドアを閉められなくて、本当によかったと思いました。
 先に座敷に座っていた主人は、いつの間にか酔いが冷めかかっていたようです。おとなしくなっていました。わたしはその後ろ姿に向かって、もう一度謝りました。
「あなた、本当に御免なさい」
 しばらく間を置いて主人は言いました。
「俺も子供の頃、悪さをしてはおやじに外へ締め出されたもんさ。これからも何かあったら締め出すからな。よく覚えておけ」

 主人はわたしが余りにも柔順になったものですから、すっかり味をしめてしまったようです。それからというもの、少しでも気にいらない事があるとすぐにわたしを締め出すようになったのです。わたしの服装には関係無く。
 しかし、主人はわたしを追い出した後、ドアに鍵を掛けたりはしませんでした。そんなことを考える以上に酔っている場合が多かったからです。わたしもそんな主人の扱いに慣れて行きました。すぐに部屋に入ろうとすると怒るのですが、大体は主人の方がすぐに寝てしまうのです。そして一度寝てしまったら、朝まで起きたことがありませんでした。ですから、わたしは少しだけ追い出されていれば良かったのです。時間にしてせいぜい5分位のものでした。
 ところが、そうした主人の性癖がわたしにとって最悪に働いた事がありました。それは思い出すと死にたくなる程つらい出来事でした。
 主人の帰りが遅くなりわたしが先に布団に入っていた時の事です。酔って帰ってきた主人はいきなりわたしを求めて来ました。わたしはすぐに全裸にされました。主人はどんなに激しく迫って来る時でも、下着だけ脱がせて行為をするような事はしません。必ずわたしを一糸纏わぬ姿にします。そして自分も全裸になってお互いの肌の温もりを確かめ合うように体を密着させて来るのです。
 ここまでは普通の夫婦の夜の営みと変わり無いと思います。
 この日もそうでした。しかし、酔いのせいもあってか、主人は一人で先に果ててしまって寝息を立て始めました。わたしとまだつながったままです。わたしはしばらく主人を乗せたままじっとしていましたが、いつまでもそうしている訳にはいきませんので主人を起こしました。気持ち良く寝ていた主人は不機嫌そのものでした。
「タバコはどうした」
「あっ、すみません。買って置くのを忘れました」
「何だと。忘れたとは何事だ」
 今朝出がけに買い置きが無くなったので買って置くよう言われていたのです。
わたしがそれを忘れたものですから、いつもの酒乱に寝入りばなを起こされた悪条件が重なり、主人の荒れ方はいつにないものとなりました。
「この役立たずが。お前のような奴は顔も見たくない。出て行け」
 わたしははっとしました。主人はいつものように、いやもっとものすごい形相でわたしを締め出そうとするのです。いつもならおとなしく表へ出て主人が寝付くのを待つのですが、この時のわたしは夜の営みを終えたばかりの素っ裸です。そんな恰好で表に出られる筈ありません。なのに、完全に頭に血が上っている主人はそんなことお構い無く、わたしを玄関へと引っ張るのです。
「何か着る物をください」
 そんな言葉も耳には入りません。必死で抵抗したのですが、こうなってしまった主人には無駄な努力でした。とうとうわたしは全裸のまま玄関から追い出されてしまったのです。
 わたしはもう生きた心地がしませんでした。以前にスリップ姿で締め出されたことがあったことは書きましたが、今度はほんの小さな布切れひとつ身につけていないのです。そんな姿で表に出るなんて考えられない事でした。
 何も身につけていない事がわたしの理性を失わせました。すぐに部屋に入ろうとしたのです。そうすれば主人が怒るのは分かっていたのに。まだドアの近くにいた主人がそれを許す訳がありません。わたしはもう一度ドアの外に放り出されました。そしてドアに鍵をかけてしまったのです。
 わたしはドアの外に座り込み手擦りにもたれて全裸の体を縮こませました。
下腹部からついさっき受けたばかりの主人の精が逆流してきます。とても惨めでした。いつものようにしばらく待っていれば、主人はドアを開けっ放しで寝てしまったでしょう。それをわざわざ鍵を掛けさせてしまったのです。仮にわたしが冷静になれて5分程我慢すれば部屋に入れる事に気が付いたとしても、果してわたしはドアの外で全裸のままその5分を我慢できたでしょうか。前にも書いたようにわたしのいる場所は通りから丸見えです。しかも運が悪いことに、遅くなった主人を迎えるため玄関の外の電灯がついたままだったのです。夜も遅くアパートで電灯のついていたのはわたしの家だけでした。ですから通
りからはかなり目立つ筈です。誰か通れば裸のわたしを見逃す事はないでしょう。
 わたしはドアのノブを力いっぱい回しました。でも、鍵の掛かったドアが女の力で開く訳ありません。それでもわたしは必死でした。考えてもみて下さい。女が丸裸で夜風にさらされているのです。こんな姿を人に見られてたりしたらわたしは生きていられません。しかし、このままではいずれ誰かに見付かってしまうでしょう。なんとかして部屋に入らないと大変なことになります。だからといって大声で主人を呼んだりドアを強くたたいたりしたら、近所にまで聞こえてしまいます。だからわたしは隣の部屋に聞こえない程度に主人を呼びました。
「あなた、開けて下さい」
 いつものように主人が寝てしまったらわたしは朝まで部屋に入れなくなってしまいます。その可能性は十分ありました。
 幸い、主人はすぐには寝ていませんでした。
「部屋に入りたいならタバコを買って来い」
 主人が部屋の中から怒鳴りました。主人はわたしが裸でいることに気が付いていないのでしょう。そんな事を言われても素っ裸のわたしがタバコを買うお金を持っている訳ありません。
「わたし、裸なんです。タバコを買うお金なんか持ってないんです。とにかく中に入れて下さい」
「しょうがねえなあ。金ならほら」
 そう言って主人は台所の窓からコインを一枚投げました。しかしそのコインはドアの前のコンクリートに弾んで手擦りの隙間から下に落ちてしまいました。そんなことは気にもしないで、
「タバコを買って来るまで部屋には入れてやらないからそう思え」
 主人は窓をピシャリと閉めると奥に入ってしまいました。
 わたしは現実を悟らされました。ドアの外には何も着るものが無く、そのドアを開くこともできないのです。しかもわたしは、素っ裸のままタバコを買いに行かなければならなくなったのです。それもすぐに行って来ないと、主人は寝てしまうでしょう。そうなったらわたしは朝まで何も着るものが無いまま過ごさなければならなくなるのです。

 唯一の救いは外の物置に捨てるつもりで束ねてあった古着を思い出した事です。結局わたしは、その古着の中から主人の着ていた大きなコートを見つけだし、それを着て近くの自動販売機でタバコを買って来たのです。何とか最悪の事態だけは逃れられました。それでもわたしにとっては最もつらく屈辱の日になったのです。
(つづく)


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