『ちょっとエッチな美香ちゃん日記』 その4
◇意地悪な兄・再び◇
わたしがこの記事の奥さんの体験にどれだけ興奮させられたかお解り頂けるでしょうか。そしてどんなにうらやましかったか。こんなことが現実に自分の身に起きるわけ無いのに、もし本当にそんな目にあったら……そう考えると全身が震え上がるような気持ちになるのです。
そしてそんな時、決まって少女時代の兄の意地悪を思い出すのでした。
わたしが短大へ行くようになって借りたアパートは、ちょうどこの記事と同じ道路に面した二階建てでした。そして部屋も同じ二階です。
そんなアパートの玄関に裸で立ったことは何度もありました。ドアの内側に身を潜めて、外の様子を伺うのです。
でも、そのドアが開かれることは決してありませんでした。誰かに背中を押して貰えないと臆病なわたしにはそれ以上の行動はとれません。自分の意気地の無さと露出への憧憬がいつもわたしの中で戦っていました。現実の世界では、いつも意気地無しのわたしが勝ってしまうのです。それで良いのだと思いながらも、妄想の世界へ落ちて行くわたしでした。
ある晩のことです。パジャマに着替える時間が一番危ないんです。服を脱いだわたしはパジャマの袖を通す前に自然と玄関の方に目が向いてしまうのです。その日もブラとパンティだけの恥ずかしい姿でドアのノブに手をかけていました。
やっぱり駄目です。
臆病な自分を恨めしく思いながら、もう寝ようと振り向いた時です。なんとそこに兄が立っているではありませんか。
「なんだ、美香はこんなことがしたいのか」
兄が雑誌を見ながら言いました。例の記事が載っているやつです。わたしは頭のてっぺんまでかあっと恥ずかしくなりました。
「違うもん。返して」
下着姿を兄に見られる恥ずかしさを振り払って、わたしは雑誌を取り戻そうとしました。それなのに兄は、
「遠慮するなよ。ほら、俺が手伝ってやるよ」
そう言いながら兄は、ドアを開けてわたしを外へ押し出そうとするのです。始めは冗談だと思いました。わたしが身につけているのはブラとパンティだけです。
(まさか……! 冗談よね)
兄の力は強いんです。そう思っている内に、本当にわたしをアパートの外に追い出してしまったのです。
「やだあ。中に入れて」
そんな声もむなしく、中から鍵をかけてしまいました。
ドアの脇はキッチンの出窓になっています。その窓だけ開けて、
「望み通り裸で表に出たんだ。良い気分だろう」
「そんな、わたしこんなこと望んで無いもん」
「だってこの記事に書いてあるじゃないか。夫は酔うとわたしを裸にして表に出すって。この通りにしたいんだろう」
「やだあ、お兄ちゃん。こんなのやだあ」
「そうか。美香はまだ本当の裸とは言えないもんな」
わたしはドキッとしました。
「この記事の奥さんはすっぽんぽんだもんな。美香もはやくそのブラジャーとパンティを脱いじまえよ」
兄はわたしから下着まで取り上げようと言うのです。
幸い近くに人はいませんでしたが、道路沿いです。いつ人が通るか分かりません。そんな所に下着姿でいるだけで気が狂いそうなのに、この上、下着まで奪われたらわたしはどうなってしまうのでしょう。
でも、兄は言い出したら効かないのです。
「そこで素っ裸にならなきゃドアは開けてやらないぞ。朝までそうしているか」 そう言って窓を閉めてしまいました。
わたしの不安は一層強くなりました。兄の性格なら本当に朝までこのままになりかねません。わたしは決心せざるを得ませんでした。
「本当に脱いだらすぐに中にいれてね」
窓が開きました。兄は早くしろと手を出しています。わたしは死ぬ思いでブラのホックをはずしました。
「これで勘弁して」
はずしたブラでそのまま胸を隠しながら言いました。でも兄は許してくれません。
「ブラジャーをよこせよ」
はずしたブラでも手元にあるのと渡してしまうのとでは雲泥の差です。わたしは兄の手にブラを預けながら、
「もう良いでしょ。ドアを開けて」
夜風に露出した胸を肩で隠して背中を丸めているわたしに、
「まだ一枚残っているじゃないか」
やっぱり全裸を要求してきました。ブラをはずすのでさえ死ぬかと思う程なのに、それがパンティとなれば別格です。いくら覚悟を決めて脱ごうとしても体が言うことを効きません。
「だめよ。お兄ちゃん。パンティは脱げない」
「あの記事の奥さんと同じ目に会いたいんだろう。そうしている内に隣の人が帰って来てもしらないぞ」
確かにその通りです。隣の部屋は玄関の電灯はついていましたが部屋の明かりはついていません。いつ帰って来てもおかしく無い時間です。こんな恰好でいる所を見られたら、このアパートを出なければならなくなります。
もう一度辺りを見渡して人気の無いのを確認しました。わたしは自分を叱り付けながらパンティーを脱いでいきました。部屋に入れて貰うにはこうするしかないのだからと自分に言い聞かせたのです。
パンティを足から抜き取るまでの緊張と言ったら、とても書き表せるものではありません。わたしはとうとうアパートの外で丸裸になってしまったのです。それはとても現実の事とは思えない出来事でした。
そして、パンティを渡さないとドアを開けないと言う兄に促されて、恐る恐るそれを渡してしまいました。もうわたしの体を隠すものは何も無くなってしまったのです。
「よし、これでこの記事の通りだ」
パンティを受け取った兄は満足そうに言いました。
「ねえ、早く開けて。もう一分たって一秒だってこんな恰好していたくない」
本当にその通りです。
全裸になってしまうと、その恥ずかしさは考えていたものの比ではありませんでした。いつ誰が来るか分からない屋外で十九才の少女が一糸纏わぬ姿なのです。一刻も早く部屋に入りたいと願うのは当然でしょう。
これで中に入れて貰える、そう思っていたわたしに、兄の非情な言葉が待っていました。
「そうしたかったんだろう。せっかくだから、もう少しそうしていれば」
兄はそう言って、窓を閉めてしまったのです。
「すぐに開けてくれるって約束したじゃない」
わたしはすっかり自分を見失って閉じられた窓に大声を叫びました。
「そんなに大きな声を出したら近所の人がびっくりするぞ」
わたしははっとしました。わたしは今何も身につけていないのです。近所の人が何事かと集まって来たりしたら、この状況をなんと説明したら良いのでしょう。
窓越しに兄の声がしました。
「ちょっと待ってくれよ。この記事最後まで読み終わったら入れてやるから、もう少しそのままでいな」
そんな事ってあるのであるのでしょうか。わたしは本当にあの記事の奥さんと同じ目に会っているのです。わたしは全裸の体をドアの外に丸めて、一刻も早くこの現実から逃れたいと祈りました。
その時、アパートの下の道路に足音が近付いて来るのを感じました。
(どうしよう)
それしか頭に浮かびません。
わたしの心臓は破裂しそうです。緊張も不安も焦躁も、とてもそんな言葉では生ぬるいものでした。でも、どうすることも出来ずドアの前にしゃがみこんで全裸の体を石のようにしました。足音はそのままアパートの前を通り過ぎて行きました。玄関の電灯がついていないので、前の道からは暗くてこちらが見えなかったようです。
とりあえず難はのがれたものの。今度人が来たときまた見付からずに済むという保証はありません。辺りの物音がひとつひとつわたしの心臓を突き刺しました。わたしは屋外で裸でいることが、こんなにも人間を不安にするものだとは思ってもみませんでした。もしかしたら兄は、わたしを朝までこのままにしておくつもりなのではないかとさえ感じられました。そんなことになったらわたしは明日から生きて行けるでしょうか。
そして兄はさらに残酷なものを見付けてしまったのです。
それはあの記事のサブタイトル「裸でタバコを買いに行かされたわたし」でした。しばらくして窓を開けた兄は、
「おい、タバコを買って来てくれよ」
わたしはその意味がすぐに分かりました。あの記事の奥さんのように、わたしにこの恰好でタバコを買いに行かせようとしているのです。タバコの自動販売機は階段を降りるとすぐ近くにあるのですが、距離の問題ではありません。素っ裸で公衆用道路を歩くなんて出来る訳ありません。
「そんなこと出来ない。もう十分だから中に入れて」
わたしは言いました。でも兄はあの雑誌をわざとらしく見せ付けて、
「この記事の通りにされたかったんだろう。最後まで同じ目に会わせてやるよ」
言い出したら聞かない兄の性格はわかっています。どうあっても自販機まで行くしかないでしょう。
「分かったわ。買いに行くからお洋服を頂戴」
「分かっているだろう。そのまま行くんだよ」
夜の風が冷たく吹き、わたしが真っ裸であることを思い知らせました。わたしはやはり、このままタバコを買いに行かなければならないのです。
でもそこで良いことを思い出しました。
「でもわたし、お金持って無いし、あの奥さんだってコートを着て行ったのよ」
そうです。あの記事では表の倉庫に入れてあった古いコートを取り出して、それを着て行くことが出来たのでした。なのに兄は、
「その辺にあるんなら着て行ってもいいぜ。だんなが奥さんに貸してやったわけじゃ無いだろう」
「そんな、ひどいわ」
このアパートは外に倉庫なんか無いのです。ここにはわたしが身につけられるものは何も無いのを兄もよく知っていて、わざとそんなふうに言うのです。何が何でも、この恥ずかしい姿で公衆用道路を歩かせるつもりなのです。
こればかりはどうしても出来ない、なんとかして兄に裸で道路を歩くのだけは勘弁して貰おうと思っていると、
「素直に言うこと聞かないから罰を与えてやろう」
兄はそう言ってわたしに千円札を渡すのです。近くの自動販売機はお札が使えません。わたしは千円札の意味が分からず、ただ兄がうっかりしたのだと思いました。
「お札じゃタバコ買えないよ」
すると、兄はとんでもないことを言い出したのです。
「だったら、駅前のコンビニまで行って来れば良いだろう」
そんな事出来るわけ無いのに。わたしは自分の耳が信じられませんでした。
ところが、兄は追い討ちを駆けたのです。
「早く行かないと道路から丸見えだぞ」
そう行って玄関の外の電灯をつけました。
それまで夜の暗さだけがわたしの救いだったのに、電灯をつけられたらもうドアの前にはいられません。わたしはドアの前から離れました。
ちょうどその時です。とんでもない事が起きました。突然、隣の部屋のドアが開いたのです。
わたしはもう大慌てです。その場から急いで逃げ出しました。こんな恥ずかしい姿を晒さないためには階段を降りるしかありません。迷っている時間もありませんでした。バタバタと音を立てて階段を降り、その下に潜り込んで全裸の体を石のように堅くしました。隣の人はわたしに気が付いたでしょうか。
いくつかの足音が階段を降りて来ます。
(お願い。そのまま通り過ぎて)
わたしは決死の想いで祈りました。
足音が、わたしの頭の上を通過しました。地面に降りました。そして、そのまま道路へ出て行きました。
わたしは、ほっと息を吐きました。もう本当に生きた心地がしませんでした。でももう大丈夫、そう思って部屋に戻ろうとした時です。もうひとつの足音が近付いて来たのです。
懐中電灯の灯りが揺れているのが見えました。わたしは破裂しそうな胸を押さえて、もう一度石になりました。ところが、降りて来た足音は階段の下で止まり動きません。
(早くどこかに行って頂戴)
わたしは、もう一度祈るしかありませんでした。
次の瞬間、わたしは心臓が凍り付くかと思いました。懐中電灯の光が全裸のわたしを照らしたのです。
(つづく)
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