通学電車は羞恥地獄(後編)
由紀は夢を見ちゃった。
いつもの通学電車の中なの。男の手が由紀の女の子をまさぐっていたわ。由紀は勇気を出して聞いたの。
「生徒手帳を返してください」
さすがは夢ね。これが現実なら、絶対にできっこないもの。ところが、
「ダメだよ。生徒手帳は返せない」
「なんで? もうコピー取ったんでしょう」
「よくわかるね。でも、約束を破る子にはそれなりの返し方をしないとね」
「えっ、わたし、約束なんか……」
「だったらこれは何かな」
男が、由紀のパンティのゴムをはじいたわ。
そう。由紀はノーパンで登校するようにと言う男の命令を実行しなかったの。別に逆らったわけではないのよ。ノーパンは恥ずかしかったけど、ちゃんと実行するつもりでスカートの丈も長くしていたの。なのに、朝、忘れちゃったの。いつものように家を出ちゃって、途中で気が付いたんだけど、パンティを脱ぐ場所がなくてそのまま電車に乗っちゃったの。
「あっ!」
冷たい物が太股に当たったわ。
何かしら? もしかして刃物じゃ……?
「動くと危ないぞ」
やっぱりそうなんだ。昨日スカートを切り取ったのもこれだったのね。今日はパンティを取られちゃうのね。何がなんでもノーパンで登校させる気なのね。わかったわ。もう、好きにして頂戴。
でも、それだけじゃ済まなかったの。学校に着くと、掲示板の前に人だかりができているの。「おはよう」って声を掛けたんだけど、みんなの視線がおかしいの。由紀の顔を掲示板を見比べているみたい。由紀は不安になったわ。でも、おそるおそる掲示板に近づいたの。
そうしたら、掲示板に由紀の生徒手帳が張り付けられているの。しかもその下には、さっき切り取られたばかりのパンティまで付けられていたわ。由紀は目の前が真っ暗になって……それから、目が覚めたの。
あの男からの警告だったのかしら。ノーパンで来ないとこういうことになるぞって。でも、夢って潜在意識だって言うのよね。
由紀は駅のトイレでノーパンになるつもりだったの。だって、家を出る時からじゃ、道を歩いていて風がスカートにいたづらしたら大変でしょう。パンチラじゃすまないものね。電車に乗る前に駅のトイレで脱いで、降りたらまた履けば良いと思っていたの。
別にノーパンする義理はないんだけどね。
変な夢を見ちゃったし、生徒手帳は返して貰わなきゃならないし……でも、なんか胸を張って言えないのよね。もちろん人にじゃないわよ。
でもって由紀は、ノーパンで家を出ちゃった。
こんなこと初めてだったんで、すっごく緊張しながら歩いていたの。足の運びも自然とゆっくりになったわ。静かに、スカートを揺らさないように歩くの。誰かに話しかけられたりしたら。みっともない程に取り乱していたでしょうね。心臓が飛び出しちゃったかもしれないわ。玄関を出た時から鼓動が聞こえそうだったもの。
駅に着いたら着いたで、階段の昇り降りが大変だったの。
下手な格好をすると却って目立つとは思いながら、やっぱり昇る時には鞄をお尻に当てちゃった。後ろから来る人たちに変に思われても、生のお尻を見られるよりはマシだものね。降りる時は逆に前で持ったの。下から上がって来る人もいるものね。みんな、朝の出勤に忙しくて、由紀のそんな動作なんか気にしてないかもしれないけど。
回りの人はいつものように急ぎ足なんだけど、由紀は相変わらずカメさんだったでしょう。みんな、ぶつかりながら追い越していくのよね。その度にスカートがめくれないかと気が気でなかったわ。なんとか無事に済んだみたいだけど。
って、何も済んでないよ。
これから、彼が待っているんじゃない。電車の中で、指を嘗めているかもしれないわ。由紀はそんなところへノーパンで行くの。スカートの下は無防備……
由紀って本当にバカだわ。今の今まで、なんで彼がノーパンで来いと言ったかわからなかったの。彼にとってはお友達のあいつに恥を掻かせた罰、と彼は言ってたわ。それは由紀のも恥ずかしい思いをしろと言う意味だと思っていた。現に家からここまですっごく恥ずかしかったもの。
だけど、目的は別にあったのね。ノーパンなら指を進めやすいもの。きっとこれから……やだっ!。
由紀のあそこをダイレクトに攻撃されちゃうの?
なんでこんなことに気が付かなかったのだろう。当たり前じゃない、そんなの。どうしようって、考えがまとまらない内にホームに着いちゃった。電車も見えている。
一本ずらしちゃおうか?
ダメよ。そんなことをしたら生徒手帳を返して貰えないわ。だけど……あっ、待って。由紀はまだこの電車に乗ると決めてないの。
そんなこと聞いて貰えるわけもない。通勤ラッシュは戦争なのだ。由紀は意志とは関係なく人並みに包み込まれて電車の中にいたわ。それも昨日と殆ど同じ場所なの。これじゃまるで彼を待っているみたいだわ。
えっ、彼を待っている……?
由紀の体に何かが入り込んだの。それが胸を芯を通って女の子の部分へと降りていったわ。昨日、彼の指で感じてしまった甘い痺れが、由紀の下半身に甦ってくるの。あれは一体なんだったんだろう。今日もまた、あんな感じ方をしてしまうのかしら。
そんな時だったわ。
「パンティを出せよ」
彼の声がしたの。もちろん耳元で、由紀にしか聞こえない声でよ。
びっくりするのもしたけど、えっ、どうしてって思ったの。だって、今日はお尻に全然触らないのよ。でも、由紀には聞き返すことはできなかった。混んだ電車の中で鞄を開けるのは顰蹙ものだけど、言われた通りにするしかないと思ったわ。
鞄の中でパンティを握ったの。
ちょっと待って。向こうの駅に着いたら履こうと思って取りやすいようにしておいたんだけど、今これ渡しちゃったら、由紀は今日一日ノーパンってことになっちゃうわ。他に持って来てないもの。
「早くしろ。お前がノーパンだってことをばらすぞ」
そんな……!
由紀は殆ど反射的にパンティを丸めてお尻の辺りに回したの。そこにきっと彼の手があるって思いこんでいたのね。
それは正しかったわ。彼の手が由紀のパンティを取り上げていったの。あーん、これでノーパン登校は決定的だわ。
このままで済むわけないよね。そう思っていたら、案の定彼の手が追いかけて来たわ。でも、攻撃目標はお尻では無かったみたい。由紀は手首を捕まれたの。
背筋に悪寒が走ったわ。
だって、次の駅で降ろされて、どこかに連れて行かれると思ったんだもの。そうなったら、それこそただでは済まないわよね。あいつのところに連れて行かれて謝罪させられるのかしら。それともホテルに連れて行かれて乱暴されるのかしら。そんなことを考えて拳に力を入れたの。そしたら、
「ほら、手を開いて」
彼は由紀の生徒手帳を返そうとしたのね。なのに由紀ったらおかしな想像をして、本当にバカみたい。
彼はそれっきり攻めて来なかったわ。近くにいるはずなんだけど、なんで何もしないの。由紀はノーパンなのよ。アソコは丸出しなの。いつでも侵入できるのに何もしないなんて、却って不気味じゃない。
由紀は、はっとしたわ。これじゃ痴漢されたがっているのと同じだもの。
それに何もされなくたって、由紀の体はアソコを中心に火照っているの。昨日彼にいじられて感じてしまった時よりずっと熱いの。これからもっと熱を出しそうなの。由紀の体は益々変になっていくのね。
由紀は渡された生徒手帳を握りしめたわ。他にすることも無かったんだもの。目の前は例によってサマースーツの背中だし、外の景色なんて見えないし、振り替えることもできないし……
車内アナウンスで降りる駅に着いたことがわかったの。今朝はとうとう一度も触って来なかったわ。もう、罪滅ぼしは終わりなのかしら。明日からは、痴漢に悩まされずに済むのかしら。
由紀はホームに降りたの。
電車のドアが閉まって……、
あっ、動き出した。
本当にこれで終わりなのね。由紀は乗って来た電車が見えなくなるまで見送ったの。混雑した駅だもの。みんなの邪魔になっていたと思うわ。でも、その時の由紀には去っていく電車しか見えなかったの。
学校に着いて、由紀はようやくノーパンだったことを思い出したの。いくら電車を見送っていたとは言え、今日は遅刻するような時間じゃなかったわ。この前みたいに逆立ちさせられたら、大変なことになっていたものね。
今日は大丈夫、そう思っていつものように席に着いたんだけど、すぐにクラスメイトが呼びに来たわ。外山女史が教育指導室で待っているって。変だなあって思ったけど、行くしかないものね。だけど、今日は何も怒られることはないはずだったの。
でも、教育指導室のドアを開けると、外山女史がおっかない顔をしていたわ。ここに呼ばれる時って、大抵の先生は怖い顔をしているのよね。当たり前だけど。
でも、なんで?
「あなた、なぜここに呼ばれたかわかるわね」
いきなりこんな切り出しなの。由紀には何のことかわからないのに。それは、声にしなくても顔に出ていたみたい。
「昨日の無断欠席の件よ」
いけない! そうだった。昨日は彼にスカートを切られて、そのまま家に帰っちゃったんだ。その連絡、してないもの。学校から見れば無断欠席よね。
「登校時間が過ぎてもあなたが来ないので、家に連絡したの。そうしたらいつも通り出たって言うじゃないの。お家の人にはごまかしておいたけど、あなた、どこに行ってたの?」
文字にすればおだやかだけど、それを放つ表情は由紀に下を向かせるのに十分だったわ。スカートを切られたって言っても、信じて貰えないだろうな。だって普通じゃないもの、そんなこと。
「また、黙っているのね。いいわ。それじゃ、この前言っておいた罰をやって貰うわよ」
この前って……えー、下着姿でランニングするってやつのこと?
どうしよう、今日はノーパンなのに。
由紀の背中がまん丸になったの。でも、外山女史は許してくれそうになかった。ヒステリーも起こしていないし、ホント、嫌になるほど冷静な顔をして言うのよ、早くハダカになって校庭に出なさいって。
「あのぅ、今日は……」
由紀はそれだけ言うのが精一杯だったの。今日はノーパンなので許してくださいって、それが通る相手だとも思えないし……でも、どういうわけか、
「女同士なんだから、恥ずかしがらずに言ってくれれば良いのに。私もまだまだ信用がないのね。もういいわ。教室に帰りなさい」
なんだか知らないけど助かっちゃったみたい。由紀は頭を下げて背中を向けたの。そしたら最後にもう一度言われたわ。
「でも明日は許さないわよ。遅刻したら制服を脱いでランニング、忘れないでね」
由紀は「はい」って言う代わりにもう一度頭を下げたの。
家に着くまで冷や冷やだったわ。だって、その日一日ノーパンで過ごしたんだもの。教室でもできるだけ机から離れなかったし、おトイレもぎりぎりまで我慢したわ。ちょっと変に思っていたクラスメイトもいたみたい。でも今日だけ、後何時間でもないから。そう思って耐えたの。時計の針ってあんなに進むの遅かったかしら。
帰りの電車で痴漢にあったことはなかったけど、それでもスカートが気になって仕方がなかった。今朝の彼じゃなくたって、由紀がノーパンで電車に乗っているってわかったらどうなるかしら。この子は変態だと思われて、好き勝手に触られるんじゃないかしら。その後エッチに場所に誘われたりして……
やだ、由紀ったら何を考えているのかしら。せっかくあいつや彼から解放されたと言うのに、また、別の誰かにつきまとわれることを想像しているなんて。壊れた由紀の体は、治るのにも時間がかかるみたい。
本当に明日から痴漢されないのかしら。
自分の部屋の机に頬杖をついて、由紀はそんなふうに考えていたわ。机の上には今朝返して貰った生徒手帳が置いてあったの。この写真、ちょっと太って見える。夕べは一晩中彼の枕元に置いてあったのかしら。校則以外は何も書いてない手帳なんで気にもしなかったけど、顔写真だけは恥ずかしかったわ。
何気なく手帳の片はじを摘んで揺すったの。
そしたら何か落ちたの。拾ってみるとメモ紙だったわ。ふたつに折ってあるの。広げてみてびっくりしたわ。心臓が止まるかと思ったの。
『明日はブラジャーも無しだ』
それだけ書いてあった。
手元からメモ紙が落ちたの。ひらひらと落ちるその紙を、由紀の両目から溢れたものが追い越していったわ。由紀は自分が甘かったことを思い知らされたの。生徒手帳を返したのは、これを伝えるためだったのね。そうよ。どうせコピーを取られているに違いないもの。現物だけ返されたって問題の解決にはなっていないのよね。
逆らったらどうなるかしら?
ううん、このメモに気づかなかったフリをして、明日普通の格好で行ったら、彼は由紀をどうするの。「素っ裸にすることだってできる」と言ってたけど、まさか本気じゃないわよね。そんなことをすれば大騒ぎになって……でも、スカートは実際に切られちゃったし、それでも彼が誰なのかわからなかったし、分が悪いのは目に見えているわ。
言うとおりにするしかないのかしら。夏のセーラー服じゃノーブラなの絶対バレちゃう。彼じゃなくたって、見つかれば格好の餌食だわ。クラスメイトにだって、なんて説明するの。そんなのダメ。学校にノーブラでなんか行けない。鞄に忍ばせておいて、電車を降りたら付けるしかないわね。
由紀ったら、いつの間にかやる気になってるの。今日だってノーパンでひやひやだったのに、明日はノーブラ……
ち、ちょっと待って!
由紀は慌てて足下のメモ紙を拾ったの。ゆっくりとそれを広げたわ。
『明日はブラジャーも無しだ』
やっぱりそう書いてある。この「も」ってどういうこと?
まさか……?
ううん、でもそうなのね。ノーパンを命令された由紀に「ブラジャーも」ってことは、明日はブラもパンティもダメってことなのね。
ノーブラ・ノーパン……
やだっ、それじゃあ制服の下はスッポンポンってことじゃない。そんな格好で満員電車に乗れって言うの。痴漢されに来いと言うの。まるで変態じゃない。
由紀はほっぺが熱くなったの。自分の部屋で普通の格好をしていると言うのに変でしょう。でも止まらないの。体の芯まで熱くなっていくの。彼の指が由紀のアソコにタッチ&アウェイを繰り返した時のように、体が何かを求めているの。
ウソよ。そんなことない。
由紀は明日、恥ずかしい目にあうのよ。怖いの。電車に乗るのが恐ろしいの。明日が来なければ良いと思っているのに決まっているんだから。
一晩中そんなふうに言い聞かせたの。
うとうとしたこともあったから少しは寝たと思う。朝、家を出る時は、頭から鎖帷子{くさりかたびら}を被っているようだったわ。でも、下着を脱ぐことだけは忘れなかったの。
ドキドキするのは昨日と同じ、いえ、もっとね。ブラを付けていない分だけ余計だわ。周囲の視線が気になって仕方がないの。早く歩けばスカートがめくれて生のお尻を見せちゃうし、ゆっくり歩けばブラをつけてないのが透けて見えちゃうし、どっちにしても恥ずかしい格好なのよね。本当にこのまま学校に行かなきゃならないのかしら。
向こうの駅に着くまでの我慢、着いたらすぐにおトイレに駆け込んで、鞄にしまってある下着をつけるんだから。それだけ考えるようにしたの。電車に乗っている間のことは、頭に浮かぶ度に追い出していたわ。そうじゃないと前に進めなくなってしまうのだもの。彼にどんなことをされるのか、それも怖かったけど、もっと深刻な問題も有ったの。もうわかるわよね。由紀の体が壊れちゃってるから……
とうとう駅に着いちゃって、昨日と同じように気遣いながら階段を昇り降りして、ホームに立つとすぐ電車も来ちゃって……
ドアが開くと人の波が押し出されてきたの。それを並んで待っている列に由紀もいる。電車の中に、今降りた人の分だけスペースができたわ。
どこにいるの?
サマースーツに着た男性の中に、必ず彼はいるはずなの。正面に、おでこにハンカチを当てている人が見えたわ。でも、この人じゃないわね。彼は汗っかきじゃないもの。あれ、なかなかのナイスミドル。この人も違うわ。確かもっと若い人だったと思う。つばの大きなキャップに真っ黒なグラサンのお兄さんがいるわ。怪しい格好よね、いかにもそれっぽくて。
由紀は探しているの。
まるで、友達でこの電車で待ち合わせをしていたように。いえ、恋人とかもしれないわ。そんなときめきを胸に埋めているの。絶対変でしょう。これから由紀を恥ずかしい目にあわせる相手を探しちゃうなんて。
彼に会いたいからじゃないわ。見つけたらできるだけ遠く離れて乗るためよ。こんな満員電車なんだもの。一度離れた場所に乗ってしまったら簡単には移動できないわ。そうよ。その為に探しているのよ。彼とは、絶対に離れて乗るんだから。由紀は鞄を持っていない方の手に拳を作ったの。
なのに……
そんなの無駄だって、すぐに気づいた。由紀はいつの間にか乗った方と反対側のドアのところまで押し込まれたの。偶然じゃないのよ。両方の肩に指が食い込んでいたもの。
彼は電車の中にいて、由紀が乗ってくるのを待ちかまえているものとばかり思っていたの。バカよね。彼はずっと同じホームに立っていて、由紀の様子を観察していたのね。まんまと彼のポジションに押し込まれちゃったのね。こっちのドアは由紀が降りる駅まで開かないの。その間中、エッチなことをされ続けるのね。
逃げることはできないのだわ。
そう思ったら、体の芯に痺れを感じたの。
でも、やっぱり怖い。由紀の防御はどこも手薄だもの。どこからだって攻め込まれちゃうわ。
窓ガラスの向こうにもうひとつのプラットホームが見えていたわ。電車を待つ大勢の人たちとにらめっこするようなの。周りはおじさんばかりだから、女子高生の由紀を目を引いていたかもしれないわ。ノーブラなのがバレないかしら。
由紀の気持ちはあっちへ行ったりこっちへ行ったり。なのに、そんなこと全然わかってくれないの。彼の手が、早くも制服の裾から侵入してきたわ。
ああ、生のおっぱいを触られ放題。しかもそれを、向かいのホームから見られているの。絶対気づいているわよね。早く発車してくれないかしら。
電車がガタンと言ったその時だったわ。
彼が由紀の制服をまくり上げたの。おっぱいに気を取られている内にもうひとつの手が準備していたみたい。物の見事にさらけ出されたの。
「きゃっ!」
思わず声が出ちゃった。だって、ふたつの胸の膨らみが直接ガラス戸に押しつけられたのだもの。まだ、みんな見ているのよ。
でも、次の瞬間には言葉を飲んだの。
だってここで騒いだら、むき出しのおっぱいを至近距離から見られちゃうでしょう。しかも、その人たちとずっと同じ電車の中なんて、考えただけでも恥ずかしくて、人形のようになっているしかなかったの。
幸い、電車が走り出した時だったので、窓の外から見られている時間は短かったわ。何人に見られたかは考えたくないけど。
加速が止まって安定スピードに入ると、代わりに彼の攻撃が加速したの。
ガラス戸とおっぱいの間に指を入れて乳首を摘むの。こりこりしたりくるくるしたりして遊んでいるの。
両方ともよ。
(お願い、もうやめて)
もちろん声になんかできない。きっとそれも計算済みなのね。一向に止めようとはしないの。由紀は脇の下に力を入れて鞄を両手で握り絞めたわ。そうすれば少しは胸の露出や彼の攻撃を防げると思ったんだけど、何の役にも立っていなかったみたい。
なんでおっぱいばかりなの。
由紀の体は芯から熱くなってるの。彼の攻撃が集中しているのはおっぱいなんだけど、なんか別のところまでうずいてしまうの。背中を掻いて貰うとかゆいところが逃げるでしょう。ちょうどあんな感じなの。「もっと下……」とか、言いそうになるの。こんなこと続けられたら、由紀は体はどうなっちゃうのかしら。
そんなこと言ってる内に、電車が減速しだしたわ。
次の駅に着いちゃう。また、大勢の人におっぱいを見られちゃうの? 制服を元に戻してくれ……ないわよね、やっぱり。
でも良かった。この駅には反対のホームは無かったの。その分、線路沿いの道を歩くおじいさんとかにしっかり見られちゃったけど。こんな早い時間に散歩なんかしないでよ。
「大分感じ出してきたじゃないか。どうだ。いっそのこと制服を脱いじまったら」
今朝初めて口をきいたと思ったらいきなりこれだもの。もちろん冗談よね。そうは思ってみたけど、やっぱりちょっと心配なの。だってこの前はスカートを切られちゃったし、彼だったら何でも有りみたいに思えたんだもの。
(そんなことしないよね)
ちょっと首が動いたみたい。彼の手に力が込められたわ。こっちを見るなと言う警告なのね。わかったから、もうおっぱいをいじるのはやめにしてくれないかしら。
「こんなに混んでたんじゃ、全部脱がしちまうのは無理みたいだな」
確かにぎゅうぎゅう詰めだもの。そんなスペースはないわね。でもそれって、本当に脱がす気だったってこと……?
「代わりにこうしてやるか」
彼の右手がおっぱいを離れたの。胸が軽くなったんだけど、それ同時になんか変なの。ずっと子供の頃、お気に入りのおもちゃを取り上げられた時のような気分なの。早く返して頂戴って泣き出したりしたものよね。
彼の手はすぐに帰ってきたわ。でもちょっと冷たいの。前にもこんなことが…… えっ、もしかして、またカッターナイフ? 由紀はスカートを切られた時のことを思い出したの。
今度は何をする気なの?
脱がせないなら、切り刻んでしまおうとでも言うの? いやよ、そんなこと。ずっとおっぱい揉んでて良いから、そんな恐ろしいことはしないで。
そんな願いもむなしく、彼の手の刃物が布に刺さったの。ちょうどおっぱいの上なの。
いやっ!
さすがに今度ばかりは声を出さないと、由紀は恥ずかしい格好にされちゃう、そう思ったわ。でも、彼の意図は違ったみたい。制服の胸の部分を丸く切り取ったの。おっぱいの形に合わせて両方ともよ。上半身ヌードにされなくて済んだけど、これじゃあやっぱり表を歩けないわ。ノーブラの由紀は乳首を丸出しなんだもの。
「安心しろ。着替えを用意しておいてやった」
彼はそう行って紙袋を渡したの。触った感触だけど、確かに服のようだわ。そうよね。いくらなんでも、こんな格好で放り出したりはしないわよね。そう思ったら、涙が滲んじゃった。
「じゃあな。また明日、待ってるからな」
電車を降りる時、彼が言ったの。ああ、由紀はやっぱり逃げられないのね。これから毎日こういう目にあわされるのだわ。
いけない。そんなこと言ってる場合じゃないんだ。早くおトイレに駆け込まなきゃ。
由紀は鞄を胸に押し当てて、片手はしっかりとスカートを押さえたまま、急いでホームを抜けたの。それはドキドキものだったわ。万一スカートが落ちでもしたら大変だもの。
やっとおトイレの個室に入って、中から鍵をかけたの。
これで一安心、そう思った瞬間にスカートを落としてしまったの。あまり綺麗とは言えない駅のおトイレでしょう。由紀のスカートが濡れちゃって……ま、どうせもう履けないけど。
下半身ヌードの由紀……こんな場所で、そんな姿をしている自分にドキドキするの。外気に晒されたお尻が熱くなってるの。ううん、これはさっきまで彼にいじられてたから。由紀は思いっきり頭を振ったの。
それから汚物入れの上に鞄を下ろしたの。由紀の胸元が露わになったわ。さっきはよく見えなかったけど、こうして見るとすっごく卑猥なの。制服が切り取られた穴から乳首だけが露出しているのよ。こんな格好早く終わりにしなきゃ、由紀がダメになっちゃう。
彼から貰った紙袋を開けたわ。
いくら個室だからって、いつまでもこんなことしてられないでしょう。早く着替えて学校に行かなきゃ。遅刻でもしようものなら、今度こそ制服を取り上げられてグランドに出されちゃうわ。
でも、紙袋から取り出した服を見て、由紀は悲鳴をあげたの。だってスカートは見た目でわかるほどのマイクロミニだし、上は上で、裾をかなり折り返して縫ってあるの。これじゃあブラのすぐ下までしかなさそう。お腹は丸出しだし、パンチラはもちろんのこと、下手をすればブラのカップも見せてしまいそうなの。
こんなの着て学校に行けと言うの?
由紀は目の前が真っ暗になったわ。でも、悲劇はこれだけじゃなかったの。下着を出そうとして鞄を開けたら、一番上に入れてあったはずのものがないの。
まさか……
代わりにメモ紙が入っていたの。まさかが当たってしまったみたい。彼が持っていってしまったのね。しかもメモには、
「下着は貰っていくよ。だが、これは明らかに反則だね。罰として一週間、下着の着用は無しだ。それで今日渡した制服で通うんだ」
うっそー!
こんな短い制服でノーブラ・ノーパンなんて。恥ずかしいところを見せる為に着ているようなものじゃない。でも他に着るものがないの。由紀は、彼から渡されたエッチな制服を着るしかないの。それもオールヌードの上に。
やっと決心して着替えを済ませたのに、着てみると想像以上にきわどいの。個室から出る勇気がなかなか出なかったの。だけどその時の由紀は、もうひとつ肝心なことを忘れていたわ。
ちょうどその頃、校門には外山女史が立っていたの。
(おわり)
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